公認心理師 2024-52

Rodolfaらが提唱した心理職の機能的コンピテンシーに関する問題です。

過去問(公認心理師 2022-125)で解説した内容がそのまま、という感じですね。

問52 E. Rodolfaらが提唱した心理職の機能的コンピテンシーに該当するものを2つ選べ。
① 多職種協働
② スーパービジョン
③ 心理的アセスメント
④ 文化的ダイバーシティ
⑤ 倫理的・法的基準と政策

選択肢の解説

① 多職種協働
② スーパービジョン
③ 心理的アセスメント
④ 文化的ダイバーシティ
⑤ 倫理的・法的基準と政策

臨床家を育成する従来の訓練モデルでは、大学院での履修科目の種類や科目履修時間などを設定することを定め、カリキュラムをどのように規定するかに重点が置かれてきたという歴史がありました。

しかし、カリキュラムを整備しても、実際にどのくらいの教育・訓練の効果が挙がったのか、その成果を明確に定義し、それが達成されていることが確認されるべきだという指摘がなされ、近年ではコンピテンシーという概念を用いた訓練モデルに移行しつつあります。

アメリカ心理学会(APA)では、1990 年代から大学院における心理学の訓練においてこのコンピテンシーの概念が議論されてきており、専門心理学実践の資質に関する特別委員会が2002年に設置され、心理職のコンピテンシーのあり方、その特化された領域ごとのコンピテンシー、コンピテンシーの評価の方法などについて活発に議論がなされてきました。

それは、何を教えるのかというカリキュラムをもとに教える側から訓練を定義することから、何を身につけ、できるようになったのかという学ぶ側から訓練を捉え直す変化であると言えます。

専門心理学実践の資質に関する特別委員会は、心理学実践においてのコンピテンシーの発達を図
式化して表すコンピテンシー立方体モデルを発表しています。

このモデルでは、臨床的コンピテンシーは3つの軸からなっています(Rodolfa et al.,2005)。

【基盤コンピテンシー:基本的な姿勢のようなイメージ。図形の上部分】

  1. 専門家としての姿勢:心理職の価値観と倫理に基づく言動
  2. 反省的実践:自己の言動を振り返り、他者に対する自己の影響の認識や、自らを評価する
  3. 科学的知識と方法:科学的な研究から得られた知識を尊重し、効果的に応用する。
  4. 治療関係:個人やグループ、共同体と効果的に意味のあるやり方で関係を作る。
  5. 文化的ダイバーシティ:様々な価値、文化的背景などをもつ個人、集団に対する敏感さと配慮
  6. 他職種協働:他の専門家と効果的に協働作業ができる。
  7. 倫理・法的基準と政策:倫理的概念や法に関する知識を個人や集団に対して適用できる

【機能コンピテンシー:専門的な技能を指す。図形の正面部分】

  1. 心理的アセスメント:客観的な心理アセスメントと解釈、手法の理解と活用
  2. 介入:クライエントの特徴にあった介入計画、知識とスキル、成果の評価
  3. スーパーヴィジョン・教育:専門的知識やスキルの教授を受ける
  4. 研究と評価:研究とその方法への理解。知見の効果的な活用。
  5. 管理・運営:メンタルヘルスサービス、事業の管理と組織運営への関わり。
  6. コンサルテーション:リファー元に対する専門家としての助言や支援。
  7. アドボカシー:権利・利益を擁護し、代弁する。社会、政治、経済、文化的に影響を与え、個人、集団、システムの変化を促進する。

【職業的発達:訓練や実践の水準。図形の右部分】

  • 博士課程教育
  • 博士課程の研修
  • 博士課程後のスーパーヴィジョン
  • 就職後の研修
  • 継続的なコンピテンシー

これに加えて、組織的コンピテンシー(異種職間の交流、コンサルテーション、管理・運営など)がのちに独立した次元として加えられています。

同様の試みは、様々な国の心理学界隈でも進んでいます。

さて、こうした臨床的コンピテンシーを構成する3つのコンピテンシーを踏まえて、本問の選択肢を見ていきましょう。

まず選択肢①の多職種協働、選択肢④の文化的ダイバーシティ、選択肢⑤の倫理的・法的基準と政策は「基盤コンピテンシー」に該当することが明らかですね。

本問で求められているのは「機能的コンピテンシーに該当するもの」を選択することですから、これらは不適切ということになります。

残った選択肢②のスーパービジョンと選択肢③の心理的アセスメントは、専門的技能を指す「機能コンピテンシー」に該当するとされています。

以上より、選択肢①、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢②および選択肢③が適切と判断できます。

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