TAT、PFスタディ、SCT、ソンディテスト

今回は描画以外の投影法についてまとめていきます。
記載してあるのは全て臨床心理士資格試験で出た内容です。
これに公認心理師試験で出た箇所を赤字にして見やすくしました。

TATについては、2018-115がまるまるTATの問題でしたね。
臨床心理士資格試験で出た内容を押さえておけば大丈夫でした。

PFスタディは、2018-17で出題されていました。
教示など、少し突っ込んだ内容が公認心理師では出題されていました。

SCT、ソンディの問題は、今回の試験では出ませんでしたね。
ソンディについては、一時期臨床心理士資格試験でよく出題されていましたが、ここ数年はあまり出ていないようです。

TAT

Murray&Morganによって1935年「空想研究の一方法」という論文で紹介されました。
覚え方は(m(TAT)m)とすると、泣いて手をついて謝っているように見えますね(見えなくてもいいけど)。
両脇の手をついて謝っている部分のm2つは、創始者のMurrayとMorganの頭文字です。

展開される物語のテーマから、クライエントが当面している困難さの内容やそれに対する態度、願望や周囲への期待などを読み取る検査です。
ちなみにTATの日本語訳は「主題統覚検査」です。
TATでは、人物図版が多く、人間関係の様相が現れやすいとされています。
それ以外にも、社会的態度、自己の役割の自覚、他人の役割に対する期待、直接的質問では把握しがたい不満、不安などを探ります。

マレーの欲求圧力理論を基盤とし、パーソナリティを欲求と圧力の相互作用で捉えます。
この理論で言う欲求とは「衝動、願望、意図等の人間が環境に向かって発する力の総称」であり、圧力とは「環境から人間に働きかける力の総称」とされています。

マレーの基本構想は、図版を通して物語ってもらうことで、被検者が自分と同一視していると思われる主人公が示す欲求と、そうした欲求を促進したり阻止したりする形で環境が働きかける圧力との関係によって、その物語に備わる「主題」を把握し、さらに物語の結末の幸・不幸、登場人物の示す感情調などにも注目して、被検者の人格特性を分析する、というものでした。

概要

  • 展開される物語のテーマから、クライエントが当面している困難さの内容やそれに対する態度、願望や周囲への期待などを読み取る。
  • 分析・解釈法については、さまざまなスコア化の試みが提案・実践されている。一方で、未だ体系化はされていない。
    原作者であるマレーの理論には解釈法が定められてはいるが、マレーの手順が現在では使われていない。一方で、マレーの方法に代わる、多くの人々が依拠するような解釈法が存在するかといえば、それも未だ「未確立」と言える。
    ちなみに、主流とはなっていないが、反応分析・解釈に関するまとまった見解なりシステムなりを提示した人は少なくない。Tomkins、Stein、Henry、Murstein、Rappaport、Bellakなど。
  • 人物図版が多く、人間関係の様相が現れやすい。図版中の人物の曖昧さが高いほど、色んなことがわかるというわけでもない。
  • ベラックらによるCAT(10歳以下を対象とし、人物ではなく動物画が用いられている)とSAT(65歳以上を対象とし、登場人物に老齢者が多く登場)がある。

手続き

TATの図版は、多様な受け取り方を許す場面を描いた図版30枚と、何も描かれていない白紙図版1枚の計31枚から構成されています。
それを用いて、以下のように進めていきます。

  • 日常生活における葛藤場面が描かれたカードを1枚ずつ呈示し、過去・現在・未来にわたる物語を自由に作ってもらう。
  • 原法では第1系列、第2系列と教示を変えてそれぞれ10枚ずつ、2日に分けて実施することになっているが、原法通りにやらない。決められた通りの順序もない等、厳密な取り決めはない。
  • 「今どんなことが起こっているのか、登場人物がどう感じているのか、結末がどうなるのか」などを“物語ってもらう”ことが大切。
原法では検査者が20枚を選んでいましたが、現在では検査者が任意に何枚か選ぶという形になっています。
たいていのTAT使用者は、一般的に重要とされる図版と、個人的な経験から重要と見做す図版から、せいぜい10数枚のシリーズを構成して使用しています。

また呈示順序についても、ロールシャッハほどの厳密性はありません。
TATにおいては教示も諸家によって一定の見解が得られているとは言えません(例えば「ドラマチックな話をつくる」などの教示を主張する人もいれば、それを不要とする人もいます)。

カードの重要度・特性

カードの重要度は研究者間でも一致していないが、それなりに使われやすい図版というものがあります。
ハルトマンは、以下の図版を重視した。
  • 1:少年-バイオリン。絵の中の主人公が少年であることは、誰もが幼き時代を通過してきているだけに、同一視しやすい。
  • 2:農場場面。3人の人物を生き生きと、ダイナミックにかかわらせながら、物語をつくる力のあることはそれだけでも、現実の社会生活で、対人関係をこなすバイタリティのあることを示している。つまり、複雑な人間関係を処理できることは、社会的成熟の一指標である。
  • 3BM:長椅子-もたれかかる人。危機的状況の暗示、性別不明の人物、拳銃のようなものの存在などから、TAT研究者の間では重要な図版とされている。
  • 4:言い争う男女。
  • 6BM:母-息子。
  • 7BM:父-息子。
  • 8BM:手術場面。触発するテーマは、敵意や攻撃心を含む物語。
  • 13MF:性的場面。
ここまでは求められないかもしれませんが、一応押さえておきましょう。

