公認心理師 2018追加-138

4歳の男児A、幼稚園児の事例です。

事例の内容は以下の通りです。

  • 2歳頃、単語が話せない、他児への興味を示さない及び視線が合いにくいという症状のため受診したがその後通院はしていない。
  • 数字が大好きで数字用のノートを持ち歩くなど、自分なりのこだわりがある。
  • 状況の変化には混乱して泣いたりすることが多いが、親が事前に丁寧に説明するなどの対応をとることで、Aも泣かずに我慢できる場面が増えてきた。
公認心理師がAの支援をするにあたって、担当の幼稚園教諭からのAの適応状況に関する情報収集とAの行動観察に加え、Aに実施する心理検査として、最も適切なものを1つ選ぶ問題です。
発達障害に関してはWISCの実施がほとんどであると思います。
それは、知能の障害の有無だけでなく、教育上の支援法といった具体的関わりの検討に使える資料を与えてくれるという面が大きいからでしょう。
とは言え、本問ではきちんと年齢を把握し、その検査が実施可能かどうかという枠組みの判断がまずは大切になりますね。

解答のポイント

各検査の特徴、特に対象年齢をきちんと把握していること。

選択肢の解説

『①HDS-R』

こちらは改訂長谷川式簡易知能評価スケールのことですね(これがわかるかどうかを問われている選択肢のような気もしています)
長谷川式は認知症のスクリーニング検査です。
詳しい項目等については、公認心理師2018-51で解説を行っていますからご参照ください。
事例の男児は認知症という年齢ではないこと、そういった症状を示していないこと、その他もろもろの点から、長谷川式を実施することを検討することはあり得ません
よって、選択肢①は不適切と判断できます。

『②WISC-Ⅳ』

WISC-Ⅳについては、過去の記事でまとめているのでご参照ください。
別選択肢で述べますが、本事例では男児の知的な能力を把握しておくことが重要な事例だと思われます。
WISCは、CHC理論(Cattell-Horn-Carroll theory)に準拠するように作られています。

以下の3人の理論を統合した理論とされています。
  • キャッテルは知能の一般因子を流動性知能・結晶性知能とした人
  • ホーンはそれよりも多くの因子があると考えた人
  • キャロルは知能の3層理論を示した人
これらの考えを引き継いでいるWISCは、知能を様々な要素に分けて、それらを把握できるように作られています。
すなわち、知能の質的な差異を把握することに優れた検査であると言えます。
適用範囲は5歳~16歳11ヶ月対象になっています。
事例の男児は4歳なので、WISC-Ⅳを適用できないことがわかります
こうした年齢が「不適切」と判断する明確な理由と言えます。
以上より、選択肢②は不適切と判断できます。

『③田中ビネー知能検査』

事例の特徴を見ると自閉症スペクトラム障害が真っ先に浮かぶと思います。
男児の支援に必要な情報として、男児の知的能力が挙げられます。
それ如何によって行われる支援の方向性が変わってきます。
もちろんこの時点での知能検査の数字を恒久的なものと見なすのは危険ですが、それでもある程度低さが認められるのであれば、特別支援の枠組みで生きていく可能性を視野に入れ、保護者の受容等も念頭に置いた支援になります。
また高い水準であれば、特別支援の枠組みに該当しなくなる高校以降や、就職などのことも意識しながらの支援となるでしょう。
いずれにせよ、長期展望をもった支援が重要で、そのためには知的能力の把握が重要になります(これは、子どもの将来を決めてかかるということとは異なります)
ビネーは知能を「外界を全体として再構成するための認識能力」と捉え、ビネー式知能検査は認識能力や全体能力を測定するため「総括的検査」です。
知能の全体的な能力の把握に優れた検査と言えますね。
また、適用年齢は2歳から成人となっていますので、本事例に実施することに問題はありません
また、男児Aはまだ4歳ということで就学前というわけでもありませんから、知能の全体的な能力を把握するとともに、ASDとしての特徴を細かに調べておくことが重要と思われます
幼稚園教諭からの情報収集・行動観察なども可能な状況ですから、ASDの特徴をしっかりとそういった方法によって収集しておきたいところです。
DSM的な言い方をすれば、社会的コミュニケーション・対人的相互反応の特徴、興味や活動の限定性(こだわり等)、などをしっかりと把握しておくことが重要ということですね。
併せて「知能の障害を伴う・伴わない」ということも知っておきたいということです(こちらもDSMに記載がありますね)。
もちろん、知能の各機能の高低を把握し、教育上の支援法を考えていくことも大切ですから、就学前にWISCなどを実施することも大切になってきますね
以上より、選択肢③が最も適切と判断できます。

『④DN-CAS 認知評価システム』

DN-CASは、Luriaの神経心理学モデルから導き出されたJ. P. Dasによる知能のPASS理論を基礎とする心理検査です。
4つの認知機能(PASS)、すなわち「プランニング:P」「注意:A」「同時処理:S」「継次処理:S」の側面から子どもの発達の様子を捉えることができます。
  • P(Planning):
    提示された情報に対して、効果的な解決方法を決定したり、選択したりする認知プロセス
  • A(Attention):
    提示された情報に対して、不要なものには注意を向けず、必要なものに注意を向ける認知プロセス
  • S(Simultaneous):
    提示された複数の情報をまとまりとして統合する認知活動
  • S(Successive):
    提示された複数の情報を系列順序として統合する認知活動
詳しくは上記の通りです。
言語的知識や視覚的知識にあまり頼らずに認知活動の状態を評価できるよう工夫されているため、新しい課題に対処する力を見るのに適しています。
LDやADHD、高機能自閉症等の子どもたちに見られる認知的偏りの傾向を捉えることができ、その援助の手がかりを得るために有効です。
さらに再検査を実施することで子どもの長期的な予後を調べたり、認知機能の特徴・変化をみていくことができます。

対象範囲は、5歳0カ月から17歳11カ月までになります。
事例の男児は4歳なので、こちらの検査を実施することはできません
よって、選択肢④は不適切と判断できます。

『⑤ベンダー・ゲシュタルト検査』

ベンダー・ゲシュタルト検査は、神経心理学的検査の代表的なものです。
9枚の簡単な幾何学図形を模写することによって、ゲシュタルト機能の成熟程度およびその障害、心理的障害、器質的な脳障害、パーソナリティ傾向、知能的側面などの多方面にわたる情報を査定することができます。
当初は器質的な脳障害の判定に有効な検査として広まっていましたが、画像診断技術の向上に伴って不要になってきています。
そこでパーソナリティ評価という側面に舵を切っているという印象も受けます。
いずれにせよ、器質的な脳障害を把握できるということが本検査の基本的な役割であると理解しておきましょう

発達障害も器質的な要因を背景にしている可能性は十分にありますし、そういった知見はいくつか見受けられますが、ベンダーゲシュタルトは脳損傷といった状態の査定に用いられることが多いと考えられ、まったくではありませんが、やや対象からずれているという印象があります。
男児に行うのであれば、その能力の程度や特徴を掴み、支援につなげられる検査が望ましいでしょう
よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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