公認心理師 2018-109

MMPI[ミネソタ多面的人格目録〈Minnesota Multiphasic Personality Inventory〉]について、誤っているものを1つ選ぶ問題です。

臨床心理士にも何度となく出ております。
本問で示された項目以外では、以下のような点が臨床心理士では出題されています。

  • ミネソタ大学のハザウェイとマッキンレイが作成(1943年)。
  • 特定のパーソナリティ理論に基づいてはいない(人格特性論的でない)。
  • 症状名を調べるのではなく、人格特徴を把握する検査。
  • 「現状」を見るもので、「性格特性」という普遍性を持っていない。
今回は、臨床心理士の問題をきちんとやっておくことで正解しやすい問題でした。

解答のポイント

MMPIの基本的知識を把握していること。

選択肢の解説

『①MASは、MMPIの項目から作成された』

MAS:Manifest Anxiety Scale(顕在性不安尺度)は1953年にテイラーが、キャメロンの慢性不安反応に関する理論を基にMMPIから選出された不安尺度50項目に、妥当性尺度15項目を加えた65項目で構成・作成しました。

上記の通り、選択肢①は正しいと言え、除外する必要があります。

『②妥当性尺度とは、?尺度、L尺度、F尺度及びK尺度の4つを指す』

妥当性尺度は、以下の4種になります

  • ?尺度(疑問尺度)
    「どちらともいえない」と答えた項目の数を表しており、これが多い場合は妥当性が疑わしくなるため、判定の中止、あるいは再検査を検討する必要がある。
  • L尺度(虚偽尺度)
    Lはうそ(Lie)を表し、被験者が自分を好ましく見せようとすることによっておこる反応の歪みの程度を調べるもの。わりあい素朴な受検態度の歪みを検出する。
  • F尺度(頻度尺度)
    正常な成人においては出現率の低い回答をした数。これが多いと「でたらめに回答した」「よく読まないで回答した」ために矛盾が多くなり、信頼性が低くなる。
    一方で、「大袈裟に訴える」という援助を求める叫びの場合も。アイデンティティの混乱を反映する可能性があり、青年期に高くなりやすい。
  • K尺度(修正尺度、対処尺度)
    自己に対する評価、検査に対する警戒の程度を調べるもので、高いほど自己防衛の態度が強い、自分の心理的問題を認めようとしない傾向となる。低得点は率直さと自己批判的態度を表す。
4つしかないので、大まかな解釈は記憶しておいた方が良いでしょう。
臨床心理士では妥当性尺度について以下のような事柄が出ています。
  • LとKが50以下でFが60以上の山型パターンは、自らの情緒的問題を認めて援助を望むあまり症状を誇張して訴える「救助を求める叫び」サインとして知られている。
  • LとKが高く、真ん中のFが低い形(V字型)は、「よく見せかけている受験態度」の典型パターン。
単純で出しやすいようにも思えますので、確認だけしておきましょう。
よって、選択肢②は正しいと言え、除外する必要があります。

『③質問項目は550項目あり、実施時間は1時間以上を見込む必要がある』

MMPIは550問の項目を備えており、その項目数の多さから、組合せを工夫して新しい尺度が作られ活用されています(不安尺度、自我強度尺度などが有名)。

臨床心理士の過去問では、MMPIを含んだテストバッテリーの問題で以下のような記述がみられます。
  • 平成8年問題49A:この組み合わせ(ロールシャッハ、MMPI、WAIS)では、所要時間がかかりすぎたはずである。後半のデータは疲労要因を読む必要がある。→○

こうした点からも、MMPIの所要時間はそれなりにかかることが明らかです。

普通に考えても550問という数に答えるのは1時間以上かかることは明白ですね。
一度、自分でやっておくと良いでしょう。

以上より、選択肢③は正しいと言え、除外する必要があります。

『④質問項目は、患者群と非患者群との間の統計的有意差を基に作られている』

この選択肢では何を問われているのかというと「MMPIの項目は、臨床的妥当性に拠って作られている」ということを知っているか否かです。

臨床的妥当性においては、質問項目に求めるのは「意味」ではなく「弁別力」です。
弁別する力があれば(臨床的見分けができれば)、項目として妥当となります。
単純な言い方をすれば「患者群と非患者群を見分けることができさえすれば、その質問項目の内容は問わない」ということです。
極端な話、「あなたは遊園地が好きですか」という質問で患者群と非患者群を弁別できれば(患者群と非患者群でイエス・ノーが統計上有意なくらいにくっきり分かれると)、この質問は項目として採用されます。

臨床心理士資格試験において、この「臨床的妥当性」とセットにして覚えておかなければならないのが「内的整合性」という考え方です。
この「内的整合性」によって構成されているのがYG性格検査になります。

例えば、不安という尺度を作る場合で、内的整合性を用いる・用いないのイメージ図は以下の通りです(矢印一つひとつが質問項目だと思ってください)。

この図にあるとおり、内的整合性で作られた検査では「質問項目一つひとつの価値が同じである」ということを指しています。
すなわち「質問項目には「同じ価値を持つ」という「意味」が存在する」ということになり、この点からMMPIの臨床的妥当性と対比させられることが多いわけです。

この辺はワンセットで覚えておくと良いように思っています。

以上より、選択肢④は正しいと言え、除外することが必要です。

『⑤心気症、抑うつ、緊張などの各傾向を測定する20個の臨床尺度から構成される』

臨床尺度は、以下の10種になります。

  • 第1尺度Hs:心気症。自分の健康状態について過度に気にして悩む傾向。
  • 第2尺度D:気分的抑うつの程度を示す。
  • 第3尺度Hy:ヒステリー。特に身体面への転換症状を起こしやすい傾向。
  • 第4尺度Pd:精神病質的偏倚。反社会行動を起こしやすい傾向。
  • 第5尺度Mf:男性性・女性性。伝統的な性役割取得の程度、性役割の柔軟性。
  • 第6尺度Pa:パラノイア。疑心など妄想をもちやすい傾向。
  • 第7尺度Pt:精神衰弱、強迫神経症の指標。
  • 第8尺度Sc:統合失調症。奇妙な行動、幻覚妄想、異常な思考の傾向。
  • 第9尺度Ma:軽躁病。活動性を示す。高得点ほど活動的。
  • 第0尺度Si:社会的内向性。社会的接触を好まない傾向。
この10個を全部覚えておくか否かは普段使う頻度にもよるでしょうが、なんとなくの並びを覚えておくことは重要です。
なぜなら、MMPIで出しやすいと思われる事柄として「右上がりのプロフィールは精神病傾向を示す(右下がりは神経症傾向)」ということがあるからです。
何となくの並び(例えば左側にはHsやHyのような神経症っぽい項目が多い、など)を覚えておくことで、プロフィールの右上がり右下がりという大まかな解釈も覚えることが可能です。
以上より、選択肢⑤が誤りといえ、こちらを選ぶことが求められます。

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