公認心理師 2022-7

主に信頼性係数についてを問う内容になっていますね。

α=アルファ、γ=ガンマ、κ=カッパ、φ=ファイ、ω=オメガと読みます。

問7 観察法のチェックリスト法による2人の評定の一致の程度を表す指標として、最も適切なものを1つ選べ。
① α係数
② γ係数
③ κ係数
④ φ係数
⑤ ω係数

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解答のポイント

信頼性係数を示す各指標について把握している。

順位相関係数の指標を把握しておくとなお良い。

選択肢の解説

① α係数
⑤ ω係数

心理学の世界で「α係数」と言えば、クロンバックのα係数のことを指していると考えられます。

α係数とは、信頼性の指標の一つである「内的整合性」を示すものです。

このことを詳しく見ていきましょう。

そもそも、信頼性とは「テストにおける回答の安定性・一貫性」であり、もっと噛み砕いて言えば「だいたいいつも同じような結果が得られる」ということになります(もちろん同じ対象、同じ傾向をもつならば、ですよ)。

妥当性が「測りたいものを測っているか」ということを示す概念ですから、信頼性は言わば「その尺度で測っているものに余計なものが混じっていないか」を示す概念となります。

その信頼性を数値化した指標が「信頼性係数」でありα係数は信頼性係数の一つになります。

そしてα係数は、信頼性の指標のうち「内的整合性」という質問紙の検査項目の安定性・一貫性を示す概念です。

内的整合性を有している場合、検査の尺度内部で回答のバラツキがないことを意味しており、尺度内の各項目が構成概念を同じように測ることができて、バラツキがなく、一貫していることを信頼性が高いとする概念のことですね。

もう少し砕いて言うと「内的整合性によって作成された検査(YG性格検査など)は、質問項目の重みが一定である」ということになります。

図にすると以下のようなイメージです。

このように、内的整合性は質問項目の一貫性・安定性を示す指標であることがわかると思います。

この内的整合性を示す方法として、古くから使われているのが「折半法」でした。

折半法は、質問項目を折半(つまり2つに分ける。奇数と偶数に分ける奇遇法とか)して、その2つの得点の相関を見るという方法です。

ただ、折半法では折半の方法が無数にあるので、もっと厳密に考えうる折半方法すべてに関して信頼性係数を求め、それを平均したのが「α係数」になります。

1つの検査に含まれる複数の項目に対する反応の一貫性の程度を反映する指標が「α係数」であり、これはクロンバックによって発見されたため「クロンバックのα係数」とも呼ばれます。

さて、このα係数とよく似たものとしてω(オメガ)係数が挙げられます。

α係数では、テストに1因子性と因子負荷量(因子分析において、得られた共通因子が分析に用いた観測変数に与える影響の強さを表す値。 観測変数と共通因子との相関係数に相当する)の同値性を仮定しますが、この仮定を置かないのがω係数になります。

ω係数もα係数と同様に内的整合性を表す信頼性の指標であると見なして良いのですが、α係数における制約(「尺度の因子負荷量がすべて等しい」という仮定)を外したものがω係数と言えます。

制約がない分より正確な信頼性の推定値になっている一方で、ω係数は推定すべき母数が多いため、被験者が少ないとω係数自体が不安定になる可能性を考えておくことが求められます。

その昔、因子分析は非常に大変な作業を要したわけですが、だからこそある程度の制約のあるクロンバックのα係数が扱いやすかったという歴史があります。

ですが、現在ではそういう「大変さ」は無くなったと言ってよいので、本来ならω係数を用いる方が良い場面が多いのですが、昔からの習慣でα係数が多用されているという実態があります。

以上より、クロンバックのα係数およびω係数は内的整合性という信頼性の指標であり、「観察法のチェックリスト法による2人の評定の一致の程度を表す指標」ではないことがわかりますね。

よって、選択肢①および選択肢⑤は不適切と判断できます。

② γ係数
④ φ係数

γ(ガンマ)係数と言えば、グッドマン・クラスカルのγ係数になります。

γ係数は順位相関係数の一種(順位相関係数については「公認心理師 2020-82」を参照)で「相対的正確度」の指標です(順序連関係数と表現されることも多い)。

ちなみに連関とは、2つの属性間に相互関係が存在することを表す統計用語です。

複数のカテゴリーを持つ2つの属性(変数)間の関連の程度を示す指標であり、一般的にクロス集計表(分割表・連関表)といった二次元の表で整理されるデータの2変数間の相関であり、連関とも呼ばれます。