【2018-115】

PFスタディ

ローゼンツァイク(Rosenzweig)が、フロイトの分析理論諸概念の検証と自身の欲求不満理論の解明のため作成したという経緯がある検査です。

彼の理論は「欲求不満理論」と言いますが、そこでの「アグレッション」とは、欲求不満状況に対する反応の総称なので、攻撃性よりも広い意味を持ちます。
  1. 普通の生活状態における一般的な主張性:これが特に重要。
  2. そのような行動のもとになる神経系のメカニズム。
  3. それらの行動を伝達あるいは促進する生理学的条件。
すなわち、P-Fスタディで使われる「攻撃性」という表現は、一般的な「主張性」というニュアンスであり、幅広い概念と言えます。

概要

  • ローゼンツァイクは、この「攻撃性(≒主張性)」について、それをもたらした「責め」をどこに求めるかで以下の3つに分けています。
    1.他責:攻撃性を外界に向ける。
    2.自責:攻撃性を自らに向ける。
    3.無責:攻撃性を向けることを回避する。
    「無責」という表現から「攻撃性が無い」と考えるのではなく、「回避している」と捉えることが重要。
    攻撃性、すなわち主張性ですから、それが無い人間など存在しないと言える。
  • テスト刺激は自我阻害場面(アグレッションが生じやすい場面)と超自我阻害場面(怒られる場面)とに大別される。
    自我阻害場面とは「人為的あるいは非人為的な妨害によって、直接的に自我の欲求・意図が阻害され、欲求不満を引き起こしている場面」を指します。
    超自我阻害場面とは「他者から非難・詰問され、超自我の理想・目的が阻害されて欲求不満を引き起こしている場面」を指します。単純に言えば、怒られる場面ですね。
  • P-Fスタディでは「…この右側の人の答えると思われる内容を書き込んでください」と教示する。
  • GCR(集団一致度:そこではそういう反応するでしょ)があり、常識的な反応の指標となっている。
  • 教示は「右側の人はどう答えますか?」で、評定は「言葉の外見的・表出的意味に基づいて行う」もの。
  • 「反応転移」という概念があり、テストの前半と後半で反応の質に変化が見られることを指す(精神分析の転移とは異なる!)。そこでは、情緒の安定性、攻撃性の表明に際しての葛藤の指標、社会化過程の指標を見ていく。

アグレッションのタイプ

アグレッションの方向(他責・自責・無責)×アグレッションの型(障害優位・自我防衛・要求固執)で9タイプが示されています。

  • 障害優位型:自我の反応を隠し、被害などを指摘するに留める。
  • 自我防衛型:自我を防衛する、つまり、欲求不満を解消するのに誰が悪いかという責任の所在を重視する。
  • 要求固執型:問題の解決にこだわる。
これにアグレッションの方向性(他責・自責・無責)を加えて以下の9枠で反応を分類していきます。
【2018-117】

SCT

文章完成法テストです。

言語連想検査から派生したもので、元々は知的な面を測定するための検査として使用されていました。
概要は以下の通りです。

  • 未完の文章を自由に記述・完成させることで、知能や性格、興味や生活史といった、 パーソナリティの全体的把握を行う。
  • 刺激文は、PartⅠとⅡ各30、計60ある
  • 言語が刺激であるという特性から、無意識的側面よりも対社会的態度が反映されやすい。テストバッテリーを組み、表層的・全体的把握を行いつつ、ロールシャッハなどで無意識的側面を併せて見ていく。
  • 刺激語により、知的側面・情意側面・指向的・力動的側面・身体的側面・家庭的側面・社会的要因などを見ることができる。
  • 刺激語は必要に応じて自分で作って実施しても構わない。
  • 分析・解釈には、客観的・数量的方法と、直感的・了解的方法がある。
     ◎形式分析:反応の長さ(長文か短文か)、反応時間、文法正誤、筆跡
     ◎内容分析:刺激語の特徴による分析(知的側面、家族関係等)

個人的には「刺激語を自分で作ってもよい」という点には驚いた記憶があります。

ソンディテスト

ソンディが自身の運命分析学を証明するために考案した検査ですね。
正式名称は「実験衝動診断法」です(ソンディテストは俗称みたいなものですね)。

概要

  • 運命には、自分ではどうしようもない「強制運命」と、自由に変えられる「自由運命」があり、運命分析は、病む人が強制運命から自由になることを支援する活動と言える。
  • 48枚の顔写真はすべてヨーロッパの人々で、精神的に何らかの異常を認められた患者のものである。
  • 正規の繰り返しテスト法では、10回行うのが原則。適宜1回、2回という使い方もして良い。人間の時間軸に対する変容過程を把握しようとする試み。
  • 選択特徴の記号化では、+、-、±、0に、その強度を示す!が組み合わさって行われる。
  • 0反応を客観的症状反応、±反応を主観的症状反応と呼ぶ。

解釈について

  • 前景像(VGK):相対的に最も強い浸透的な影響力を持った家族的衝動欲求傾向と自我の特徴を反映。被験者の現状を最も反映している。
  • 理論背景像(ThKP):実際の背景人格(ユングのシャドウ)を可視的にする。
  • 背景像(EKP):VGPとThKPとの一致関係でのみ評価。背景人格の運命可能性(将来的な変化可能性)を表している。
  • 実験的補償像(ThKP・EKPの検討):この検討を通して、予後・治療効果の予測・治療法の選択などについての知見が得られる
  • 鏡像反応:鏡に映したような逆の反応記号が同じ系列の中で得られることを言う。心理的に安定しているなら見られることは少ない。

1件のコメント

  1. 何時もお世話になっております。

    丁寧なご説明有難う御座います。

    TATとPFスタディ葉、似ているが理論的背景がことなるのですね。
    有難う御座います。

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