問50は公認心理師法に関する問題です。
今回の試験ではよく公認心理心理法に関する問題が出ますね。
公認心理師の資格試験で、公認心理師資格の根拠法が出るのは当然と言えば当然です。
問50 公認心理師法について、正しいものを2つ選べ。
①公認心理師の登録を一旦取り消されると、再度登録を受けることはできない。
②公認心理師は、心理に関する支援を要する者から相談の求めがあった場合にはこれを拒んではならない。
③公認心理師は、その業務を行ったときは、遅滞なくその業務に関する事項を診療録に記載しなければならない。
④公認心理師は、心理に関する支援を要する者に当該支援を係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。
⑤公認心理師は、公認心理師法に規定する公認心理師が業として行う行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。
基本的な事項を問われていると考えられますから、きちんととっておきたい問題ですね。
公認心理師法に関する問題も3回分たまればパターンが見えてくるなと感じます。
この分野だけの過去問を集めてみると、その辺もわかりやすいでしょう。
解答のポイント
公認心理師法について把握と理解をしていること。
選択肢の解説
①公認心理師の登録を一旦取り消されると、再度登録を受けることはできない。
公認心理師法第32条の「登録の取消し等」では、その事由が定められています。
- 第三条各号(第四号を除く)のいずれかに該当するに至った場合
- 虚偽又は不正の事実に基づいて登録を受けた場合
(第2項)文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が第四十条、第四十一条又は第四十二条第二項の規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ずることができる。
まずはこのような登録取消しの事項について把握しておきましょう。
公認心理師法第3条に欠格事項が以下のように設けられております。
次の各号のいずれかに該当する者は、公認心理師となることができない。
- 成年被後見人又は被保佐人
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者
- この法律の規定その他保健医療、福祉又は教育に関する法律の規定であって政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者
- 第三十二条第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者
第1号に関しては2018追加-1の選択肢①に示されております。
この問題の解説でも書きましたが、公認心理師法第3条と第32条は抱き合わせで覚えておくと良いでしょう。
さて、本問で求められているのは、上記の下線部の箇所に関する理解です。
「その取消しの日から起算して二年を経過しない者」は公認心理師になれないわけですが、読み替えれば「二年を経過した者」は再び公認心理師になれるということになります。
以上より、選択肢①は誤りと判断できます。
②公認心理師は、心理に関する支援を要する者から相談の求めがあった場合にはこれを拒んではならない。
まず公認心理師法において、このような規定はありません。
だからといって「恣意的に拒んでよい」わけではありませんが、いくつかの視点でクライエントの来談をお断りすることはあり得ます。
例えば以下のような事柄が浮かびます。
- その機関の枠組みで受け入れられない場合:
例えば児童福祉法の枠組みの機関だと18歳未満の相談ということになる。
また、自殺企図が非常に多いクライエントだと、例えば、自殺企図をしないという約束をしてもらえない、約束しても拘束する力が弱そうだ、と判断されれば別機関にリファーする可能性が高い。 - カウンセラーの能力を超えていると判断される場合:
未熟だったり、初心のカウンセラーの場合、自分の力量では対応が難しいと感じる場合もあり得る。そういう時に面談を断ることもあるだろう。カウンセラーとしての限界を常に把握しておくことが大切。
無い袖を振るよりはずっと良い対応であるが、一方で、どうやったらそういうクライエントと会うことができる自分になるのか、も考えていくことが専門家として求められる。 - その他、外的な理由も含め:
今年度限りで退く、引っ越しする、すでに予約がいっぱいで物理的に困難、などの理由もあり得る。
いずれも生じ得ることであるが、どのようなクライエントとも会う力が備わるよう研鑽を積んでいくことが重要です。
私は専門家が「相性」を口にしてはいけないと思うのです。
それを前提として、それでもカウンセリングの場で会うことができるようになっていくのが専門家だと思うからです。
もちろん相性はありますし、逆転移感情も人間ですからありますけどね。
さて、では本選択肢の「これを拒んではならない」はどこから持ってきたのかを考えてみましょう。
こちらは医師法第19条に「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」とあります。
こちらでも「正当な事由がなければ」という条件つきですから、100%受けいれます、というわけでもないのがわかります。
以上より、選択肢②は誤りと判断できます。
③公認心理師は、その業務を行ったときは、遅滞なくその業務に関する事項を診療録に記載しなければならない。
まずは素朴に考えてみましょう。
公認心理師は医療・福祉・教育・司法・産業といった多領域に渡る汎用資格として生まれました。
それに対して、選択肢に記載のある「診療録」があるのは、基本的に医療領域になります。
一つの領域だけを念頭に置いた選択肢ですから、まずはこの点から違和感を覚えることが大切になります。
その上で理屈で本選択肢の瑕疵を見つけていきましょう。
まず公認心理師法には記録に関する規定が存在しません。
記録をつけることも、それを保管することも、その保管年数も、法律的には全て未整備のままです。
法律的には未整備でも、各職場でそれを求められることも多いのですが。
さて、公認心理師法に規定されていることは否定されましたが、続いて選択肢の「遅滞なくその業務に関する事項を診療録に記載しなければならない」という表現はどこから持ってきたのか、を考えていくことが大切です。
こちらは医師法第24条に以下の通り規定があります。
- 第1項:医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
- 第2項:前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。
このように、選択肢の内容は医師に定められた規定であると判断するのが妥当です。
以上より、選択肢③は誤りと判断できます。
④公認心理師は、心理に関する支援を要する者に当該支援を係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。
こちらは公認心理師法第42条の「連携等」に規定があります(第2項です)。
以下の通りです。
- 第1項:公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。
- 第2項:公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。
この点については公認心理師法の成立過程で一番揉めた箇所です。
過去問でもたくさん出題されています(2018-3、2018追加-2など)
以上より、選択肢④は正しいと判断できます。
⑤公認心理師は、公認心理師法に規定する公認心理師が業として行う行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。
こちらは公認心理師法第43条の「資質向上の責務」に規定があります。
以下の通りです。
「公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、第二条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない」
併せて覚えておきたいのが、資質向上の責務については「罰則」も「行政処分」も規定がないということです。
この辺についても何度も過去問で出題されていますね(2019-35の選択肢②でも類似の出題がありました)。
どうやって「資質向上の責務に違反と見なすのか」の困難さは、少し考えれば理解できますよね。
以上より、選択肢⑤は正しいと判断できます。