臨床心理士 ロールシャッハ:H15-46

こちらは臨床心理士資格試験全問題を通して唯一のエクスナー法による解釈を問う問題となってます(正確には平成15年の問題46~問題49が、ですね)。
この問題以降はエクスナー法独自の問題は出題されていないので(片口法とエクスナー法の違いなどに関しては出題はありますが)、やはり一方の方式にのみ依った問題は不公平だということでしょう。
ただし、エクスナー法の問題にもかかわらずF+%の記号が示されているなど、いろいろ困った点が目立つ問題です。
本問の趣旨に沿い、エクスナー法の解釈を中心にしつつ解説をしていきます。

A.漠然とした印象によって刺激を処理する傾向がある。

こちらはDQを見る必要があります。
DQの後ろに「+」「o」「v」「v/+」のいずれかがコードされます。

  • +…2つ以上のものを反応に含み、形態がハッキリしたものを1つ以上を含んでいる。
  • o…1つのものをもって反応し、その形態がハッキリしている。
  • v…1つのものをもって反応し、その形態がハッキリしていない。
  • v/+…2つ以上のものを反応に含み、そのすべてが形態がハッキリしていない。
このクライエントはDQv=3となっていますね。

事例の体験型は不定型(3:2.5)であり、不定型のDQvの期待値は0か1のはずです。
DQv=3という数字は「情報処理の質が適切なレベルより低く、複雑な状況ではより悪くなる」という解釈となります。
このことは、選択肢の内容に沿ったものと言えますから○になります。

B.意思決定や課題を解決する際、思考よりも感情に支配される。

「意思決定や課題を解決する際」に、何によって「支配」されるかという問いでは体験型に注目することが重要です。
以下では、基本情報としてエクスナー法の内向・外拡・不定の説明を行っていきましょう。

  • 内向型:
    意思決定に至るまでに物事を十分考え抜くのを好む。その間、感情を脇に置き、様々な選択肢を時間をかけて検討し終わるまでは行動を開始しないでおこうとする。
  • 外拡型:
    もっと直観的。彼らは思考に感情を混じらせることによって、感情を直接意思決定に用いようとしがちである。また、意思決定や問題解決の際には、実際に様々なアプローチを試してみたほうがしっくりくる。
  • 不定型:
    意思決定や問題解決の際、一貫性が見られない。むしろ全くばらばらであり、そのときに感情が果たす役割も色々変わってくる。上記二つに比べて、効率が悪くなりがちである。しかし、必ずしも不適応に陥ることを示しているわけではない。

事例のクライエントは、M:WSumC=3:2.5なので、不定型となります。
よって、選択肢のような「思考よりの感情」ということは言えないと判断できますから、本選択肢は×となります。

C.感情刺激に直面すると、かなり混乱して逃避的態度を取る。

「感情刺激に直面すると、かなり混乱して逃避的態度をとる」か否かは、Afrを参考にすることが重要です。
ちなみに、Afr=Ⅷ~Ⅹの反応数/Ⅰ~Ⅶの反応数のことであり、感情的な刺激に近づいたり、体験したりすることへの関心と関係があります。
片口法のⅧ+Ⅸ+Ⅹ/Rに近いですね。

根本から理解することが重要です。
なぜこのAfr(片口法のⅧ+Ⅸ+Ⅹ/R)がそのような解釈になるのか。
ここで重要視されているのはⅧ~Ⅹ図版ですが、これらは多彩色図版です。
色がいっぱい入っているわけですね。
つまり多彩色図版に対して、つまり色彩という感情を揺さぶる刺激に対してどのような態度を取るかが、この数値からは言えるということです。

不定型の平均域は0.53~0.83ですが、事例はAfr=5/16=0.31であり平均を大きく下回っています。
このような場合、感情刺激を避ける傾向が非常に強いと考えられ、感情を処理する際に相当心地悪さを感じると解釈されます。
その結果、社会の中でより一層窮屈な思いをするようになったり、ひどいときには孤立してしまうことも多いです。
この所見が児童や青年のプロトコル中に見られる場合はとりわけ重要で、日常的な感情のやり取りは発達に役立つものなのに、その多くが避けられ、或いは過度に警戒されてしまいます。

以上より、選択肢の内容は正しいと判断できますから○になります。

D.常識的・慣習的な仕方で反応する傾向が著しい。

「常識的・慣習的な仕方で反応する傾向」は主にP反応を中心とした認知媒介過程の変数を参考にします。
事例では、P=4であり、R=21の場合は期待値の範囲は5~7となるはずです。
クライエントはこれよりもやや低い数値となっていますね。

単純で明確に定義された状況でさえも、非慣習的・個性的な反応が生じる可能性があると解釈されます。
これは必ずしも短所ではないが、社会的慣習を無視する根強い傾向があるのではないかといった疑問が生じてきます。

以上の事柄より、Pの少なさからやや非慣習的な行動に出る可能性があることがわかり、「常識的・慣習的な仕方で反応する傾向が著しい」とは言えないので×となる。

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