公認心理師 2021-77

虐待が疑われる状況での対応に関する問題です。

基本的な問題ではありますが、不適切と判断する理屈の「根っこ」にある考えもしっかりと述べられることが大切です。

問77  7歳の男児A、小学1年生。Aは、スクールカウンセラーBの相談室の開放時間に、よく訪れていた。最近、Aが学校に連絡なく2日間欠席したため、担任教師と一緒にBがA宅を家庭訪問した。Aは、アパートの階段下に座っていたが、最初、Bらの質問に何も答えなかった。やがて、「お父さんがお母さんを叩いている。家ではけんかばかりだし、僕も叩かれることがある」と話した。「他の人にけんかのことを話すとお父さんとお母さんに叱られる」とも訴えた。
 Bや学校がとるべき初期対応として、適切なものを2つ選べ。
① Aの両親と面談をして、信頼関係の構築を図る。
② Aに両親のけんかの原因や頻度などを詳しく質問する。
③ 児童虐待の確証を得られるよう、近隣住民から情報収集をする。
④ Aから聞いた発言やその際の表情・態度をそのまま記録しておく。
⑤ 校内で協議の上、市町村の虐待対応担当課又は児童相談所に通告する。

解答のポイント

SCとして虐待状況に出あったときの対応について理解している。

選択肢の解説

④ Aから聞いた発言やその際の表情・態度をそのまま記録しておく。
⑤ 校内で協議の上、市町村の虐待対応担当課又は児童相談所に通告する。

まず本事例で大切なのは、児童相談所への通告を前提にて対応していくことです。

本事例の状況と、それをどう捉えるかについては以下の通りです。

  1. 学校に連絡なく2日間欠席した:現実場面に影響が出ている
  2. 「お父さんがお母さんを叩いている」:DVが起こっており、Aもそれを見ている→心理的虐待
  3. 「家ではけんかばかりだし、僕も叩かれることがある」:A自身も叩かれている→身体的虐待
  4. 「他の人にけんかのことを話すとお父さんとお母さんに叱られる」:母親はDV被害者ではあるが、Aの味方になるという感じも薄い。

上記の2および3は児童虐待防止法に定められている虐待に該当するものです。


第二条(児童虐待の定義) この法律において、「児童虐待」とは、保護者がその監護する児童について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。


DVが目の前で行われることは心理的虐待に該当するというのも、既に常識と言ってよいでしょうね。

上記の通り、本事例では虐待が行われていると見なして対応していくことになります。

学校現場での児童虐待通告に関しては、児童虐待防止法の規定を参照にしておきましょう。


第五条(児童虐待の早期発見等) 学校、児童福祉施設、病院、都道府県警察、婦人相談所、教育委員会、配偶者暴力相談支援センターその他児童の福祉に業務上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師、弁護士、警察官、婦人相談員その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない。

2 前項に規定する者は、児童虐待の予防その他の児童虐待の防止並びに児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援に関する国及び地方公共団体の施策に協力するよう努めなければならない。

3 第一項に規定する者は、正当な理由がなく、その職務に関して知り得た児童虐待を受けたと思われる児童に関する秘密を漏らしてはならない。

4 前項の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第二項の規定による国及び地方公共団体の施策に協力するように努める義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。

5 学校及び児童福祉施設は、児童及び保護者に対して、児童虐待の防止のための教育又は啓発に努めなければならない。

第六条(児童虐待に係る通告) 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

2 前項の規定による通告は、児童福祉法第二十五条第一項の規定による通告とみなして、同法の規定を適用する。

3 刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。


このように、学校は児童虐待の早期発見への努力義務があり、また、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合には通告することが法的義務となっています。

