現任者講習テキストにも記載のある「推論」と「問題解決」ですが、具体例を挙げながら説明すると以下の通りです。
長いですよ。
【推論について】
「推論」(推理とも言う)とは、何らかの前提から結論を導き出す過程のことを言います。
論理学において推論は、特殊事例から一般法則を導く「帰納的推論」と、一般法則から特殊事例を導く「演繹的推論」に大別されます。
◎帰納的推論
定義:個々の特殊な事例から一般的法則を導き出すことを言う。
例:スズメが飛ぶ+ハトは飛ぶ+ツバメは飛ぶ=鳥は飛ぶ
帰納的推論は、ピアジェの概念形成などとも関連づけられます。
多くの特殊事例に出会うことで、シェマが洗練されていくわけです。
確証バイアス(多くの情報から、自分の仮説に合致する情報のみを選択したり、都合の悪い情報を無視すること)が、生じやすいところに注意が必要です。
◎演繹的推論
定義:1つ以上の前提から論理的規則に従って結論を導き出すこと。
例:あらゆる鳥は飛ぶ・この生き物は鳥である=この生き物は飛ぶ
演繹的推論は、一つの前提命題から結論を導く「直接推理」と、複数の前提命題から結論を導く「間接推理」があります。
間接推理で一番有名で基本的なのが「三段論法」です。
✔三段論法
三段論法=2つの前提命題(大前提と小前提)から一つの結論を導き出す。
ちなみに三段論法は、命題に含まれる文の性質によって以下に分かれます(ここまでは試験では問われないんじゃないかな、と思いますが…)。
①定言的三段論法:前提命題が「AならばB」「AはBではない」などの条件を含まない(定言的)形になっている。
例:「人は必ず死ぬ」→「私は人である」=私は死ぬ
②仮言的三段論法:大前提が「AならばBである」のように条件つき(仮言的)になっている。小前提では、それが肯定か否定がされる。
例:「仕事が終わるならば、飲み会に行く」→「仕事は終わらない」=飲み会に行かない
③選言的三段論法:大前提が「AまたはBである」のように選択式(選言的)になっている。
例:「私は臨床心理士を選ぶかまたは、公認心理師を選ぶ」→「私は臨床心理士を選ばない」=私は公認心理師を選ぶ
その他、演繹的推論と関連がある概念としては「ウェイソンの選択課題」でしょうか。
(4枚カード問題という方が一般的かも:DK37のカードのどれをひっくり返す?)
これは仮言的三段論法の特徴を踏まえた課題ですね。
【問題解決】
「問題解決」とは、何かの目標に到達したいけど、直接的にはうまくいかない場合(問題場面)に、目標に到達するための手段や方法を見出すことを指す。
問題解決研究には大きく分けて3つの立場があります。
◎刺激と反応の連合で捉える:ソーンダイク
ソーンダイクといえば試行錯誤学習ですね。
(「作っては壊し作っては壊しの試行錯誤をする損な大工さん」と覚えましょう)
彼は試行錯誤を通じて、刺激と反応の適切な組み合わせを形成する過程を「問題解決過程」と捉えました。
◎洞察による場の再体制化と捉える:ケーラー
洞察学習で有名なケーラーは、やみくもな試行錯誤を繰り返すのではなく、突然の洞察によって場面の構造を見通すことで「問題解決」を果たすと考えました。
◎情報処理過程と捉える
この立場では「問題解決」を、初期状態から解決状態への変化の連鎖として捉える。
そのための方法として「アルゴリズム」と「ヒューリスティック」がある。
・アルゴリズム
元々はコンピュータ用語で、処理手順の手続きのことを言う。
認知心理学では、「正しく適用すれば必ず正しい結果が得られる一連の手続き」を指す。
「しらみつぶし」が日常例。
問題点は、多くの手間や時間がかかる、ということ。
例:ある町全員に電話をかけて、自分の親戚かを調べる。
・ヒューリスティック
しばしば経験から導かれるものであり「必ずしも成功するとは限らないが、うまくいけば問題解決に要する手間や時間を減少することができるような手続きや方法」を指す。
例:ある町に親戚がいるかを調べるため、自分と同じ姓にのみ電話する。
(結婚して姓が変わった場合を見落とすが、アルゴリズムの例よりも経済的)
ヒューリスティックにはいくつか種類があります。
✔利用可能ヒューリスティック:取り出しやすい記憶情報を、優先的に頼って判断すること(いつも買っているものを、パッと買う)。
✔代表制ヒューリスティック:代表的であると思われる事象を判断に利用すること(太っているからキャッチャーでしょ!)。
✔係留と調整ヒューリスティック:その時点で手に入る情報から推測すること。最初の情報に現れた特徴を重視しやすい(勉強会に来るのって○人以下だと思う?という質問の○の数字によって答えが変わってしまう)。最初の情報に誘導されるわけだから、健康食品を売りたい場合、その前に健康を想起させるような情報を与える。
✔再認ヒューリスティック:初めて聞くものより、以前に聞いたことがあるものを過大に評価すること(芸能人の炎上商法がこれ。認知度向上のメリットによって、何かの時に過大に評価されることがある)。選挙とかで有名人に入れちゃう人がいるのもコレですね。
ヒューリスティックは簡単に言えば、情報が少なかったり、多すぎて面倒だったり、判断までの時間が短かったりしたときに積極的にもちいられやすい問題解決手法ということですね。