第4回公認心理師試験の第1問は公認心理師法についてです。
初出としては登録証に関する内容が複数出ていますね。
それ以外は過去問にあった内容ですから、それほど難しくはありません。
問1 公認心理師法について、正しいものを1つ選べ。
① 公認心理師登録証は、厚生労働大臣及び総務大臣が交付する。
② 公認心理師が信用失墜行為を行った場合は、登録の取消しの対象となる。
③ 公認心理師登録証は、公認心理師に合格することで自動的に交付される。
④ 公認心理師の名称使用の停止を命じられた者は、30万円以下の罰金に処される。
⑤ 禁錮刑に処された場合、執行終了後1年を経過すれば公認心理師の登録は可能となる。
解答のポイント
公認心理師登録証に関する法律上の扱いを把握している。
過去問で出題された内容を理解しておくと解きやすい。
選択肢の解説
① 公認心理師登録証は、厚生労働大臣及び総務大臣が交付する。
こちらの内容に関しては、公認心理師法第30条に規定されています。
第三十条(公認心理師登録証) 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師の登録をしたときは、申請者に第二十八条に規定する事項を記載した公認心理師登録証を交付する。
この内容から、登録証は「文部科学大臣及び厚生労働大臣」が交付することがわかりますね。
この選択肢を解くうえで、実は上記の第30条を把握しておくことが必要かと言われれば、そうでもありません。
公認心理師という資格が創設される過程の中で、文部科学省が絡んでいることは周知のことと思いますし、そもそも公認心理師法自体が衆議院文部科学委員長提出の議員立法として、衆・参ともに全会一致での可決により成立しています。
公認心理師が、文部科学省と厚生労働省による共管とされ、主務大臣は文部科学大臣と厚生労働大臣と規定されている理由としては、公認心理師が特定の分野に限定されない「汎用性」「領域横断性」を特長とする心理職国家資格を旨とするからと理解しておくのが妥当です。
上記のうち、公認心理師法の成立過程は知らなくても、公認心理師に「汎用性」「領域横断性」が求められているのは把握しておくことが求められますし、そこからも複数の省庁、特に教育(文部科学省)と医療・福祉(厚生労働省)の共管であることは想像しやすいだろうと思います。
なお、公認心理師法において、文部科学大臣及び厚生労働大臣について言及している箇所をいくつか挙げると以下の通りです。
- 第6条:試験の実施
- 第7条第3号:受験資格
- 第8条:試験の無効等
- 第10条:指定試験機関の指定
- 第32条:登録の取消し等
- 第36条:指定登録機関の指定等
これらは一部ですが、文部科学大臣及び厚生労働大臣が公認心理師という資格のさまざまな領域で出てくるのがわかると思います。
以上より、公認心理師登録証は、「厚生労働大臣及び総務大臣」ではなく「文部科学大臣及び厚生労働大臣」が交付するというのが正しいわけですね。
よって、選択肢①は誤りと判断できます。
② 公認心理師が信用失墜行為を行った場合は、登録の取消しの対象となる。
まずは選択肢前半に出てくる「信用失墜行為」に関する理解です。
こちらは公認心理師法第40条に規定されています。
第四十条(信用失墜行為の禁止) 公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない。
過去問(公認心理師 2018追加-47)にも出ていますが、信用失墜行為は執務時間の内外を問わず、また、職務に直接は関係のない行為であっても該当する場合があり、また、犯罪行為にも限定されず、道徳的非難の対象となりうる個人的なスキャンダルや、プライベートでの著しく粗野な態度なども、信用失墜行為に該当する可能性があります。
この辺はYouTube版(信用失墜行為の禁止に関する解説)でも述べているのでご確認ください。
さて、上記までが「信用失墜行為の禁止」に関する理解ですね。
本選択肢では、この「信用失墜行為」をしてしまった場合の処分について問われています。
こちらについては、公認心理師法第32条第2項に規定されています。
第三十二条(登録の取消し等) 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を取り消さなければならない。
一 第三条各号(第四号を除く)のいずれかに該当するに至った場合
二 虚偽又は不正の事実に基づいて登録を受けた場合
2 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が第四十条、第四十一条又は第四十二条第二項の規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ずることができる。
上記の通り、信用失墜行為(上記の第40条がそれ)に違反したときには、登録の取り消しと名称及び心理師という文字の使用停止が命じられます。
ここまでで本選択肢の解説は済んでいますが、学びの上では過去問を踏まえて以下の点も把握しておきましょう。
- 公認心理師の義務としては、信用失墜行為の禁止、秘密保持義務、連携等(医師の指示を含む)、資質向上の責務があること。
