公認心理師 2021-83

剰余変数の統制に関する問題です。

本問が「剰余変数の統制についての問題だな」と思えることが、まずは大切ですね。

問83 他者と比べて、自分についてよりポジティブな判断を行うかどうかを検討する目的で研究を行う。他者に対する性格の評定と自分に対する性格の評定を同時に得る場合に、両者の評定を行う順序について適用すべき方法は何か、最も適切なものを1つ選べ。
① 一定化
② バランス化
③ マッチング
④ ランダム化
⑤ カウンターバランス

解答のポイント

剰余変数の統制方法に関する理解を有している。

選択肢の解説

① 一定化

研究において独立変数と従属変数の間に因果関係があるか否かを推論するためには、独立変数以外に従属変数に影響すると考えられる変数、すなわち剰余変数が十分に統制されていることが重要になります。

剰余変数を統制する方法として代表的な方法として、①剰余変数の除去、②剰余変数の一定化、③剰余変数の相殺、④無作為化(ランダム化)があり、本問はこれらに関する理解を問うている内容と言ってよいでしょう。

まずは、本選択肢の一定化(上記の②に該当)から述べていきましょう。

一定化とは、剰余変数の値をなるべく一定に保つように設定することを指します。

例えば、視覚実験の場合、部屋の明るさや刺激の観察距離など、実験の目的に関係しない要因は、全参加者の全実験条件を通じてなるべく一定にすることが望ましいです。

「一定にする」ことが重要なわけですから、刺激を追加する場合もあり得るわけです。

例えば、実験を行う場所の周辺で換気扇や実験装置から出る音がどうしても除去することができない場合、あえて一定強度のホワイトノイズを呈示することによって、音刺激の影響を一定に保つという方法があります。

更に、実験者の服装の違いによる影響を最小限にするために白衣を着用する場合もあります(実験心理学で研究し始めた人ほど白衣を着て校内をうろつくのですが、白衣は「白衣」だから意味があるわけで、校内という汚れる可能性がある場所を白衣を着てうろつくのは研究上よろしくありませんね)。

また、実験参加者の心的な剰余変数の一定化を行うことも望ましいとされています。

例えば、参加者に対する教示の微妙な言葉遣いや言い方の違いによって、参加者が実験の意図を予想してしまったり、モチベーションが異なってしまい、実験結果が異なってしまうことが少なくありません。

従って、全参加者に対する教示はセリフのように扱い、なるべく一定にすることが望ましいわけです。

これは実験に限らず、心理検査を行うときの教示でも同じことが言えるでしょう。

他にも剰余変数の一定化は、実験参加者のサンプリングにも関係します。

例えば、年齢が剰余変数として影響を与えそうだと考えられる場合には、特定の年齢に絞って、同じ年齢の参加者のみを調べるという方法があります。

同様に性別が影響を与えそうだと考えられる場合には、対象者を女性のみ(または男性のみ)に絞ることで、性別の影響を統制します。

こうした剰余変数の一定化は、統制を行った変数の影響を取り除くことはできるが、変数の一定化をすればするほど、得られた結果が限定された範囲の中でしか当てはまらないものになってしまう点に注意が必要です。

例えば、参加者の年齢を20歳代、性別を女性に限定して得られた結論は、20歳代女性について調べた実験の結論であり、厳密には他の年代や男性について述べることはできないということになりますね。

さて、ここで本問の状況を見ていきましょう。

本問では「他者に対する性格の評定と自分に対する性格の評定を同時に得る場合に、両者の評定を行う順序について適用すべき方法」が問われているわけです。

この実験状況ならば「参加者によって課題の順番を変えることで統制する」ことが求められるわけですが、本選択肢の「一定化」はこのやり方に該当しませんね。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② バランス化
③ マッチング

続いて、剰余変数の相殺について述べていきましょう(上記の③ですね)。

実際の実験場面では、すべての剰余変数に対して除去や一定化ができるわけではありません。

例えば、参加者の知能や性格など、剰余変数の除去や一定化が不可能な場合もあります。

剰余変数の相殺とは、それらの剰余変数は互いに相殺させることで、影響をできるだけ小さくすることを指します。

剰余変数の相殺については、「参加者の割り当てによる相殺」と「実験計画による相殺」の2つに分けて述べていきますが、本選択肢の解説は前者になりますね。

「参加者の割り当てによる相殺」の代表例がマッチングです。

マッチングとは、研究の単位(通常は参加者)を従属変数に対して影響を与えると考えられる剰余変数の値がなるべく等しくなるよう、複数のグループに分け、各グループ内から独立変数の各条件に対し、参加者を同数ずつ得る方法です。

