公認心理師 2022-134

刑事施設における特別改善指導に関する問題です。

RNRモデルとも関連があるので、過去問を復習の上で解くと知識の拡充につながると思います。

問134 刑事施設において、受刑者に対して行われる特別改善指導に該当するものを2つ選べ。
① 家族関係指導
② 行動適正化指導
③ 薬物依存離脱指導
④ 自己改善目標達成指導
⑤ 被害者の視点を取り入れた教育

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解答のポイント

一般改善指導および特別改善指導について把握している。

選択肢の解説

③ 薬物依存離脱指導
⑤ 被害者の視点を取り入れた教育

こちらについては刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(刑事収容施設法)の103条に規定があります。


(改善指導)
第百三条 刑事施設の長は、受刑者に対し、犯罪の責任を自覚させ、健康な心身を培わせ、並びに社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるため必要な指導を行うものとする。
2 次に掲げる事情を有することにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対し前項の指導を行うに当たっては、その事情の改善に資するよう特に配慮しなければならない。
一 麻薬、覚せい剤その他の薬物に対する依存があること。
二 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員であること。
三 その他法務省令で定める事情


上記の第1項は「一般改善指導」と言われるものであり、原則として全受刑者を対象に、①被害者の置かれている状況と心情を理解させ罪障感を養うこと、②規則正しい生活習慣や健全なものの見方や考え方を身に付けさせ心身の健康を増進させること、③釈放後の生活設計に必要な情報を理解させ社会生活において求められる協調性、規則遵守の精神、行動様式等を身に付けさせることなどを目的として行われます。

こちらについては他選択肢で詳しく解説していきましょう。

さて、上記の第2項が「特別改善指導」とされるものであり(「その事情の改善に資するよう特に配慮しなければならない」とあるから「特別」なんですね)、薬物依存や暴⼒団への加⼊などの事情により、改善更⽣及び円滑な社会復帰に⽀障があると認められる受刑者に対し、その事情の改善に資するよう特に配慮して⾏われるものになります。

特別改善指導の種類と対象者は以下の通りになります。

  1. 薬物依存離脱指導(R1):⿇薬、覚せい剤その他の薬物に対する依存がある者
  2. 暴⼒団離脱指導(R2):暴⼒団員である者
  3. 性犯罪再犯防⽌指導(R3):性犯罪の要因となる認知の偏り、⾃⼰統制⼒の不⾜等がある者
  4. 被害者の視点を取り⼊れた教育(R4):⽣命を奪い、⼜は⾝体に重⼤な被害をもたらす犯罪を犯し、被害者及びその遺族等に対する謝罪や賠償等について特に考えさせる必要がある者
  5. 交通安全指導(R5):被害者の⽣命や⾝体に重⼤な影響を与える交通事故を起こした者や重⼤な交通違反を反復した者
  6. 就労⽀援指導(R6):刑事施設において職業訓練を受け、釈放後の就労を予定している者等

これらの特別改善指導は、矯正局から提示されている標準プログラムに基づき、各施設において実践プログラムを策定、実施しています。

各施設では収容している受刑者の特性や施設の置かれている状況等に応じて、「医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識及び技術を活用」(同法第84条第5項)しながら、科学的根拠に基づく効果的な指導を行うべく努力を重ねていると考えられます。

以上より、特別改善指導は、薬物依存離脱指導・暴力団離脱指導・性犯罪再犯防止指導・被害者の視点を取り入れた教育・交通安全指導・就労支援指導になり、選択肢にある「薬物依存離脱指導」および「被害者の視点を取り入れた教育」が該当することがわかります。

よって、選択肢③および選択肢⑤が特別改善指導に該当すると判断できます。

① 家族関係指導
② 行動適正化指導
④ 自己改善目標達成指導

一般改善指導は、講話・体育・行事・面接・相談助言その他の方法により、①被害者及びその遺族等の感情を理解させ、罪の意識を培わせること、②規則正しい生活習慣や健全な考え方を付与し、心身の健康の増進を図ること、③生活設計や社会復帰への心構えを持たせ、社会適応に必要なスキルを身に付けさせることなどを目的として行われます。

一般改善指導の指導内容は自己啓発指導や体育、行事、社会復帰支援指導など複雑・多岐にわたっています。

しかも、実際の指導の内容や方法は各施設に委ねられていることから、どのように働きかけを実施するかについては、各刑事施設でそれぞれ創意工夫を重ねているものと推測されます。

こちらの論文では一般改善指導を8つの種類にまとめており、以下に列挙して行きます。

  1. 被害者感情理解指導
  2. 行動適正化指導
  3. 自己啓発指導
  4. 自己改善目標達成指導
  5. 体育
  6. 行事
  7. 社会復帰支援指導
  8. 対人関係円滑化指導

このように、選択肢②の「行動適正化指導」および選択肢④の「自己改善目標指導」が含まれていることがわかりますね。

行動適正化指導はアルコール関係の問題を扱っている場合が多く、次いで、窃盗事犯の問題、性問題、高齢者を対象とした講座が多くなっています。

自己改善目標指導は、社会復帰促進センターのものであることが多く、高齢者や障害者等向けのプログラムがほとんどとなっています。

具体的な事例を挙げると、高齢者の窃盗犯の増加に伴い行われている窃盗防止を意図した「行動適正化指導」があり、こちらは窃盗等により受刑している高齢者を小グループに編成し、それぞれの過去の問題行動を振り返らせ、犯罪に至る状況やきっかけなどについて自己洞察を深めさせ、再犯防止の方策を見出させる、認知行動療法を基盤とした指導プログラムです。

窃盗に及ぶ者は、生活が極めて困窮している者ばかりではなく、手持ちの生活費が減ることの不安や、衝動を抑えられない者なども少なくなく、その要因には根深いものが見受けられます

指導プログラムにより、自己の問題を客観視するようになり、再犯防止の手がかりを得る者も少なくないが、一方、認知のゆがみを修正しようとする意識や能力に乏しい者もおり、常に指導方法を見直しながら処遇を進めていくことが求められています。

また、上記の論文に記載はないものの、こちらの資料では一般改善指導の枠組みにおいて「矯正施設及び更生保護施設における女性の抱える問題に応じた指導等の実施」として、①窃盗防止指導、②自己理解促進指導(関係性重視プログラム)、③自立支援指導、④高齢者指導、⑤家族関係講座の5種類のプログラムを実施しているとされています。

以上のように、家族関係指導、行動適正化指導、自己改善目標指導については、一般改善指導に含まれるものであると考えられます。

よって、選択肢①、選択肢②および選択肢④は不適切と判断できます。

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