ですから、本事例では、①虐待である可能性がある事例である、②児童相談所への通告を前提に進めていく、ということになるわけです。

さて、そうなったときに、この現場で必要なことは何かを考えていく必要があります。

まず「Aから聞いた発言やその際の表情・態度をそのまま記録しておく」ということはとても大切なことです。

情報に色付けをせず、事実を明確に記録しておくことが重要で、それを管理職等と共有できる形にしておくこと、また、それが通告後の児童相談所が得る情報にもなります。

これらの情報に余計な解釈を加えないことが重要で、時々「これは虐待でしょう」と判断めいたことを言う人がいますが、この時点では「虐待の可能性がある」とまでしか言えません。

この時点での客観的な情報を正しく記録することは、Aを守ることになるだけでなく、学校がこの状況で通告したという事実の根拠を残すことにもなります。

なお、見逃されがちですが、本事例において「担任教師と一緒にBがA宅を家庭訪問した」という点も大切です。

特に表情や態度の記述は、どうしても主観的なものになりがちですから、2人の人間が、しかも学校の人間と、学校外部の専門家であるSCが同様の見解を示したということが、その記録の正しさを裏付けるものになってくれます。

ちなみに、SCが単独での家庭訪問がOKかどうかは、都道府県や教育委員会によって異なることが多いですから、その地域でSCとして勤務する際に確認しておくと良いでしょう。

例えば、不登校児の家に家庭訪問する際、相手が女の子でSCが男性であるとか、車で向かう場合の交通費や事故に遭ったときの補償など、いろんな問題が単独での家庭訪問にはあります。

最近は「担任(学校の教員)同伴での家庭訪問なら可」というルールが多いかもしれませんが、それも地域差があるでしょうね。

いずれにせよ、そうした点について働くときには確認することが重要です(保護者面接等で聞かれることもあるし、こちらから提案する場合もあり得る)。

さて、こうした客観的な情報を踏まえ、選択肢⑤にあるように「校内で協議の上、市町村の虐待対応担当課又は児童相談所に通告する」ことになります。

「虐待なんだから、この場で即通告でいいじゃないか」と考える人がいるようですが、それは間違いです。

担任とSCは管理職の管理下にありながら勤務をしていますし、学校の枠内で起こったこと(Aは学校を休んでいるけど、家庭訪問で行ったんだから学校の枠内と捉える)に関しては管理職は責任を負うことになります。

ですから、まずは校内で管理職を含めて情報共有を行い、校長(何らかの理由で不在ならば教頭)が児童相談所(または市の虐待対応の課)へ通告することになります。

ちなみに通告を「市町村の虐待対応担当課」にするか「児童相談所」にするかは、一般論としては、普段からつながりのあるであろう「市町村の虐待対応担当課」に通告し、その場で児童相談所への通告について話し合えばよいでしょう。

普通は「市町村の虐待対応担当課」からそのまま児童相談所へも連絡が行きますから、自動的に児童相談所に通告を行ったのと同じ状態になるはずです。

実践的に考えていく場合、本事例で難しいのが「家庭訪問~通告」の間をどうするかです。

両親に黙ってAを連れていくわけにもいきませんし(誘拐になってしまう)、かといって両親に言って連れていくというのもかなりの抵抗が予想されるうえ、Aが話したことが明らかになるから難しいですよね(通告したら話したことも伝わるが、その場合は一時保護などの安全な状況下に置かれていることになる。ここでの話題は、Aが話したことが明らかになる上に、Aを家に残しておかねばならないという点が問題)。

Aと両親ともども学校に連れて行って、児童相談所が来るのを待たせるという力技もあり得ますが、法的拘束力がありませんから成功すると確信が持てない以上、実行するにはかなり勇気がいります。

結局は、Aをこの場に残し、いったん学校に持ち帰って、すぐに協議を行い通告するということになるだろうと思います(もしかしたら、担任かSCのどちらか一方がAの傍に残るという判断もあり得るかも。長い一日になりそう)。

通告時には「これこれの事情からAを家に残さざるを得ない状況だった」と伝えること、周辺情報としてここ2日間学校を休んでいることなども含めて伝えることで、児童相談所がどう動くのかの判断材料にするでしょう。