- 信用失墜行為に違反した場合の処分は「行政処分」であり、刑罰(死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収)ではないこと。
- 刑罰の対象となるのは「秘密保持義務」に違反した場合であること。
この辺は「公認心理師 2019-35」や「公認心理師 2018-30」などを復習しておくと良いでしょう。
以上より、公認心理師が信用失墜行為を行った場合は、登録の取消しの対象となることがわかりますね。
よって、選択肢②が正しいと判断できます。
③ 公認心理師登録証は、公認心理師に合格することで自動的に交付される。
こちらも選択肢①と同様、登録証に関する選択肢となっています。
本選択肢の理解のためには、公認心理師法第28条~第30条を把握しておくことが求められます。
第二十八条(登録) 公認心理師となる資格を有する者が公認心理師となるには、公認心理師登録簿に、氏名、生年月日その他文部科学省令・厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。
第二十九条(公認心理師登録簿) 公認心理師登録簿は、文部科学省及び厚生労働省に、それぞれ備える。
第三十条(公認心理師登録証) 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師の登録をしたときは、申請者に第二十八条に規定する事項を記載した公認心理師登録証(以下この章において「登録証」という)を交付する。
このままでは少しわかりにくいかもしれませんから、ちょっと翻訳しておきましょう。
第28条の「認心理師となる資格を有する者」とは、公認心理師資格試験に合格した人のことを指しています(受験資格がある人のことではありませんよ)。
公認新心理師資格試験に合格したら、「公認心理師登録簿」に登録することが求められ、それは文部科学省と厚生労働省にそれぞれ備えられています(これが第29条の内容ですね)。
そして、公認心理師に合格した人が「登録をしたいという申請」をした場合に、公認心理師登録証が交付されるわけです(これが第30条の内容)。
これらの内容からわかる通り、公認心理師登録証は資格試験合格者に自動的に交付されるものではなく、資格試験合格者が「申請して交付される」ものなわけですね。
よって、本選択肢の「公認心理師に合格することで自動的に交付される」というのは正しい内容ではないことがわかります。
以上より、選択肢③は誤りと判断できます。
ここからは余談です。
上記の通り、公認心理師資格試験に合格し、申請しないと公認心理師にならないというのが公認心理師法で定められた枠組みですが、ごく一部の人に「公認心理師試験には合格しているけど、申請はしていない」という状態の人がおります。
例えば…
「臨床心理士の資格はもっていて、それで仕事ができるうちは臨床心理士一本でいきたい。臨床心理士に思い入れもあるし、公認心理師という資格には反対する気持ちもある(医師の指示とか)」
「公認心理師だと守秘義務等で強い締め付けが想定される。臨床心理士で仕事ができるうちは、それ一本でやっていこう」
…などでしょうか。
前者はこだわりなので好きにすればよろしいという思いですが、私にとって資格は資格以上でも以下でもないので、持っておいた方が社会生活上役立つだろうと思いますから、取れる人は取ればいいのではという考えです。
後者は何となく相談したくない支援者という感じがしますね(本当に秘密を守ってくれるのか疑問)。
たまに目にするのが「自分は試験には合格したけど、自分がそれに見合うとは思っていない。だから申請しない」という人です。
こういう人と会ったときには、私は「いいから早く申請しなさい」と伝えています。
まず社会的には試験に合格すれば「公認心理師に見合う」のですから、申請すればいいのです。
そして、自分への評価として「見合わない」と思うのであれば、資格を持ったうえで努力・研鑽を積むべきです。
公認心理師を持っていないとできない仕事、できない研修、できない経験というものがありますから、自分から自分の成長の機会を減らしているというわけのわからない事態を招きます。
そもそも、自分が「公認心理師に見合う力をつけた」と判断する主体を自分に置くのは傲慢というものです。
社会の中で活動していくわけですから、その公認心理師が専門家と呼ぶにふさわしい力を備えているか否かは、その場の人たちが評価してくれます。
その評価の重みを感じつつ専門家として活動することが、専門家としての力量を高めてくれるのです。
というわけで、試験に合格したらさっさと申請することをお勧めします(上記以外でやむを得ない理由がある方は仕方ありませんが)。
④ 公認心理師の名称使用の停止を命じられた者は、30万円以下の罰金に処される。
こちらは罰則規定に関する問題ですね。
公認心理師法の第5章に罰則の規定がまとめて定められています。
このうち、事務などと関係ない箇所を抜き出してみましょう。
第四十六条 第四十一条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第四十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第三十二条第二項の規定により公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ぜられた者で、当該停止を命ぜられた期間中に、公認心理師の名称を使用し、又はその名称中に心理師という文字を用いたもの