この連関の度合いを表す指標として「クラメールの連関係数V」「ピアソンの連関係数C」「チュプロウの連関係数T」「グッドマンとクラスカルの予測連関係数λ(ラムダ)ならびに順序連関係数γ(ガンマ)」があります。

要は「2つの質的な順序変数間の連関の大きさを表す指標」であると考えておきましょう(ちなみに、γ係数は -1から1の値を取る。0が連関無し、1が完全な正の連関、-1が完全な負の連関を意味する)。

なお、グッドマンクラスカルのγ係数は同順位のペアをうまく扱えないという特徴があるので、それを踏まえて活用する必要があります。

また、連関係数の中には、2×2のクロス集計表にのみ適用されるものと、k×l(いずれも2以上の任意の整数)のクロス集計表全般に適用できるものとがありますが、2×2のクロス集計表に適用できる連関係数は「四分点相関係数(φ:ファイ)」や「ユールの連関係数(Q)」になります(四分点相関係数=φ係数とも言います)。

φ係数もクロス集計表における行要素と列要素の関連の強さを示す指標であると言えます。

なお、φ係数は集計表の行列のサイズにより上限が異なるので、行列が等しい集計表の間でしか比較する意味が出ないという特徴があります。

このようにグッドマンクラスカルのγ係数もφ係数も、クロス集計表における連関の大きさを表す指標であり、「観察法のチェックリスト法による2人の評定の一致の程度を表す指標」ではないことがわかりますね。

よって、選択肢②および選択肢④は不適切と判断できます。

③ κ係数

こちらはκ(カッパ)係数と呼びます(コーエンのκ係数と呼ばれることが多いですね)。

初めて聞いた方も多いかもしれませんが、臨床心理士資格試験では過去に1度だけですが出題されており、それを踏まえて本サイトの「信頼性の概念と算出法」でも解説してあります。

本問の「観察法のチェックリスト法による2人の評定の一致」という状況がどのようなものか、具体的に想像しづらい人もいるかもしれないので、臨床心理士資格試験の問題を引用してみましょう。


平成11年問題24の内容ですが、以下のような表が示されています。

カテゴリー中央
中央420042
225027
32531
472825100

こちらは「2人の評定者が被験者の視線の方向をコーディングしたもの」になります。

つまり被験者がいて、2人の評定者がそれぞれ「いま、被験者は右(左、中央)を見た」と判断し、評定しているわけです。

この場合の「偶然の一致率も考慮した一致率」を算出するよう求められている問題です。


上記の表から「単純な一致率」を示すのは難しくありません。

ですが、上記のようなデザインの場合「1/3の確率で一致してしまう」可能性も考慮することが求められます。

ですから、より正しい一致率を算出するためには「評定が間違っているのに、たまたま2人の評定者の判断が一致してしまった」という確率も踏まえておくことが求められます。

偶然の一致率はPcで表され、X(一致率)=(P0-Pc)/(1-Pc)で算出することになります。

上の問題では、偶然の一致率(Pc)は.35であり、一般的な一致率(Po)は.92(42+25+25)ですから、それを踏まえて数値を入れていくと以下のようになります。

X(一致率)=(.92-.35)/(1-.35)=.57/.65=.8769…

ですから、選択肢の中で上記を四捨五入した数値である「.88」が正解になるわけですね。

このように、実験によってはボタン押しのような客観的に測定できる反応ではなく、評定者が実験参加者の反応を判断することが必要になる場合もあります。

その場合は複数の評定者間で評定値がどの程度一致しているかについてコーエンのκ係数などの一致係数を用いてデータの信頼性を顕彰することになるわけです。

以上のように、コーエンのκ係数は再現性(安定性)によって信頼性を推定する方法であり、2回の調査の安定性や、偶然の一致を考慮した2人の評定者間の評定の一致度を表す指標ということになります。

よって、選択肢③が適切と判断できます。

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