臨床心理士資格試験に出ていた用語のまとめ:精神分析とヒューマニスティック心理学

ブループリントを見る限り、各心理療法についてどの程度出題されるかは未知数です。
大枠の名称だけの記載に留まっているため、例えばヒューマニスティック心理学なら、PCA(パーソン・センタード・アプローチ)が出るかどうかはわからないところです。

ですが、やはり出しやすいところではあるでしょうから、臨床心理士の過去問で出題されている心理療法のキーワードをまとめていきます。

集めてみたら結構多かったので、とりあえずは力動論とヒューマニスティック心理学のみで。

【力動論】

ここではフロイトから発した用語をまとめていきます。
ですので、ユングの分析心理学、アドラーの個人心理学もこちらでやっていきます。

◎ユング

  • 言語連想実験
    コンプレックス:無意識の感情と観念が反応を特異にする。
    ◎普遍コンプレックス:自我と独立した作用体の発見。
  • 元型の発見
    ◎民族・人類に共通する原像の発見:元型の発見
    ◎元型の無意識は極めて深く、民族に共通する:集合的無意識
    ◎魂を自我と無意識に、無意識を個人的無意識と集団的無意識に分けた
  • タイプ論:心的エネルギーの方向性(外向・内向)と心の機能類型(4種類)
    ◎外向(自我が関心を外界に向ける)と内向(関心を内面に向ける)
    ◎心の機能の合理的機能:思考型と感情型
    ◎心の機能の非合理的機能:感覚型と直観型
  • 共時性・因果性
    ◎外界世界と内界世界が互いに同時的な相関を持つ「共時性」の指摘
    布置:内界と対応して、外界の事象がある特定の配置をもって現れる
  • 拡充法:夢分析の技法。夢に現れてきたイメージに対し、これに対応するような神話、伝説等の宗教的な知見を夢解釈のために援用し、夢のイメージを膨らませる(拡充する)技法を指す。
  • 個性化過程:個人的無意識と集団的無意識からのメッセージを取り込み、個として全体性を確立し、セルフへ到達することを目標とした過程を指す。

◎アドラー

  • 初期理論:力への意思
    器官劣等性:身体機能について、客観的に劣っていること。
    劣等感:主観的な「劣っている」という感覚。
    劣等コンプレックス:劣等感を対人関係上の道具として誇示する。
  • 中期理論:人格理論の導入
    ◎劣等感理論は目的論(全ての人間行動には目的がある)へ移行
    ◎さらにライフスタイル理論を提唱。
    ◎個人を分割できないとする全体論を示す。
  • 後期理論:人間集団全体を分割できない統一体と捉える
    ◎共同体理論(所属への欲求、社会参加への傾向)の導入
    ◎個人を集団に不可分に組み込まれた有機的部分として理解。

◎ライヒ

  • 性格分析:振る舞いに着目することで無意識的願望を分析
  • 性格の鎧:自我防衛機制のパターンが「自我親和的」として習慣化したもの

◎ランク

  • 出産外傷説:出産時の急激な分離が外傷となる
  • 中断療法:あらかじめ期限設定をし、急激ではなく、徐々に分離に向けてカウンセリングを進展させていく。出生という外傷をより安全に再体験することを目指す。

◎アンナ・フロイト

  • 防衛機制概念の整理:主要な防衛機制として、退行、抑圧、反動形成、分裂、打ち消し、投影、取り入れ、自己への向き換え(人に向ける怒りを自分に向ける)、逆転(愛を憎しみに変える)、昇華の10種類を挙げている。
  • 児童分析の手法:精神分析をそのまま用いず、外的な環境を重視し、未熟な自我をサポートし、成長することを見守るという姿勢。その点でメラニークラインとの論争があった。

◎ハルトマン

  • 健全な自我(現実適応的自我)の研究
  • 自我自律性:自我は単にエスと超自我の調整をするのではなく、積極的に外界と接触し適応的な機能を果たすと考えた。

◎フェダーン

  • 自我と非自我の境界を「自我境界」と名付ける。

◎クリス

  • 自我に奉仕する退行:多くの創造的活動は自我が一時的に退行することによって新しい創造がなされる。

◎コフート

  • 自己愛を主要概念とする「自己心理学」の流れを作り、自己愛の肯定的な側面を評価し、健康な自己愛の視点を取り入れた。
  • 自己愛の治療において「共感的環境」が重要であるとした。

◎マーラー

  • 分離・個体化過程:生後3年までの乳幼児の発達研究により、乳児が母親との一体感から次第に分離して個としての自己像を確立していくプロセスを示した。
  • 自閉期→共生期→分離・個体化期→対象恒常性の確立:母親の不在に耐え、相手との関係を維持できる。
  • 分離個体化期は以下のように分類される。
  1. 分化:母親と自分が別個の存在であると気づく
  2. 練習:母親を支えとして外側と母親の間を往復
  3. 再接近期:分離の意識も芽生えつつしがみつきたい両価的な時期

