公認心理師 2018-150

ミュラーリヤー錯視に関する実験の問題です。

内容は以下の通りです。

  • Müller-Lyer錯視の図形に関して、矢羽根(斜線)の角度が錯視量にどのように影響を与えるのかを調べるために実験を行うことになった。
  • 矢羽根が内側に向いた内向図形を標準刺激、矢羽根が外側を向いた外向図形を比較刺激とし、このつの刺激を接するように横に並べて呈示する。
  • 標準刺激の主線(水平線分)の長さは90mm、比較刺激の主線の長さは可変、標準刺激も比較刺激も矢羽根の長さは30mm、矢羽根の角度は15°、30°、45°、60°とした。
  • 実験参加者は標準刺激の主線の長さと主観的に同じ長さになるように、比較刺激の主線の長さを調整する。

この実験を行う方法として、正しいものを1つ選ぶ問題です。

上記の内容は、ミュラーリヤー錯視実験の標準的な手法を示しております。
この図のような呈示の仕方ですね。

「比較刺激の主線の長さは可変」ですから、外向図形を実験参加者が動かせるということになります。
標準刺激の後ろに比較刺激が出し入れできるようになっている、という装置だと思われます。
比較刺激の裏には呈示されている線分の長さが読み取れるように目盛りがあることが多いです(刺激図は前額水平に呈示することで、目の前の実験者に目盛りが読める)。
「比較刺激が標準刺激と同じ長さになったな」と実験参加者が思ったところで、比較刺激の主線の長さを測り、記録します。

これらを踏まえて、各選択肢の検証を行っていきます。

解答のポイント

ミュラーリヤー錯視の基本的な実験デザインを把握していること。
統制について理解していること。
調整法に生じ得る誤差を把握していること。

選択肢の解説

『①標準刺激の位置を左に固定する』

本実験法は「調整法」にて行われております。
呈示された刺激の大きさに合わせて、実験参加者自身が刺激を変化させて納得のいく大きさにする方法です。

調整の際には実験参加者の意図に反して刺激を変化させすぎたり、逆に変化量が小さすぎるといった誤差(調整誤差)が生じる場合があります。
これを防ぐために、実験参加者の調整する比較刺激の変化の方向を、標準刺激よりも明らかに大きいところから始めて小さく調整していく場合(下降系列)と、明らかに小さいところから始めて大きく調整していく場合(上昇系列)の両方を用います。
(本問ではその辺は記載がありませんね)

特に調整法では、調整誤差のほかにも、標準刺激と比較刺激を提示するときの位置関係の違いによる空間誤差や、呈示順序の違いによる時間誤差などが起こる可能性があるため、刺激呈示の位置や順番を入れ替えるなどして誤差を相殺する必要があります。

すなわち、両刺激の空間的配置条件の影響(空間誤差)を相殺するために、標準刺激を被験者から見て左に置く場合と、右に置く場合とを設定するなどの対応が必要ですが、本選択肢ではそれを拒否する形になっております

よって、選択肢①は誤りと判断できます。

『②矢羽根の角度が異なる刺激をランダムに呈示する』

この実験は1要因4水準の実験計画ですね。
主線の長さは90mmで統一し、ミュラーリヤー錯視図形の鋏角を15°、30°、45°、60°に変化させ、それによって主線の錯視量にどう変化するのかを検討するものです。

選択肢①でも述べたように、本実験は「調整法」によって行われており、調整法では、調整誤差のほかにも、標準刺激と比較刺激を提示するときの位置関係の違いによる空間誤差や、呈示順序の違いによる時間誤差などが起こる可能性があるため、刺激呈示の位置や順番を入れ替えるなどして誤差を相殺する必要があります

すなわち、先行する実験条件が後続の実験条件の結果に影響を及ぼさないようにするカウンターバランスをとることが求められます
例えば、2つの系列に分けて系列ごとに呈示順を変える、などです。

本選択肢は、こうした対応を適切に取っていると考えられます。
よって、選択肢②が正しいと判断できます。

『③主線の太さを矢羽根の角度によってランダムに変化させる』
『④図形の背景の色を矢羽根の角度によってランダムに変化させる』

こうした実験計画を立てるときには、実験者側が導入した要因以外が入り込まないように「統制」していくことが重要です。
ミュラーリヤー錯視実験では、「矢羽根の角度」と「比較刺激の主線の長さ」以外が変化してしまうと、その要因によって結果が歪められてしまう恐れがあります。

よって、選択肢③および④にある「主線の太さ」や「背景の色」は剰余変数と捉えるのが妥当であり、こちらは一定にしておくことが求められます。
以上より、選択肢③および選択肢④は誤りと判断できます。

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