臨床心理士 ロールシャッハ:H15-49

エクスナー法の解釈が問われる内容の4つ目になります。
今回は自己イメージの側面に関する問題ですね。

A.自己愛の肥大傾向が見られる。

「自己愛」傾向は反射反応(Fr+rF。rはリフレクションですね)を参考にします。
これが1以上存在するならば、自己への関与が過剰な上、肥大した自己価値観によって世の中に対する見方が決定付けられていることを示すとされています。
この特性は自分の高いプライドが何度も確認されたり補強されることを求めるものなので、被検者の意思決定と行動に大きな影響を与える基本的な人格特徴となります。

事例ではFr+rF=0なのでそういった傾向は見受けられません。
よって本選択肢は×と判断できます。

ちなみにこの解釈、現在では採用されていません。
エクスナー法の解釈本の初版には確かに上記のような解釈が記述されていました。
しかし、その後、反射反応を示す人が自己愛的な人だけでなく、性的違和を持つ人などにも見られることがわかり、解釈が修正されました。
修正された解釈は「幼いころから他者と違う自分を意識し続けてきた人」ということになります。
この中にはもしかしたら自己愛傾向も含まれるかもしれませんが、より解釈が正確になったということですね。
以上より、本選択肢のような解釈は現在ではされませんから、その点お気を付け下さい。

B.自己を内省し、自分に関心を向けて、自我を再構成しようとしている。

「内省活動」についてはFDやSumVを参考にします。
FDは内省の傾向があることと関係しており、一般的にはその数が多すぎなければ、肯定的なサインとなります。
V反応(濃淡による立体反応。濃淡を使って奥行きを見るなど)になると、肯定的な意味合いは薄くなります。
これは、自己検閲の傾向があることを示しているが、こちらの自己検閲は、その過程で非常にネガティブな感情を引き起こす類のものとされています。
本選択肢のニュアンスでは、FDの方を見るのが望ましそうですね。

事例はFD=2(ちなみにSumV=1)なので、「自己を内省し、自分に関心を向けて」は正しいと言えます。
SumVが存在するために「ネガティブな特徴へのとらわれがあり、そのことが苦痛をもたらしている」という解釈もされるのでちょっと気になりはしますが、まぁ良いでしょう。

ただし、選択肢後半の「自我の再構成」については不明です。
自我を再構成しようとしているかどうかは、事例全体を見なければならないと判断がつかないと思いますので、FDというロールシャッハ反応のみで判断は難しいと思うのです。

以上のように、いくつかの疑問は残るものの○と判断できます。
ここでは、FDの存在にのみ目を向けているような印象ですね。

C.自分は弱い存在であると、自己を否定的に眺めている。

否定的な自己像はMORを参考にします。
自己知覚のクラスターの解釈では、MOR反応が1を超える場合は、被検者はネガティブな特徴あるいは損傷感を伴う自己イメージを持っていることが多いとされます。
原因が何であれ、こうした特性がもたらす影響は長く続きやすく、その影響力が大きければ大きいほど、自分に対する悲観的な見方も強まります。

事例はMOR=2であり、こういった否定的なイメージが存在するものと思われます。
また、SumVの存在は「否定的な自己検閲行動」に関するものであり、事例はSmuV=1のため、「ネガティブな特徴へのとらわれ」が存在すると考えられます。

以上より、本選択肢の内容は正しいので○となります。

D.自分の身体状態を著しく気遣っている。

「身体状態」への関心は、An+Xyを参考にします。
この解釈に関してはエクスナー法も片口法も同じですね。
ただし、微妙にコードが違ったりするので注意が必要です。
エクスナー法のAnは内臓反応で、その名の通り内臓などを見た場合にコードされます(片口法ではAnではなくAyとコードされる。いずれもアナトミーの略ですね)。
Xyはレントゲンのように透かした反応をした場合にコードされます。

この値が2ならば、何らかの身体的関心があると解釈します。
MORが随伴する場合には、これらの反応が重大な身体的関心を反映している可能性があります。
また、3以上の値になるならば、普通以上の身体的関心かとらわれがあると見てほぼ間違いありません。
身体的問題が無いのであれば、それは自分の身体や自己イメージについて思いをめぐらしすぎていることを示しており、当惑するほどの傷つきやすさを感じている可能性もあります。

事例はこれらの値は0であり、身体的な関心が強いとはいえないので×と判断できます。

ちなみにこうした身体への気遣いが強くなくてもAnなどを示す事例があります。
その代表が医療者で、普段から内臓等を見ている場合にはAnを示すことが多くなるわけです。
そういう場合には当然ですが、身体への気遣いという解釈の採用には慎重になることが多いですね。

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