例えば、参加者が男性18人、女性24人だったとして、3群に等しい人数を割り振る際に、各群に男性を6人、女性を8人ずつにすることで、すべての群における性別の違いによる影響をほぼ等しくすることができます。

マッチングによる統制は、統制を行った剰余変数の影響を(ほぼ)取り除くことができるが、研究の単位(参加者の割り当て)に限界があるため、すべての剰余変数をマッチングすることは不可能です。

そのため、剰余変数の中でも、自分の行う実験に最も影響の大きいと考えられる剰余変数からマッチングさせていくことが重要になります。

ここまでが以下の書籍で見た「マッチング」の説明です。

なお、本問の解説ではほぼこちらの書籍を用いましたが、本書では「マッチング」の解説は載っていても、「バランス化」については載っていませんでした。

そこで別の書籍(以下のものなど)で調べると、バランス化とは「(例えば性別に関してであれば)被験者の性については、実験で取り上げる要因のどの水準にも男女が同数ずつ割り当てられるようにすること」と説明がなされており、これは上記の書籍における「マッチング」の説明と同じと見なせることがわかります。

いろいろ書籍やサイトを見てみると、バランス化とは「従属変数に影響を与えそうな変数について群間で同じ割合に割り当てること。具体的には、男性24人・女性18人を3群に分けると、男性8人・女性6人ずつ各群に割り当てること」であり、マッチングとは「比較する群間で、影響力の大きい剰余変数の値をできる限り一致させること」という説明が多く、両者に大きな違いがないように見受けられます。

こちらのサイトでは、マッチングを「属性がよく似た被験者同士を抽出すること。実験群と統制群の結果を比較する場合に用いられる」とあり、また別のサイトでは「…従属変数である知的課題得点に影響を与えると予想される、たとえば知能検査や学校のテスト得点などを参照して、あらかじめ得点が近い被験者2人をペア(ブロック)にし、それぞれを第1群と第2群に割り振ることによって2群を等質化することができる。これをマッチングという」とあります。

他にも「…ある要因についてバランス化のためにその要因についてマッチングを行っているならば…」というように、バランス化という大枠の中にマッチングという方法があるように述べてある記述も見受けられました。

ただ、複数の書籍を見ても、「バランス化」と「マッチング」に大きな違いがあるようには見受けられず、具体的な実験状況を想定しても「バランス化」「マッチング」と表現は別でも同じことを述べていると思えることばかりでした。

ここでは一旦両者の弁別を諦め、この両者に本質的な違いはないものと見なして、解説を続けていきましょう。

本問では「他者に対する性格の評定と自分に対する性格の評定を同時に得る場合に、両者の評定を行う順序について適用すべき方法」が問われているわけですが、ここまでのマッチング(バランス化)の内容であれば何となく良さそうな気がするかもしれません。

しかし、それは間違いです。

マッチングのような「参加者の割り当てによる相殺」では、参加者を条件ごとに分ける際の工夫によって性別や年齢などの個人際による剰余変数を統制します。

このような各条件に異なる参加者を割り当てることを「参加者間計画」と呼びますが、本問では同一人物が複数の実験条件に参加しています(一人が「他者に対する性格の評定」と「自分に対する性格の評定」という2つの実験条件に参加している)。

このような各条件に同一の参加者を割り当て、一人の参加者が複数の実験条件に参加する実験計画を「参加者内計画」と呼びます。

本問の実験計画は「参加者内計画」ですから、「参加者間計画」で用いられるマッチングおよびバランス化は採用することが難しいと考えられます。

よって、選択肢②および選択肢③は不適切と判断できます。

⑤ カウンターバランス

先述の通り、各条件に同一の参加者を割り当て、一人の参加者が複数の実験条件に参加する実験計画を「参加者内計画」と呼びます。

例えば、ある記憶課題において3種類の記憶方略の効果を調べる際に、1人の参加者がすべての記憶方略を試すというやり方になります。

参加者内計画では、すべての条件を1人の参加者が行うため、性別や年齢といった個人差の影響を完全に統制することができるという大きな利点があります。

しかしながら、参加者内計画では残留効果の影響を受けやすいという欠点があります。

残留効果とは、参加者が遂行した試行の影響が、その後の試行の遂行に影響を与えることを指します(例えば、時間に関連する剰余変数として、慣れや練習効果、疲労効果など様々ある。その影響を打ち消すことが研究では求められる)。

