公認心理師 2020-55

法務少年支援センターに関する問題です。

地域の援助資源の一つですから、その役割をしっかりと理解しておきましょう。

ブループリントにも「少年鑑別所」の項目があり、そこに含まれる内容と言えそうですね。

問55 少年鑑別所が法務省年支援センターという名称を用いて行う地域援助について、正しいものを2つ選べ。

① 公認心理師が、相談を担当する。

② 必要に応じて心理検査や知能検査を実施する。

③ 相談対象は、未成年、その保護者及び関係者に限られる。

④ 学校や関係機関の主催する研修会や講演会に職員を講師として派遣する。

⑤ 個別の相談は、保護観察所内に設置されている相談室で行うことを原則とする。

解答のポイント

法務少年支援センターの役割について把握していること。

選択肢の解説

① 公認心理師が、相談を担当する。

法務省が一般向けに出しているパンフレットによると、法務少年支援センターで相談を受けるのは「大学や大学院で心理学を学ぶなどした専門の職員」と大雑把な書き方になっています。

法務省専門職員(人間科学)採用区分には、矯正心理専門職区分・法務教官区分・保護観察官区分が設けられております。

「大学や大学院で心理学を学ぶなどした専門の職員」となると矯正心理専門職区分になると考えられ、この採用条件の中に「公認心理師であること」は含まれていません(これは他の区分でも同様です)。

資格の有無が要件にならないのは、法務省関連に限らず、現時点の多くの公務員採用試験でも言えることだろうと思います(受験資格を有していると望ましい、というのはあり得ますが)。

もちろん、大学・大学院の中で心理学を学んだということは、臨床心理士・公認心理師などの資格を持つ者もいるということになります。

しかし、それが法律的に必須でなければならないということではありません。

これらの点に関しては、公認心理師という国家資格ができたことで今後変更があるかもしれませんが、2021年1月現在では上記のような状態ということですね。

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。

② 必要に応じて心理検査や知能検査を実施する。
③ 相談対象は、未成年、その保護者及び関係者に限られる。
④ 学校や関係機関の主催する研修会や講演会に職員を講師として派遣する。

少年鑑別所は、非行・犯罪に関する問題や、思春期の子供たちの行動理解などに関する知識・ノウハウを活用して、2015年6月に施行された少年鑑別所法第131条に基づいて「法務少年支援センター」として、児童福祉機関、学校・教育関係機関、NPOなどの民間団体など、青少年の健全育成に携わる関係機関・団体と連携を図りながら、地域における非行・犯罪の防止に関する活動や健全育成に関する活動の支援などに取り組んでいます。

少年鑑別所法第131条の内容は以下の通りです。

少年鑑別所の長は、地域社会における非行及び犯罪の防止に寄与するため、非行及び犯罪に関する各般の問題について、少年、保護者その他の者からの相談のうち、専門的知識及び技術を必要とするものに応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うとともに、非行及び犯罪の防止に関する機関又は団体の求めに応じ、技術的助言その他の必要な援助を行うものとする。

法務省年支援センターの法的根拠はこちらになり、相談対象は「少年、保護者その他の者からの相談」となっていますから、幅広くなっていることがわかります。

また、法務省矯正局から出ている関係機関向けパンフレットによると、相談対象は未成年に限らず、成人の相談も受け付けているとあります。

例えば、罪に問われた障害者、高齢者に対して、地方公共団体、地域生活定着支援センター、福祉機関等と多機関連携のもとで支援を行うこともあります。

相談内容に関しては、少年鑑別所でのノウハウを活用するという背景から、非行や犯罪の相談が中心になり、その裾野として子育てなどの相談にも応じるようですね。

更に、法務省矯正局から出ている関係機関向けパンフレットによると、法務少年支援センターでは以下のような支援を行っております。

  1. 能力・性格の調査:関係機関や団体、本人やその家族からの依頼を受けて、相談内容に合わせて心理検査や適性検査を行います。依頼があれば、本人や家族に結果を説明します。
    実施可能な心理検査等の例として、知能検査等、性格検査・職業適性検査等が挙げられています。
  2. 問題行動の分析や指導方法の提案:問題行動等について、面接や心理検査などを行ったうえで、どうして問題行動が生じているのか、どのように指導・支援にあたれば良いのかなどについて提案します。
  3. 本人や家族に対する心理相談:関係機関、団体からの依頼を受けて、本人や家族との心理相談を行います。
  4. 事例検討会等への参加:関係機関・団体からの依頼に応じて、問題行動等のある人の支援に関する事例検討会などに参加し、見立てや指導方法に関する助言・提案を行います。
  5. 研修・講演:地方公共団体、学校、福祉、更生保護等の関係機関・団体の支援者が主宰する研修会、講演会などで、非行・犯罪、子育ての問題、思春期の子どもの行動理解と教育方法や指導方法などについてわかりやすく説明します。
  6. 法教育授業等:児童・生徒等を対象に、非行少年に対する司法手続きや処分の種類・内容について、法教育授業(いわゆる出前授業)を行うほか、教員への研修も受け付けています。

これらの内容から、選択肢②や選択肢④が法務少年支援センターの支援内容に含まれていることがわかりますね。

以上より、選択肢③は誤りと判断でき、選択肢②および選択肢④が正しいと判断できます。

⑤ 個別の相談は、保護観察所内に設置されている相談室で行うことを原則とする。

法務少年支援センターの一般向けパンフレットによると、相談方法に関しては直接来所するというだけでなく、電話での相談も受け付けています。

よって、本選択肢のように「相談室で行うことを原則とする」という点には誤りがあると考えられます。

また、法務少年支援センター自体は鑑別所に併設されていますから、直接の相談は「少年鑑別所内」で行うことになると考えてよいでしょう。

他選択肢で示した少年鑑別所法第131条にも「少年鑑別所の長は…」となっていることからも、その点については間違いないと考えられます。

本選択肢の内容は「保護観察所」となっておりますから、こちらは誤りであると考えられます。

なお、少年鑑別所と保護観察所の違いを理解しておくことも大切です。

少年鑑別所は、少年鑑別所法を根拠法とする「鑑別対象者の鑑別を適切に行うほか、在所者の人権を尊重しつつ、その者の状況に応じた適切な観護処遇を行い、並びに非行及び犯罪の防止に関する援助を適切に行うことを目的」(少年鑑別所法第1条)とした機関です。

対して保護観察所は、更生保護法を根拠法とした、主に罪や非行を犯し家庭裁判所の決定により保護観察になった少年、刑務所や少年院から仮釈放になった者、保護観察付の刑の執行猶予となった者に対して保護観察を行う機関です。

少年鑑別所では、主に家庭裁判所の観護措置決定により送致された少年を収容し、医学、心理学、社会学、教育学等の専門知識に基づいて、資質及び環境の調査を行い、それを踏まえて家庭裁判所の審判が行われます。

その結果、保護観察処分になるなどのルートで保護観察所に措置されることになりますね。

このように、法務少年支援センターは少年鑑別所内に置かれており、電話相談といった直接来所以外の支援についても行っております。

以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。

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