公認心理師 2020-80

質問紙法を踏まえた面接法の特徴を選ぶ問題です。

質問紙法、面接法の特徴については、大学院入試などでも頻出の問題の一つですね。

そこまで難しい内容とは言えませんから、ぜひ覚えておきたいところです。

 

問80 心理学の研究法において、質問紙法と比較したときの面接法の特徴として、適切なものを1つ選べ。

① 臨機応変な対応が困難である。

② 回答者に与える心理的圧力が弱い。

③ 回答者の個別の反応を収集しにくい。

④ データの収集に手間と時間がかかる。

⑤ 高齢者や幼い子どもには負担が大きい。

解答のポイント

質問紙法と面接法の特徴(長所と短所)について理解していること。

選択肢の解説

ここでは、まず質問紙法と面接法を概観しておきましょう。

【質問紙法】

質問紙法とは、質問紙(アンケートと呼ぶこともある)を対象者に与えて、答えを記入してもらう方法を指します。

評定などにより、例えば5段階という具合に、ある項目への賛否などを数値化してもらうやり方と、意見を書き込んでもらうやり方があります。

後者の場合、数値的処理をするためには更に何らかの分類をしてパーセントに変えていきます。

十分な項目を準備することで個人の内面を幅広く捉えることができ、また、比較的コストをかけずに短時間で大人数のデータを集めることが可能な方法です。

質問紙法はその性質上「言葉を駆使できる」ことが重要であり、その意味で言語能力が発展途上の子どもや、読むことに疲労等の問題が生じやすい高齢者には負担が大きい方法とも言えます。

「子どもは飽きる、高齢者は疲れる」という言い方もできるかもしれませんね。

言い換えれば、識字の可能な対象者であれば、相当に多数の人に協力を得て、データを収集できるので便利な方法と言えます。

質問紙法は上記のような問題だけでなく、回答者が置かれた状況を統制しにくい点や、解答が内観による自己報告である点などが課題とされています。

観察法に比べて、言語以外の反応、回答状況、行動経過などを記録できない点や、複数の観察者によって精度を向上させることができない点が端緒ですが、回答が研究者の存在によって影響されにくい点や、状況と行動を媒介する内的な事柄に関する情報が得られる点が長所と言えます。

また、面接法に比べると、対象や状況毎に質問形式や内容を変化させることができない点や、その場で言語報告の妥当性を評価することができない点が短所ですが、回答者間で質問の一様性がある程度保証される点や、研究者の個人的特性による影響が少ない点、即答への社会的圧力が無い点などが長所と言えます。

この他、質問紙法では、その言い回しが非常に重要になり、不適切な用語法や偏向した文章があると誘導質問となってしまいます。

それを防ぐために予備テストを実施し、あいまいな言葉や専門用語、二重否定などによる難しい文章、キャリーオーバー(前の質問の内容・存在が後続質問への回答に影響を及ぼす効果)の有無、ダブルバーレル質問(一つではなく複数の問題について言及した質問を発しながら、一つだけの回答を求めること)などの存在についてチェックする必要があります。

また、濾過質問(特定の条件に該当する者のみが対象とするために行う質問のこと。ある物を所有している人だけに聞きたい場合は「あなたは○○をもっていますか」から入る)によって、非該当者への質問を行わないような配慮も重要になります。

回答者によっては質問内容とは無関係に反対より賛成を選択する「黙従傾向」を示す場合もあるので、得られた回答の処理や解読においても一定の方法の遵守と注意が不可欠です。

【面接法】

面接法では、対象者に質問をして、口頭で答えてもらい、面接者と回答者が主に言語を用いて相互作用を行います。

質問紙は書き言葉になり、かつ質問の言葉が曖昧であっても質問したりできないが、面接法の場合は、話し言葉であり、質問者とのやり取りが可能なため、質問の意図を十分に理解し、また答えの言葉足らずの部分があっても補ってもらうなどの臨機応変な対応がしやすいです。

ただし、この臨機応変さは、面接法の種類によって多少異なってきます。

構造化面接では、あらかじめ設定した質問を与えて、その答えを記録するので、質問者は一定の質問の仕方から離れることはできませんが、非構造化面接では、ある程度の聞きたいことだけの質問が設定されているだけなので、聞き方は自由であり、答えがよくわからなければ言い換えて質問したり、突っ込んで聞くこともしやすいです(中間的な半構造化面接では、一定の質問だが、答えがハッキリしなければある程度自由に聞き返すことができる)。