残留効果を相殺するために、参加者によって課題の順番を変えて、残留効果を打ち消すことを「カウンターバランス」と言います。

参加者順序:1順序:2順序:3
abc
bca
cab
cba
acb
bac

例えば、上記の表で言えば、3種類の記憶方略(a、b、c)の効果を参加者内計画で調べる際に、記憶方略の順番を参加者ごとに行うことで統制を行うわけです。

本問では「他者に対する性格の評定と自分に対する性格の評定を同時に得る場合に、両者の評定を行う順序について適用すべき方法」が問われています。

先述の通り、この研究計画は「参加者内計画」であると言え、評定する順番(他者の評定→自分の評定 or 自分の評定→他者の評定)による影響を回避するためカウンターバランスを行うことが重要になります。

以上より、選択肢⑤が適切と判断できます。

④ ランダム化

これまで示した方法では、剰余変数の統制のために積極的に手を入れていました。

これに対して、あえて積極的な統制をせず、独立変数の各条件における剰余変数の値を全くの偶然に任せて決定する方法が「ランダム化」です。

なお、ランダム化という表現よりも「無作為化」という表現の方が一般的であろうと思います。

ここでは、ランダム化を「無作為抽出」と「無作為割り当て」の2つに分けて説明していきます。

「無作為抽出」とは、実験参加者を対象とする母集団内から無作為に選ぶことを指します。

実験を行う際には、実際に実験に参加した人だけでなく、より多くの人に当てはまる結論を導くことが望まれます。

そのためには、その実験で明らかにしたい母集団の設定と、その母集団全体から無作為に参加者を抽出することが重要になってきます。

例えば、成人男性の記憶能力を調べたいのであれば、母集団内のすべての男性が等しい確率で選ばれるように、成人男性全体の母集団から無作為に参加者を抽出する必要があります。

しかしながら、実際の実験では想定する母集団のすべてから参加者を抽出することは難しいのが一般的です。

「無作為割り当て」とは、各条件に参加者の割り当てを行う際に、無作為に参加者を割り振るという方法です。

無作為割り当ては、多くの剰余変数に対してある程度の統制を行うことが可能ですが、どの剰余変数の影響も完全には統制することができないという特徴があります。

この無作為化と前述のカウンターバランスのいずれを用いるかは一長一短であるが、実際にどちらを用いるかの目安の一つとして「試行数」があります。

例えば、抽象的な単語と具体的な単語のどちらが覚えやすいかを調べるという記憶実験をしてみるとしましょう。

それぞれ10語ずつ、計20語を次々に提示して、最後に覚えている単語を再生してもらうとします。

一般に、はじめに提示した単語と最後の方に提示した単語は再生しやすいなどの現象が知られており、可能なすべての順序で単語を呈示するというカウンターバランスが理想的な統制方法ということになります。

しかし、単語が20個あるとすると、可能なすべての順序は20の階乗通り、すなわち約243京通りあることになってしまい、一生かかっても実験が終わらないことを意味します(カウンターバランスならね)。

このように試行数が膨大になってしまうときには、無作為化が効果を発揮します。

毎回20個の単語を無作為に並び替えて、何回かの試行を行うか、何人かの参加者に覚えてもらいます。

こうすれば、完全に統制はできないにせよ、剰余変数の効果は統計的検定で対処できる程度まで減らせることが多いというのが無作為化の利点ですね(言い換えると、無作為化は数が少なすぎると効果が出ません。無作為誤差が大きくなりすぎてしまうので)。

本問での「他者に対する性格の評定と自分に対する性格の評定を同時に得る場合に、両者の評定を行う順序について適用すべき方法」という実験状況であれば、無作為化(ランダム化)よりもカウンターバランスの方が適用しやすいことがわかりますね(どっちが先か、という選択肢の数が少ない状況なので無作為化だと誤差が大きくなってしまう)。

以上より、選択肢④は不適切と判断できます。

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