公認心理師 2021-129

心理検査結果を報告する際の対応に関する問題です。

書籍等は参考にせず、自分の頭の中にあることを適当に出しておきました。

問129 心理検査結果を報告する際の対応として、不適切なものを1つ選べ。
① クライエントが得意とする分野も記載する。
② 報告する相手によって、伝え方を工夫する。
③ クライエントが検査を受ける態度から推察できることを記載する。
④ 検査の記録用紙をコピーしたものを、そのままクライエントに渡す。

解答のポイント

心理検査結果の報告に関するマナーを理解している。

選択肢の解説

① クライエントが得意とする分野も記載する。

こちらは心理検査結果を記述する際に大切なことになります。

検査報告には、得意なところと不得意なところを両方述べる必要があります。

まず不得意なところを述べる価値としては、問題をクライエントに正しく認識してもらうための一助とすること、その問題に対してどのように考えればいいかの理解を与えること、必要な対応を伝えること、などが挙げられるでしょう。

場合によっては、問題を否認しているクライエントに対して、「客観的な事実」を提示するという技術をもって、問題の受容を促進するという狙いもあり得ますね。

これに対して得意な分野を記載する意義として、クライエントができることを明らかにして問題改善の一助にすること、不得意な面との対比を以って問題理解を促進させること、場合によっては得意な分野がクライエントの問題を引き起こしている可能性、などが挙げられます。

なお、私はよく言われる「クライエントがショックを受ける」という理由で得意な分野を記載するのには反対の立場です。

得意な分野を記載するのは「不得意な分野を指摘されたショック」を薄めるために行われるべきではなく、どこまでいっても「クライエントの支援に役立てるため」です。

もちろん、大きすぎるショックが支援の足かせになるならそれをどうコントロールするかは重要ですが、そもそも「ショックなことが、支援に不要とは限らない」という理解も持っておく必要があります。

得意・不得意の分量や伝え方はクライエントによって変えるべきですが、それがクライエントの支援になるという前提を果たすものとして機能するようにしていくことが重要ですね。

具体的な対象として、発達障害者(児)の場合、不得意なところばかりを記載するのではなく、得意なところも同じくらいの分量記載することが重要です。

彼らの不得意なところは「他者よりも苦手であり、伸びにくい」という特徴があります(単に低いだけでなく、伸びるのが遅い、伸びにくいという面も忘れてはならない)。

不得意なところだけを記載すると、そういう「できないし、伸びない」というところだけを述べることになってしまいますが、検査を取る上で大切なのは「このクライエントに役立つ情報を述べる」ということになります。

発達障害者(児)にとって得意な分野とは、自分たちがどういう分野で生きていけばいいかを考えるために有用な情報であり、未来に向けての思考を促します。

上記の例はほんの一部ですが、多くのクライエントにとって得意な面をどのように記載し伝えていくかは、検査結果報告において重要であると言えます。

よって、選択肢①は適切と判断でき、除外することになります。

② 報告する相手によって、伝え方を工夫する。

心理検査結果を報告する相手は、さまざまな対象が考えられます。

代表的な相手を挙げていくと・・・

  1. クライエント本人:成人
  2. クライエント本人:児童や生徒
  3. 保護者
  4. その他の関係者

・・・等になります。

それぞれ具体的に考えていきましょう。

まず「クライエント本人:成人」の場合です。

これは被検査者であるクライエントに、結果についてフィードバックを行うという状況ですね。

この場合に大切になるのが、クライエントが検査を取った目的に沿って報告することになります。

クライエントは何らかの動機づけを持って検査を受けたと見なすのが一般的でしょうから(やりたくもない検査を実施した、というのは報告以前の問題ですからね)、そのクライエントの動機づけに応えるような形での報告になるでしょう。

また、クライエントの病理や問題によって、伝え方が変わってくることは言うまでもありませんね。

これに対して、クライエント本人への報告であっても、報告の相手が児童や生徒であれば、報告者側にいろいろな工夫が必要になってきます(「クライエント本人:児童や生徒」の場合ですね)。

子どもが相手の場合、上記のような動機づけが明確でなく、検査をした目的を問われたときに首をかしげたり、それこそ「やれって言われたから」と答えることもあり得ます。

もちろん、検査をするときに、その目的の伝達や本人の思いを聞くことは前提ではありますが、それをしっかりやっていても上記のような反応で返されることもあります(そもそも年少の子どもにとって、2週間先のことは「永遠の向こう側」です。ですから、検査-報告までのタイムスパンが短い方が良いです)。

ですから、フィードバックを行うときには、今一度検査の目的を確認し、本人の意欲が絡む形での報告になることが望ましいと言えます。

子どもへの報告の難しさは、上記のような動機づけだけではありません。

子どもの理解力は、その年齢によって大きく異なるだけでなく、個人差もかなり見られます。

ですから、その理解力に応じた伝え方をしなければなりませんし、そのためには専門用語を日常語に言い換えたり、子どもに馴染みのある例を持ち出して伝えるなどの工夫が求められます。

これは子どもを例に述べていますが、相手が成人であっても理解力には差があると思って対応していくのが基本ですね。

また、子どもの場合は「飽きる」という事態にも気を配る必要があります(老人は「疲れる」ということに配慮する必要がある)。

無理矢理こちらに意識を向けさせる必要はありませんが、やはり「あなたにとって大切なことを話している」という思いを持ち、理解しやすくして飽きがこないような工夫は大切ですね。

さて、上記のような検査を子どもに実施した場合、むしろ保護者への報告の方が多いかもしれません。

保護者が報告を受ける場合、子どもの問題がどのようなものであるか、保護者が子どもの問題をどの程度受容しているか、などによって報告のニュアンスを変えていくことになるでしょう。