このように、質問する側の自由度が大きくなると、それだけ相手に応じて深い点を聞きだすという良さがありますが、質問者と対象者のやり取りを通して答えが生み出され、本来の対象者の考えとは異なることが導かれる危険性も知っておく必要があります。

また、1対1が原則なので、かなりの手間がかかるため、大勢を対象とすることが難しいという制約もあります。

心理学の技法としての面接は、一般に治療のためのものと情報収集のためのものに分けられます。

更に、資料を得るための方法(調査的面接法)にもさまざまな方法があります。

これらの調査的面接法は、手続きあるいは収集される資料だけでなく、その背後にある研究者の視点と併せて理解される必要があるものです。

これらの両方法の特徴を踏まえ、各選択肢の解説に入っていきましょう。

① 臨機応変な対応が困難である。

質問紙法では、あらかじめ設定された書き言葉による質問に答えることが重要になります。

もしも研究者がその場に居たとしても、一定の枠組みを超えて言い換えるなどの対応は研究結果に歪みを生じさせるため、控える必要があります。

言い換えれば、質問紙法ではそういった事態が生じないように予備テストなどを通して、質問内容を精査していくわけです。

対して、面接法では、基本的に1対1の状況で質問をしていくことになりますから、その場である程度の臨機応変な対応(質問を言い換える、答えが曖昧だと質問できる等)が可能と言えますね。

以上より、本選択肢の内容は(質問紙法と比較したときの)面接法の特徴を示しているとは言えません。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② 回答者に与える心理的圧力が弱い。

この内容は質問紙の特徴を示しています。

その場に研究者がいない、いたとしても回答を急がせるような状況でないことがほとんどであるので、焦り等の要因が少なくなります。

上記の「即答への社会的圧力が無い点などが長所」というのがまさにこの部分ですね。

対して、面接法では1対1で質問し答えてもらうという形式を採用しているので、質問された側からすると「回答への圧力」を感じざるを得ません。

もちろん、質問者によってはその圧力が少ないだろうという意見もあるでしょうが、本問はあくまでも「質問紙法との比較で面接法の特徴を示す」という状況設定がありますから、そのような意見は却下することになります。

以上より、本選択肢の内容は(質問紙法と比較したときの)面接法の特徴を示しているとは言えません。

よって、選択肢②は不適切と判断できます。

③ 回答者の個別の反応を収集しにくい。

こちらの内容も質問紙に特徴的な点と言えますね。

質問紙法では、一定の質問を設けて、それを質問紙という形で回答してもらいます。

その形式上、回答者のさまざまな反応(回答について考える、行動の変化等)を収集することは困難です。

対して、面接法では1対1で相手に質問し、その回答の仕方によって、更に突っ込んだ質問をしたり、何か別に質問を加えたりするなどの対応が可能です。

回答の際のさまざまな揺らぎ(言いよどむ、考える、表情が曇る)も観察可能であり、これらの反応を収集することがしやすいと言えます。

以上より、本選択肢の内容は(質問紙法と比較したときの)面接法の特徴を示しているとは言えません。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

④ データの収集に手間と時間がかかる。

質問紙法の最大の長所と言ってよいのが「一度に大量のデータを収集できる」という点です。

もちろん、そのためにはかなり綿密な準備期間・作成期間を設けるわけですが、それでもこの長所は揺らがないところです。

これに対して、面接法では1対1でデータを収集していきますから、かなりの手間がかかるため、大勢を対象とすることが難しいという制約があります。

一方で、かなり精度の高い情報を得ることができるという長所もあるので、これらについては致し方ない面もあるということです。

以上より、本選択肢の内容は(質問紙法と比較したときの)面接法の特徴を示していると言えます。

よって、選択肢④が適切と判断できます。

⑤ 高齢者や幼い子どもには負担が大きい。

先述の通り、「子どもは飽きる、高齢者は疲れる」ので、もちろん内容にはよりますが、質問紙法の困難になりやすい点と言えます。

また言語能力に左右される面も大きいので、子どもによっては難しかったり、高齢者でも言語機能の衰えがあれば困難ですね。

面接法であれば、子どもを飽きさせない工夫や、高齢者に疲労が見えれば配慮するといった臨機応変な対応が可能です。

以上より、本選択肢の内容は(質問紙法と比較したときの)面接法の特徴を示しているとは言えません。

よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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