臨床的には、Aをこの場に残しておくときに何と伝えて離れればいいかが大切な気がしますが、なかなか難しい問題ですね。

以上より、本事例の状況では、事実を後から確認できるよう、客観的な情報を残しておくことが重要ですし、そうした情報を踏まえて学校での協議を経て、管理職から通告してもらうことになります。

よって、選択肢④および選択肢⑤が適切と判断できます。

① Aの両親と面談をして、信頼関係の構築を図る。

上記の通り、本事例では児童相談所等への通告が前提となります。

それ以外の選択肢は「他にできること」の検討になりますが、その是非を一つひとつ考えていきましょう。

本選択肢に関しては、「児童虐待を受けたと思われる児童」を発見した本事例の状況では優先されるものではありません。

先述の通り、即通告が前提の状況と言えますからね。

ただ、この選択肢の対応は、意外と学校の中でも案に上がりやすいので、もう少し詳しく述べておきましょう。

そもそも「話したらわかってくれる」と現時点で思わないことが大切だと、個人的には考えています。

先述の通り、本事例では…

  1. 学校に連絡なく2日間欠席した:現実場面に影響が出ている
  2. 「お父さんがお母さんを叩いている」:DVが起こっており、Aもそれを見ている→心理的虐待
  3. 「家ではけんかばかりだし、僕も叩かれることがある」:A自身も叩かれている→身体的虐待
  4. 「他の人にけんかのことを話すとお父さんとお母さんに叱られる」:母親はDV被害者ではあるが、Aの味方になるという感じも薄い。

…という問題があるわけです。

単にDVがあり、父親からの虐待が想定されるだけではなく、母親もAの味方とはならず、家庭状況が漏れることの方を恐れているという状況ですね。

また「学校に連絡なく2日間欠席した」という事実からは、父親はもちろん母親も「欠席時には学校に連絡する」という基本的なルールを守れない家庭であると見なすことができます(このルールを遵守できるかどうかは、実は家庭の力を測る上でかなり重要になる)。

さらに、Aの様子としてケガや病気の存在は窺えませんから、おそらく家庭の力動によって「Aは学校を休んでいる」と考えるのが妥当なわけで、この辺も家庭の社会倫理の薄さ(学校に行かせようという意識の薄さ)が見立てられるはずですね。

こうした諸々の状況を踏まえれば、本事例において「両親と面接し、両親がしていることは児童虐待になるかもしれんから止めておきましょう」的な関わり(信頼関係を構築するのは、つまるところ、これを伝えるためでしょう)が通じる人たちではない可能性の方が高いことがわかるはずです。

こういう家庭の見立てについては、家庭と関わり続けることで「ある情報をどこまで重視するか」がわかってきて(上記で言えば、学校に連絡してこない家庭はどういう家庭かを見立てる等)、より正確な判断が可能になってきます。

この辺はおそらく学校で勤務するSCが最も感度が高い見立てができる領域であり、だからこそ、この領域を鍛えておくことが求められるわけです。

もちろん、見立てが外れてAの家族が話し合い可能な場合もあるかもしれませんが、それでも本事例の状況では通告を優先することには変わりありませんね。

本選択肢の対応はどちらかと言えば、虐待というよりも「ちょっと子育てが気になるな」「不適切な子育ての影響が、明確に学校で出ているな」と思える事例で、保護者にも問題意識がある場合に提案される内容だと思います。

なお、本事例では「他の人にけんかのことを話すとお父さんとお母さんに叱られる」を受けて、通告しないという選択肢はありません。

ですが、「他の人にけんかのことを話すとお父さんとお母さんに叱られる」という状況の中で両親と面接をするというのは、Aに危険が及ぶ恐れもありますね。

児童相談所が間に入っていれば、その辺のリスクはかなり回避できますが、本事例の段階(すなわちAの安全が確保されていない状況)で両親との面接は更にひどい虐待状況を生むというリスクも考えねばなりません。