二 第四十四条第一項又は第二項の規定に違反した者
おそらく、本選択肢は上記の第49条の内容を変えて混乱を狙っていると考えられます。
つまり、「公認心理師の名称及び文字の使用停止が命じられた者」が「それを使用した場合」に「30万円以下の罰金に処される」というのが正しい内容なわけですが、本選択肢は「公認心理師の名称使用の停止を命じられた者は、30万円以下の罰金に処される」としており「停止中なのに使用した場合」という条件が抜いてあるのです。
上記で解説としては終了ですが、他にも押さえておきたい知識を挙げておきましょう。
- 登録を取り消し、又は期間を定めて公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命字られるのは、公認心理師が第40条(信用失墜行為)、第四十一条(秘密保持義務)又は第四十二条第二項(医師との連携)の規定に違反したとき。
- 秘密保持義務の場合、上記の行政処分の他にも一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処される(第46条)。ただし、こちらは親告罪となる。
この2つ目の秘密保持義務違反では、本選択肢の「名称使用の停止を命じられた者は、30万円以下の罰金に処される」場合があることがわかります。
おそらく、この場合が浮かんだ人はちょっと迷ったのではないでしょうか。
ですが、本選択肢の書き方では「名称使用の停止を命じられた者」=「30万円以下の罰金に処される」という理解になりますから、不適切な内容であることには変わりないと言えます。
以上より、選択肢④は誤りと判断できます。
⑤ 禁錮刑に処された場合、執行終了後1年を経過すれば公認心理師の登録は可能となる。
本選択肢の理解においては、まずは公認心理師法第32条を見ておくことが大切です。
第三十二条(登録の取消し等) 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を取り消さなければならない。
一 第三条各号(第四号を除く)のいずれかに該当するに至った場合
二 虚偽又は不正の事実に基づいて登録を受けた場合
そして、上記にある第3条を見ていきましょう。
第三条(欠格事由) 次の各号のいずれかに該当する者は、公認心理師となることができない。
一 心身の故障により公認心理師の業務を適正に行うことができない者として文部科学省令・厚生労働省令で定めるもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者
三 この法律の規定その他保健医療、福祉又は教育に関する法律の規定であって政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者
四 第三十二条第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者
本選択肢は上記の第2号の内容を変えて作成してあることがわかりますね。
すなわち、正しくは「禁錮刑に処された場合、執行終了後2年を経過すれば公認心理師の登録は可能となる」というわけです。
欠格自由自体は「公認心理師 2018追加-1」でも出題されていますから、きっちり理解しておきたいところですね。
以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。
昨日、受験しました。
教員を30年しています。g-ルート受験です。心理学は採用試験で少し勉強したくらいでした。問題集を解いて受験しましたが、第三回試験は129点で不合格でした。予備校に頼ろうかと思ったのですが、このサイトを偶然見つけてとても詳しい解説に涙が出そうでした。仕事で時間がなく、土日曜日中心の勉強でしたが、丁寧な解説に頭が下がり、心理職の心構えも教えていただきました。
結果は発表がないとまだわかりませんが、このサイトに大変お世話になりました。
おかげで試験を乗り越えることができました。
結果がわかったらまたメールします。
私みたいに励まされた人がたくさんいたと思います。先生もどうぞご自愛ください。
コメントありがとうございました。
試験、お疲れさまでした。
仕事をしながらの受験は並大抵のことではなかっただろうと思います。
私の周りにも先生のような立場で受験されている方が複数おられます。
(私がこのサイト主であることを知らない人もおられます)
皆さん大変そうです。
何とか乗り越えられてよかったですね。
>結果がわかったらまたメールします。
ありがとうございます。
ちなみに、こちらでのコメントになると、多くの人が見られる形での投稿となります。
サイトの一番下にある「contact」であれば、直接メールが届きますのでそちらの方が良いかもしれません(ご存じならすいません)。
それではまた。
いつもお世話になっております。
信用失墜行為等のばあい、
登録取り消しの場合、2年経過後は再度試験を受ける必要はなく、登録申請で良いのでしょうか。
宜しくお願いします。