公認心理師 2023-30

心理検査の構成に関する問題です。

その心理検査が「何を測っているか」「そのためにどういう構成になっているか」までの把握が求められていることがわかりますね。

問30 「姿勢・運動」、「認知・適応」及び「言語・社会」の3つの領域から構成されている心理検査として、正しいものを1つ選べ。
① WPPSI-Ⅲ
② 新版K式発達検査
③ S-M社会生活能力検査
④ グッドイナフ人物画検査
⑤ 遠城寺式乳幼児分析的発達検査

解答のポイント

各検査の構成を把握している。

選択肢の解説

① WPPSI-Ⅲ

WPPSIは、ウェクスラーによって考案された幼児用個別式知能検査です。

成人用のWAIS、児童用のWISC同様、ウェクスラーの知能観を反映し、その特徴を備えています。

ウェクスラーは知能を「目的的に行動し、合理的に思考し、能率的に環境を処理するための、個人の総合的、全体的能力」と定義し、質的に異なる知的能力から構成されていると考えました。

そこで、それぞれの異なる能力をはかるための複数の下位検査からなる検査を考案しました。

当初、就学前の子どもの能力を適切に評価できる検査が欲しいという声に応えるべく、はじめはWISCの適用年齢を引き下げようとしましたが、予備実験の結果、断念したとされており、別枠でWPPSIを作成したということになります。

よって、基本的にはWISCらと同様の能力を測ろうとしています。

WPPSIの対象年齢は2歳6カ月~7歳3カ月であり、その狭さがWPPSIが使用されにくい一因となっています。

2歳6カ月~3歳11カ月では、4つの基本検査の実施から「全検査IQ(FSIQ)」「言語理解指標(VCI)」「知覚推理指標(PRI)」を、5検査の実施でさらに「語い総合得点(GLC)」を算出することができます。

4歳0カ月~7歳3カ月では、7つの基本検査の実施からFSIQ、VCI、PRIを、10検査の実施でさらに「処理速度指標(PSI)」とGLCを算出することができます。

旧版WPPSIの下位検査「動物の家」「算数」「迷路」「幾何図形」「文章」が削除され、新たに「行列推理」「絵の概念」「記号探し」「語の推理」「符号」「ことばの理解」「組合せ」「絵の名前」が追加されました。

これによって、幼い子どもの認知能力をより適切かつ多面的に測定することができるようになりました。

上記の通り、WPPSI-Ⅲは「姿勢・運動」、「認知・適応」及び「言語・社会」の3つではなく、4つの基本検査の実施から「全検査IQ(FSIQ)」「言語理解指標(VCI)」「知覚推理指標(PRI)」を、5検査の実施でさらに「語い総合得点(GLC)」を算出して評価する検査になります。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② 新版K式発達検査

Gesell,A.の発達理論に基づいた検査であり1951年に嶋津峯眞、生澤雅夫らによって、京都市児童院(1931年設立、現・京都市児童福祉センター)で開発されました。

彼らはこの検査の目的を「子どもの精神発達の状態を、精神活動の諸側面に渡って観察し、心身両面にわたる発達障害などについて適切な診断を下すための資料を提供する」ところにあるとしています。

この検査は328項目で構成されています(実施項目は20~50項目ほど)。

改訂前は0歳3か月~14歳0か月までだったが、これを拡大して0歳3か月未満児に対する尺度を整備するとともに成人まで適用可能になっています。

0歳児を対象とする第1葉、第2葉は、検査を受ける子どもの姿勢を、子どもに負担がかからないように順を追って変えていくので、検査の実施順が決められています。

第3葉以降は、子どもの興味や注意を持続させるように実施順序を工夫するよう求められており、以下の点に従いつつ実施していきます。

  • 基本的に生活年齢に該当する検査項目を中心に展開する。
  • 通過できる項目はより年齢が高い項目へ展開していく。
    一方で、不通過の項目では対象年齢の低い項目へ展開し、通過できる項目の上限と下限を明らかにしていく(ビネー式に似ている感じですね)。
  • 項目の通過・不通過以外にも、行動観察の情報も記録することが基本となっている。

同一の被検者に対して、数回の検査を実施することが可能であるため、結果を並べて分析できる(=発達の変化を捉えやすくなる)という利点があります。

聴取による判定をできるだけ避けて、検査場面の子どもの行動から判断する検査です。
※保護者からの聴取による判定は、「禁止」という強い文言ではなく「薦められていない」というニュアンス。やむを得ない場合は聴取による判定も有り得る。

新版K式発達検査において、結果として算出するのは以下の項目になります。

  • 全領域
  • 姿勢・運動領域:
    粗大運動(全身を使った運動:走る、歩くなどのこと)を中心とする運動に要する身体発達の度合い。3歳6か月以降は課題が設定されていない。
  • 認知・適応領域:
    手先の巧緻性や視知覚の力などの視覚的な処理と操作の力
  • 言語・社会領域:
    言葉のほかに大小や長短などの抽象的な概念や数概念を含む対人交流の力

なお、年齢層によって、上記の検査項目の割合が変化します(乳児は「姿勢・運動領域」の項目が多くなる等)。

上記の通り、新版K式発達検査が「姿勢・運動」、「認知・適応」及び「言語・社会」の3つで構成されているということになります。

よって、選択肢②が適切と判断できます。

③ S-M社会生活能力検査

S-M社会生活能力検査は、1歳から13歳までの子どもの社会生活能力の発達を測定するために考案された質問紙で、日常生活の中で観察できる各発達段階の社会生活能力を代表する130の生活行動項目で構成されています。