例外的な話ですが、「子どもを積極的に問題ありと見なしたい保護者」は一定数存在しており(その詳細な心理の説明は本問の解説の域を超えるので割愛)、こういう場合には、肯定的側面と否定的側面の伝え方の割合が重要になります。

こういう保護者は「肯定的側面の情報が入りにくく、否定的側面の情報を過大に摂取する」という特徴がありますから、確定的な問題でない限りは否定的側面の情報を少なく伝えた方が、むしろ「ちょうどよく伝わる」ことが多いですね。

いずれにせよ、こちらが「現実で伝えている報告」が、報告の受け手の心的世界で「どのように受け取られるか」を考えながら、報告の内容等を調整することが重要になります。

上記以外でも「その他の関係者」として、検査を依頼してきた医療機関に検査結果を報告するという場合もありますね。

この際は、クライエントの問題やそれを生じさせている心理的傾向を正しく伝えることが重要になります。

この場合は「情報提供書」という形での報告になることもありますが、時にはこれをクライエントが読むことも考えねばなりません。

工夫として、まずは検査者がフィードバック及び情報提供書の作成を行い、その情報提供書をクライエントに確認してもらった上で、依頼元である医療機関に持参してもらう、などがありますね。

上記の通り、報告する相手によって、その伝え方はもちろん、時には伝える内容さえも微妙に変えながら報告することが重要になります。

「内容を変える」というと意外に感じる人もいるかもしれませんが、どこを際立たせるか、どこに注目してもらうことが重要かは、報告する相手によってずいぶんと変わるものです。

そういうことを踏まえて、報告書の作成や伝達を行っていくことが重要になります。

以上より、選択肢②は適切と判断でき、除外することになります。

③ クライエントが検査を受ける態度から推察できることを記載する。

こちらは検査結果の報告において非常に重要な事柄になります。

検査結果から得られた情報と、検査態度に矛盾がある場合、その矛盾が何を意味するのかまでを含めて検査報告を作成することが求められます。

例えば、検査結果から「意欲的」と解釈されるのに、受検の態度にやる気が見られない場合など、その2つの矛盾する在り様に対して「整合性のある説明」が報告する際には求められるということです。

その「整合性のある説明」として、例えば、「自分を良く見せようとする特徴を有しているが、テスターという1度きりの関係の相手には雑な対応になる」ということが考えられたとしたら、次はそうしたクライエントの特徴とクライエントの抱えている問題との関連について考えていくことになります。

こういうクライエントの場合、人間関係の始めは良くても、慣れてくると不適切な関わりが増えてくるということが想定されますよね。

このようにクライエントの態度は、それ単体で見ていくこともありますが、それ以上に検査結果全体の整合性や、クライエントの見立てに役立てられる情報として顕在化してくると言えるわけです。

もちろん、受検の際の態度それ自体も重要な情報です。

受検時のクライエントの態度がやる気がないものであれば、検査結果への影響も考慮せねばなりませんし、この点に関しては知能検査に与える影響が特に大きいです。

知能検査であればわからない問題への反応の仕方、例えば、「わからない」とはっきりと言えるか否か、言えない場合にはどういう反応の仕方か(知っていたけど忘れた、などのような反応もあり得る)、理解できる問題に限って多弁ではないか、などを記録しておく必要があります(恥や万能感の見立てと関連してくる)。

検査前と検査中の状態の落差、考えるときの仕草、その他諸々が検査をする上での重要な情報になると言えますから、クライエントの検査態度およびそこから考えられる事柄を記録し、報告に反映させることは大切です。

以上より、選択肢③は適切と判断でき、除外することになります。

④ 検査の記録用紙をコピーしたものを、そのままクライエントに渡す。

こちらに関しては「公認心理師 2020-89」で解説がありますね。

今回はちょっと固い方面から解説していきましょう。

まず「検査の記録用紙をコピーしたものを、そのままクライエントに渡す」ことに関しては、著作権の問題を考慮する必要があります。

特に知能検査では、著作権によってコピーして専門家以外に渡すことが禁じられているものがあります。

専門家間で受検者の記録を伝達する場合に限り、記入済み記録用紙の複写が認められる場合が多いですね。

なお、WISC-Ⅳでは、専門家同士の研修のために複写する場合には、米国Pearson社または日本文化科学社の書面による承認を受ける必要があります。

では、著作権の問題がなければ大丈夫かと言われれば、やはりそれもNoになります。

検査の中には「継時的に検査を行い、変化を見る」というものも少なからず存在しますが、検査の記録用紙には検査内容が含まれていることが多いので、コピーをそのまま渡してしまうと、そうした継時的な見方が難しくなる場合があります。

それに、実際に検査を取ると、検査の記録用紙の中に細かい情報を走り書きしていることがありますよね。

そういう情報はクライエントの眼に触れるのが良くない場合もあると考えられますから(細かく観察・記録されているのは良い気分ではない)、それをそのまま渡すのはよろしくありません。

また、思いっきり否定的に見れば、クライエントがその記録用紙を持って「セカンドオピニオン」をして回る可能性もあります(結果の報告に不満があればあり得る話です)。

つまり、「検査結果について、クライエントが好きに解釈できるような情報を渡したり、状況にしてはならない」ということです。

もちろん、クライエントに検査結果を報告する際に、どういう問題であったか、何を狙っての設問であったか、などを伝えるというのは、検査内容によってはあり得るでしょうが、やはりコピーを持たせるとなると問題が大きいですね。

以上のように、著作権の問題や種々の臨床上の問題が想定されるため、検査の記録用紙のコピーをそのままクライエントに渡すのは避けるべきです。

以上より、選択肢④が不適切と判断でき、こちらを選択することになります。

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