MMPI

MMPIは医療機関で頻繁に使われる検査です。
と言っても、どの検査を好んで使うかは地域性やその病院の特徴、勤務している心理師の好みなども反映されるので、一概にはできませんが。

ですが、見ることができる事項の多さ、保険点数の高さなどを考えると、医療機関で使われることが多くなることは自然であるとも言えます。

基本情報

以下のような点についてまずは押さえておきましょう。

  • ミネソタ大学のハザウェイとマッキンレイが作成(1943年)。
  • 投影法(ナラティブ)から、客観性(エビデンス)へ。MMPIが出る前までは投影法が盛んで、それ故にもっと客観性のある検査はないのか、という意見が出されていた。
  • 特定のパーソナリティ理論に基づいてはいない(人格特性論的でない)。
  • 症状名を調べるのではなく、人格特徴を把握する検査。
  • 550問の項目を備えている。そのため1時間以上は時間を見込む必要があり、ロールシャッハ、MMPI、WAISなどのテストバッテリーを組む場合には、疲労要因も勘案する必要がある。
  • 新しい尺度が作られ活用されている(不安尺度、自我強度尺度などが有名)。
  • 「現状」を見るもので、「性格特性」という普遍性を持っていない(例えば、うつ病は判断しづらくても、うつ状態の判断はできる)。パーソナリティ全体を見るとか、そういう力を持つ検査ではない。
  • MMPIの項目を利用してMASなどが作られている。1953年にテイラーが、キャメロンの慢性不安反応に関する理論を基にMMPIから選出された不安尺度50項目に、妥当性尺度15項目を加えた65項目で構成・作成した。
  • 「T得点」で示されるが、これは素点を置き換えた後の得点を指し、平均は50前後に設定されている。高得点とはT得点で70以上を、低得点とはT得点で45以下を指すのが一般的。
これらはMMPIにおける基本的な事項ではありますが、それ故に問題にしやすいとも言えるでしょう。
【2018-109①③、2018追加-73、2018追加-90⑤】

妥当性尺度について

MMPIで特徴的なのは、この妥当性尺度です。
全部で4種類あります。

?尺度(疑問尺度)
「どちらともいえない」と答えた項目の数を表しており、これが多い場合は妥当性が疑わしくなるため、判定の中止、あるいは再検査を検討する必要がある。

L尺度(虚偽尺度)
Lはうそ(Lie)を表し、被験者が自分を好ましく見せようとすることによっておこる反応の歪みの程度を調べるもの。
社会的な望ましさを示そうとすると高くなる。
わりあい素朴な受検態度の歪みを検出する。

F尺度(頻度尺度)
正常な成人においては出現率の低い回答をした数。
これが多いと「でたらめに回答した」「よく読まないで回答した」ために矛盾が多くなり、信頼性が低くなる(つまり回答に一貫性があるかどうかを判定する)。
一方で、「大袈裟に訴える」という援助を求める叫びの場合も。すなわち、故意に悪く見せようとする可能性、援助を求めるために症状を誇張している可能性などが示唆される。
アイデンティティの混乱を反映する可能性があり、青年期に高くなりやすい。

K尺度(修正尺度、対処尺度)
自己に対する評価、検査に対する警戒の程度を調べるもので、高いほど自己防衛の態度が強い、自分の心理的問題を認めようとしない傾向となる。
低得点は率直さと自己批判的態度を表す。

その他、妥当性尺度のプロフィールについては、以下が示されています。

  • LとKが50以下でFが60以上の山型パターンは、自らの情緒的問題を認めて援助を望むあまり症状を誇張して訴える「救助を求める叫び」サインとして知られている。
  • LとKが高く、真ん中のFが低い形(V字型)は、「よく見せかけている受験態度」の典型パターン。

これらは臨床心理士資格試験でも問われていますので、しっかりと押さえておきましょう。

【2018-109②、2018追加-73】

臨床尺度について

MMPIには以下の10個の臨床尺度が定められています。
 第1尺度Hs:心気症。自分の健康状態について過度に気にして悩む傾向。
 第2尺度D:気分的抑うつの程度を示す。
 第3尺度Hy:ヒステリー。特に身体面への転換症状を起こしやすい傾向。
 第4尺度Pd:精神病質的偏倚。反社会行動を起こしやすい傾向。
 第5尺度Mf:男性性・女性性。伝統的な性役割取得の程度、性役割の柔軟性。
 第6尺度Pa:パラノイア。疑心など妄想をもちやすい傾向。
 第7尺度Pt:精神衰弱、強迫神経症の指標。
 第8尺度Sc:統合失調症。奇妙な行動、幻覚妄想、異常な思考の傾向。
 第9尺度Ma:軽躁病。活動性を示す。高得点ほど活動的。
 第0尺度Si:社会的内向性。社会的接触を好まない傾向。

プロフィールや解釈については、以下の点がよく言われますね。

  • 右上がりのプロフィールは精神病傾向を示す(右下がりは神経症傾向)。
  • ゴールドバーグ指標などが使われる:(L+Pa+SC)-(Hy+Pt);40以上で精神病的傾向、30以下で神経症的傾向。
特に右上がり、右下がりというのは覚えやすいですね。

【2018-109⑤】

臨床的妥当性と内的整合性

こちらについては以前の記事で詳しく述べていますので、そちらをご参照ください。

ざっくりいうと、臨床的妥当性はMMPIが質問項目を採用する際に基準としている考え方です。
臨床的妥当性とは、その名の通り「その質問項目が臨床的な妥当性を備えているか否か」ということを問うています。
ちなみに妥当性とは「測りたいものが測れているか否か」の度合いを指します。

ある質問項目が臨床群と非臨床群を見分ける力があるか否かで、その質問項目を採用するか否かを決めるわけです。
どのような内容の質問(あなたはパスタが好きですか?)であっても、それによって臨床群と非臨床群を統計的に有意なほどに見分ける力が高いならば、採用されるわけです。

こうした手法によって質問項目が定められたものが、臨床的妥当性を備えた心理検査ということになります。
その代表がMMPIということになります。

【2018-109④】

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