各々の項目は以下の6つの領域に分けられます。

  1. 身辺自立:衣服の着脱、食事、排せつなどの身辺自立に関する生活能力
  2. 移動:自分の行きたいところへ移動するための生活行動能力
  3. 作業:道具の扱いなど作業遂行に関する生活能力
  4. 意思交換:言葉や文字によるコミュニケーション能力
  5. 集団参加:社会生活への参加の具合を示す生活行動能力
  6. 自己統制:わがままを抑え、自己の行動に責任をもって目的へと方向づける能力

この検査の回答者は子どもの日常生活をよく知る保護者であり、検査時の影響を受けることなく情報を得ることが可能です。

集計した結果からは領域別の社会生活年齢SAと全検査SAが換算されます。

そして、全検査SAを歴年齢で割り、社会生活指数SQが算出され、発達の程度を知ることができます。

上記の通り、S-M社会生活能力検査は「姿勢・運動」、「認知・適応」及び「言語・社会」の3つではなく、身辺自立・移動・作業・意志交換・集団参加・自己統制の6つで構成され、評価していくことになります。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

④ グッドイナフ人物画検査

人物画検査には大きく二つ存在し、一つはDAP(Draw a Person)であり、もう一つはDAM(Draw a Man)です。

DAPはMachover(マッコーバー)が作成した「パーソナリティ検査」になります。

性別の異なる1人の人物をそれぞれ1枚ずつ描き、それらの人物を描く過程での内容や順序、その他さまざまな要素(動態分析や形態分析という表現は使ってないけど、そういうもの)を解釈し、被検査者の人格特徴を査定します。

「Macを食べすぎて(マックをオーバー=マッコーバー)、お腹がダップダップ(DAP)」と覚えておきましょう。

こうしたDAPに対して、DAMはGoodenough(グッドイナフ)が開発した「動作性知能検査」になります(本選択肢で問われているのはこちらのことですね)。

1926年にグッドイナフが最初に知能を測定する簡便な方法として報告し、世界各地で広範囲に施行されています。

DAMの特徴は、「人を一人描いてください(頭の先から足の先まで全部です)」という教示をするため特に子どもが好んで積極的に実施すること、言語や聴覚に問題のある被検査者にも適用できること、採点が容易であることなどが挙げられます。

女性が描かれた場合は、更に男性を描いてもらい、男性像のみを採点の対象とします。

からだの各パーツごとに設けられた採点基準があり(こういう風に手を描くのは〇歳〇カ月みたいな感じで)、それに従って採点を行い評価と検討を行うことになります。

ちなみに適用年齢は健常児の場合、3歳~8歳半までになります。

上記の通り、グッドイナフ人物画検査は「姿勢・運動」、「認知・適応」及び「言語・社会」の3つではなく、からだの各パーツごとに設けられた採点基準に従って評価・検討していくことになっています。

よって、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ 遠城寺式乳幼児分析的発達検査

遠城寺式乳幼児分析的発達検査は1960年に発表され、1977年に改訂された簡易式の発達のスクリーニング検査です。

項目別に短時間で測定でき、プロフィールとして示すことで、その発達状況を分析的に評価できるという特徴を有しています(分析的=精神分析ではないので注意が必要です。念のため…)。

以下の3領域6項目の発達の状況が測定できます。

  • 「運動」:移動運動・手の運動
  • 「社会性」:基本的習慣・対人関係
  • 「言語」:発語・言語理解

これらの領域・項目について、0歳0か月より4歳8か月までを対象に実施可能です。

観察と保護者からの聞き取りによって評価します。

認知能力については明確な記述がありませんが、上記の「手の運動」「対人関係」「言語理解」などの項目を見ればわかるように、これらは乳児期の認知発達と連動して生じるものであり、これらの判定から認知機能の推定・評価は十分に可能です。

実施方法は、グラフ欄の歴年齢線上に年齢相当位置をプロットし、被検査児の歴年齢相当の問題から開始します。

事前に発達の遅れが疑われる場合には、発達の状況に見合った年齢の項目から開始します。

その問題が合格であれば、上の年齢段階の問題へと進み、不合格が3つ続いたところで中止します。

また下の年齢段階の問題についても、合格が3つ続いたところで、それ以下の年齢段階の問題については通過していると判断し、中止します。

3領域・6項目とも、順次実施し、合格・不合格を○×で問題のところに記載します。

3連続して合格の場合は合格の一番上の問題の線上にプロットし、合格・不合格が入れ替わる場合には、合格の問題数でプロットします。

全ての領域・項目についてプロットが終了した後、各項目のプロットを結び、プロフィール表を完成させます。

歴年齢よりもプロフィールで描いた線が上にあれば発達が早く、下であれば発達の遅れが指摘されるというわけです。

プロフィールの描き方によって、発達のアンバランスさも把握が可能です。

上記の通り、遠城寺式乳幼児分析的発達検査は「姿勢・運動」、「認知・適応」及び「言語・社会」の3つではなく、「運動(移動運動・手の運動)」「社会性(基本的習慣・対人関係)」「言語(発語・言語理解)」で構成され、評価していくことになります。

以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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