◎ブロス

  • 第2の分離個体化として青年期に再び親から精神的にも自立していく過程を示した。
  • 青年期を5つの段階で示した。

◎メラニー・クライン

  • 児童へのアプローチ:子どもに精神分析的技法をそのまま採用(プレイには自由連想と同様の意味が内包されているので、それを直接解釈していく)。外界はそれほど重視しない立場。
  • 原始的防衛機制の提唱:スプリッティング、投影性同一視、原始的理想化-脱価値化、躁的防衛など。
  • ポジション概念(妄想分裂ポジション・抑うつポジション)の提唱。
  • フロイトが考えているよりも、エディプスコンプレックスは早い時期から見られるとして、早期エディプスに着目した。

◎フェアバーン

  • 「対象関係論」という言葉を公式に始めて用いた。
  • リビドーの本質を「対象と満足のゆく関係を築きたい」という対象希求的な傾向と捉えた(対象希求)。

◎ビオン

  • コンテイナー理論:乳児は空腹などの耐え難い苦痛を泣声で追い払う。その時、母親はその苦痛を受け取り、乳児が受け入れやすい形にして返すことにより、乳児は苦痛に耐えられるようになっていく(咀嚼して食べやすくしてあげるようなイメージ)。

◎バリント

  • 一次愛、受身的対象愛:甘え(土居健郎)と同義
  • 基底欠損:境界例水準の問題に相当する。「ぴったりと膚接する」。

◎ウィニコット

  • メラニー・クラインのSVを受けていた。
  • ほどよい母親(good enough mother):万能感を脱却し現実を生きる
  • 母親の原初的没頭
  • 移行対象:自分が万能ではないことを体験する
  • 錯覚と脱錯覚
  • ホールディング
  • 本当の自己、偽りの自己
  • 独りでいられる能力:誰かが一緒にいても独りでいられること。くつろぎ。
  • スクイッグル:スクリブルじゃないよ!

◎ホーナイ

  • 基底不安(基本的不安):「敵意に満ちた外界に囲まれて、自分が孤独で無力である」という幼児の感情で、子どもの安全感を脅かす両親との関係によって引き起こされる。

◎サリヴァン

  • 関与しながらの観察:文化人類学者の客観的に対象を対象として扱わず、自分を含めた上で調査を行う手法を面接に採用。
  • 「精神医学は対人関係の学である」とし、精神疾患の原因を社会的な対人関係の偏倚に求めた。特に前思春期的体験の重要性を強調

【ヒューマニスティック心理学】

◎クライエント中心療法

  • Rogersは、カウンセリングの実証的研究を行った。
  • ロジャーズの人間理論は自己理論と呼ばれる。
  • 自己実現傾向、実現傾向を示した(元々はゴールドシュタイン)。
  • 解釈的見方や診断的理解を重視しなかった(と書かれることが多い)。
  • 技術的なものではなく、態度を重視した。
  • パーソナリティ変化の要件は、価値づけが内在化されること。
  • クライエントが自らの態度や感情を自由に表現し、解放することが必然的に洞察をもたらすとした。
  • 「感情の反射」についてRogersは、そのままの言葉で返すようにとは言ってない
  • ロジャーズは後年、個人療法よりもEGに関心の中心を移した
  • ファシリテーターはEGに関する互いの考えをある程度知っておくなど、必要限度の打ち合わせは行う。
  • 人種問題や民族紛争の解決にも取り組んだ。
  • 様々な水準の参加者がいた方が、グループは促進されやすい

◎フォーカシング

  • ユージン・ジェンドリンにより明らかにされた、心理療法の過程。ジェンドリンのウィスコンシンプロジェクト(統合失調症へのロジャーズ3条件の適用研究)での体験が礎となっている。
  • カウンセリングの成功要因を探る研究の中から、クライエントが自分の心の実感に触れられるかどうかが重要であることを見いだした。ロジャーズはセラピストの条件を、ジェンドリンはクライエントの条件を明らかにした
  • 心の実感に触れるための方法を、クライエントに教える必要があると考え、そのための理論として体験過程理論を構築し、具体的な技法としてフォーカシングを提唱した(フォーカシングは技術!)。
  • 身体感覚を重要視する向きが強い。からだの内部の言語化以前のものに焦点を合わせる取り組み
  • 学習用の「ショートフォーム」が存在する。
  • リスナーとフォーカサーの間に集中的な情緒関係の成立が大切。
  • 6ステップが重要
  1. クリアリング・ア・スペース:空間を作る
  2. フェルトセンス:何かよくわからないけど、意味がありそうな感じ
  3. ハンドル:名前をさずける
  4. 共鳴:フェルトセンスと共鳴させ、ぴったりかどうか確かめる
  5. 問いかける:からだにきいてみる
  6. 受けとる:何が浮かんできても受け容れる

◎ゲシュタルト療法

  • Perlsが創始した。東洋思想に興味あり。大徳寺で座禅した。
  • 人間を統合された一元論的(ホメオスタティック)な自己調節機能を持つ全体的存在として捉え、具体的技法を開発した。
  • 今ここ
  • 精神的ホメオスタシス
  • 図と地:精神分析の意識と無意識に相当
  • 気づき:図地反転が起こることを指す。ゲシュタルト療法は「気づきにはじまり気づきに終わる」とされている。
  • エンプティ・チェア:現実の誰かがそこに座っていると仮定
  • 夢のワーク:以前見た夢を現在進行形で語る。夢のメッセージに気づく。夢の要素を生きることが特徴で、解釈は行わない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です