日本で開発された心理療法について、正しいものを2つ選ぶ問題です。
本問では、森田療法、内観療法、動作法の3つが問題に含まれていますね。
森田療法については問4でも出ていたので、午前・午後の2回登場したことになります。
認知・行動系の心理療法が多く出題されるという予測があったように思いましたが、様々な学派が広く出ていたように思います。
家族療法、ゲシュタルト療法、遊戯療法、箱庭療法などは出ていませんので、今後の出題があるかもしれませんね。
解答のポイント
森田療法、内観療法、動作法の基本的概念、簡単なプロセスについて把握していること。
選択肢の解説
『①森田療法における入院療法では、最初の約1週間は終日横になったままで過ごす』
森田療法の入院治療は、以下の4期に分かれています。
- 絶対臥褥期:
4日から1週間、患者を個室に隔離し、食事、排便以外はとにかく何もせずに徹底的に横になっていることを命ぜられる。
この目的は臥褥中の精神状態を診断の補助とするだけでなく、安静によって心身の疲労を調整する。また患者は、横になっていると浮かんでくる様々な考えや感情に対して、なるべくそのままにして、あるがままに受け入れることが求められる。 - 軽作業期:
1~2週間、隔離は持続し、対人的な交流は禁じられるが、臥褥は7~8時間に制限され、それ以外の時間は起床する。昼間は必ず戸外に出て空気と日光に触れるが、無意味に散歩する、体操をするなど、気分を紛らわすことなどはやらない。 - 作業期:
1週間程度で、庭造り、大工仕事、手芸など、やや重い作業を行うが、対人交流は禁止される。 - 社会復帰期:
1~2週間の生活訓練が行われ、必要に応じて外出もする。複雑な実生活をすることになるため、時には病院から学校や職場に通うこともあり、退院準備期間でもある。
『②森田療法では、不安を「あるがまま」受けとめた上で、不安が引き起こす症状の意味や内容を探求していく』
『③内観療法における集中内観は、指導者を含め他人と一切話をしてはならない』
『④内観療法では、「してもらったこと」、「して返したこと」、「迷惑をかけたこと」及び「して返したいこと」という4項目のテーマが設定されている』
内観は、自分の身の回りの人々に対して、自分が何をしたか、どういう態度を取ったかを、以下の3つのテーマに沿って、できるだけ具体的な経験や情景を思い出しながら調べていきます。
- してもらったこと
- して返したこと
- 迷惑をかけたこと
『⑤動作法では、心理的な問題の内容や意味を心理療法の展開の主な要因としては扱わない』
動作法は、成瀬悟策が、脳性まひ児の動作不自由を改善する手立てとして開発しました。
動作を道具と考えており(「正確な動作」が目的ではない)、「意図-努力-身体運動」というメカニズムで、生理的プロセスとしての運動とは区別しています。
動作法では、動作の背後にある「主体活動」としての体験の仕方を重視します。
クライエントが、自分のからだ、すなわち自体に働きかける能動的・目的的な努力活動と、援助者がからだを介して相手の心に働きかけ、その主体活動を促進・活性化できるという点で、従来のことばやイメージによる心理療法や、生理学に基礎を置く体育的方法とはまったく異なる、心理臨床のきわめて有用・有力な道具であることが明らかになっています。
動作法を心理療法として用いる目的は、課題動作を実現しようという努力による動作の体験過程を通して、日常生活における体験の仕方を変え、自己の活動を安定化・活性化・能動化させることにあります。
この点で、各種心理療法とはまったく異なる原理を持ちます。
以上より、選択肢⑤は正しいと判断できます。