公認心理師 2018-128

日本で開発された心理療法について、正しいものを2つ選ぶ問題です。

本問では、森田療法、内観療法、動作法の3つが問題に含まれていますね。
森田療法については問4でも出ていたので、午前・午後の2回登場したことになります。

認知・行動系の心理療法が多く出題されるという予測があったように思いましたが、様々な学派が広く出ていたように思います。
家族療法、ゲシュタルト療法、遊戯療法、箱庭療法などは出ていませんので、今後の出題があるかもしれませんね。

解答のポイント

森田療法、内観療法、動作法の基本的概念、簡単なプロセスについて把握していること。

選択肢の解説

『①森田療法における入院療法では、最初の約1週間は終日横になったままで過ごす』

森田療法の入院治療は、以下の4期に分かれています。

  1. 絶対臥褥期:
    4日から1週間、患者を個室に隔離し、食事、排便以外はとにかく何もせずに徹底的に横になっていることを命ぜられる
    この目的は臥褥中の精神状態を診断の補助とするだけでなく、安静によって心身の疲労を調整する。また患者は、横になっていると浮かんでくる様々な考えや感情に対して、なるべくそのままにして、あるがままに受け入れることが求められる。
  2. 軽作業期:
    1~2週間、隔離は持続し、対人的な交流は禁じられるが、臥褥は7~8時間に制限され、それ以外の時間は起床する。昼間は必ず戸外に出て空気と日光に触れるが、無意味に散歩する、体操をするなど、気分を紛らわすことなどはやらない。
  3. 作業期:
    1週間程度で、庭造り、大工仕事、手芸など、やや重い作業を行うが、対人交流は禁止される。
  4. 社会復帰期:
    1~2週間の生活訓練が行われ、必要に応じて外出もする。複雑な実生活をすることになるため、時には病院から学校や職場に通うこともあり、退院準備期間でもある。
なお、原法では全治療期間は40日間とされていますが、症状の軽重によって変化します。
最近では、2~3か月を適当とすることも多く、それ以上に及ぶこともあります。
選択肢の内容は、上記の「絶対臥褥期」を示しており、その内容に誤りはありません
よって、選択肢①は正しいと判断できます。

『②森田療法では、不安を「あるがまま」受けとめた上で、不安が引き起こす症状の意味や内容を探求していく』

上記の「絶対臥褥期」に関する記述にもあったように、「患者は、横になっていると浮かんでくる様々な考えや感情に対して、なるべくそのままにして、あるがままに受け入れることが求められる」ことになります。
森田療法における「あるがまま」とは、気分や感情にとらわれず、今自分がやるべき事を実行していく、目的本意の姿勢を示しています。
「今日は気分が悪いから、気分が晴れてからにしよう」「不安だから会社や学校に行けない」「この不安さえなければ良いのに」など、神経症者が陥りがちな逃避行動やその姿勢を戒めたものです。
すなわち、気分や感情は、天気と同じように自分でコントロールできるものではなく、時間が経つと自然に落ち着いてくるものと捉えます。
よって森田療法では、神経症者は、不安な感情や症状はそのままにして、今日すべき仕事や目の前にある家事などを気分や感情にとらわれずに、目的本意で行うということが「あるがまま」の姿勢だとされています。

以上より、選択肢の内容は森田療法の方向性とは逆のアプローチと言えます。
「不安が引き起こす症状の意味や内容を探求」は分析的な心理療法に多いアプローチと考えられます。
ちなみに、第3世代の行動療法である「マインドフルネス」も「あるがまま」を重視しますね。
上記より、選択肢②は誤りと判断できます。

『③内観療法における集中内観は、指導者を含め他人と一切話をしてはならない』

内観には「集中内観」「日常内観」などがあり、集中内観が基本とされています。
集中内観では、ほとんどの場合、内観研修所などに1週間宿泊して行われます。
内観についての説明を受けたのち、静かな個室や広い部屋の隅に屏風を立てて空間を区切り、楽な姿勢で座ります。
そこで1日約15時間、1~2時間おきに指導者による面接を挟みながら集中して行います
この1週間はテレビや新聞といった外的な刺激からは離れ、日常的な会話も厳禁とされます
一方で、集中内観での気づきが日常で見えなくなることもあるため、日常的に内観を行うことが重要とされます(日常内観)。
やり方は集中内観と同じですが、内観を習慣化していくよう無理なく続けていくことが重要です。
日常内観には指導者がいないことが継続を難しくさせるため、内観経験者の定期的な集まりなどが活用されることも多いようです。
以上より、集中内観では指導者以外の他人とは話すことがありません
よって、選択肢③は誤りと判断できます。

『④内観療法では、「してもらったこと」、「して返したこと」、「迷惑をかけたこと」及び「して返したいこと」という4項目のテーマが設定されている』

内観は、自分の身の回りの人々に対して、自分が何をしたか、どういう態度を取ったかを、以下の3つのテーマに沿って、できるだけ具体的な経験や情景を思い出しながら調べていきます。

  1. してもらったこと
  2. して返したこと
  3. 迷惑をかけたこと
上記に対して、無理のない限り母親(又は母親代わりの養育者)から始めていきます。
その後、父親、きょうだい、配偶者、子ども、友人など、自分とかかわりのあるさまざまな人に対して、自分はどうであったかを調べていきます。
この際、メモは取らずに、上記の3点からのみ想起することが求められるが、はじめからすんなりとこの作業に入るのは難しいとされています。
しかし、続けていくことで、徐々に内観に集中し、深まっていくとされています。
罪意識が重視されているため「迷惑をかけたこと」についてが重視される傾向があります。
内観が進むにつれ、自身の影を受け容れ、にもかかわらず愛されているという感謝の気持ちを引き出していくことになります。
上記より、選択肢にある「して返したいこと」はテーマに設定されておりません
よって、選択肢④は誤りと判断できます。

『⑤動作法では、心理的な問題の内容や意味を心理療法の展開の主な要因としては扱わない』

動作法は、成瀬悟策が、脳性まひ児の動作不自由を改善する手立てとして開発しました。
動作を道具と考えており(「正確な動作」が目的ではない)、「意図-努力-身体運動」というメカニズムで、生理的プロセスとしての運動とは区別しています。

動作法では、動作の背後にある「主体活動」としての体験の仕方を重視します。
クライエントが、自分のからだ、すなわち自体に働きかける能動的・目的的な努力活動と、援助者がからだを介して相手の心に働きかけ、その主体活動を促進・活性化できるという点で、従来のことばやイメージによる心理療法や、生理学に基礎を置く体育的方法とはまったく異なる、心理臨床のきわめて有用・有力な道具であることが明らかになっています。

動作法を心理療法として用いる目的は、課題動作を実現しようという努力による動作の体験過程を通して、日常生活における体験の仕方を変え、自己の活動を安定化・活性化・能動化させることにあります。
この点で、各種心理療法とはまったく異なる原理を持ちます。

以上より、選択肢⑤は正しいと判断できます。

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