その点からも、本選択肢の対応は避けるべきですね。

最後にDV家庭(だけでなく、父親が明確に強い意見を持っていて、しかもそれを曲げない感じがある夫婦(ASD傾向のある父親にもみられる)。パワハラ的な関わりをする夫なども含む)について一言述べておきましょう。

仮に、その家庭の母親と継続的に学校でカウンセリングしていくとして、その流れで「おそらく起こるだろうこと」があります。

それは「母親の意見が、徐々に父親の考えに寄っていく」ということです。

不登校であっても、はじめは父親の粗暴な関わり方を非難していた母親が、徐々に父親の「学校に行かないのは甘えだ」という意見に寄せていくように考えを変えていきます。

DVを「受ける女性」の特徴はいくつか指摘されているでしょうが、私が現場で思う特徴は「場を丸く収めようとする」「諍いを回避する」というものです(その本質としては別の言い方もありますが、それは別の機会があれば。根っこには「公認心理師 2019-77」で解説したトラウマティック・ボンディングの特徴がある)。

こういう特徴があることによって、男性の万能感を高めて自身へのDVを誘発するのですが、この特徴があることで「場が丸く収まるように、家庭内で強い人の意見に寄せていく」ということが無意識に起こるのです。

この特徴自体は社会場面ではそう悪くないことも多いのですが(社会的な責任が重い立場でなければ大丈夫)、家庭の中で、しかも夫が粗暴なタイプの場合、そちらに寄せた意見を備えるようになるので、結果として「家庭の中で最も弱い存在である子どもにしわ寄せが行く」という形になります。

ですから、仮にこういう家庭の母親と面接する場合は、はじめは同じ意見を共有していても、後から意見が変わってくる、噛み合わなくなってくる、ということを想定してカウンセリングをスタートさせると良いでしょう。

私の場合は、こういう事態を「予告」しておくことで、クライエントの心的な変化に内省を働かせる種を蒔くようにしています(この辺はカウンセラーのタイプや技術如何によって使えるか否かが変わってくるでしょうから、安易に使用しないように)。

以上より、本事例の状況では、両親と面談をして信頼関係の構築を図るという段階ではないことがわかりますね。

社会的に通告を優先させるべきであるだけでなく、両親と面接して改善がすぐに期待できるような状況でもないでしょう。

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。

② Aに両親のけんかの原因や頻度などを詳しく質問する。
③ 児童虐待の確証を得られるよう、近隣住民から情報収集をする。

こちらに関しては先述の児童虐待防止法の規定を確認しておきましょう。


第六条(児童虐待に係る通告) 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

2 前項の規定による通告は、児童福祉法第二十五条第一項の規定による通告とみなして、同法の規定を適用する。

3 刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。


この規定で重要なのは「児童虐待を受けたと思われる児童を」の「思われる」の箇所です。

すなわち、児童相談所等への通告をする場合、虐待の確証がなくても「通告を行わなければならない」のです。

ですから、選択肢③の「児童虐待の確証を得られるよう、近隣住民から情報収集をする」というのは、そもそもの前提として「確証はいらない」のですから、不適切な内容であることがわかるはずですね。

さらに、選択肢③の「近隣住民から情報収集をする」や選択肢②の「Aに両親のけんかの原因や頻度などを詳しく質問する」というのは、学校が行うべき対応ではありません。

児童虐待の通告後、児童相談所が「一時保護する状況ではない」と判断したとして、一方で学校に来ていない等の問題があるわけですから、継続的にAの周辺を観察していくことが求められます。

もちろん、「一時保護する状況ではない」としたとしても、Aの家庭の詳しい状況を聞くことは必須でしょうから、こちらは通告後に児童相談所が行うことが多いだろうと思います(もしくは、児童相談所を交えた会議(要対協になるかも)の中で、役割分担を行う)。

児童相談所以外であれば、SCであれば学校での面接で家庭状況を確認するでしょうし、近隣住民からの情報は民生委員などが調べる役割を担うかもしれません。

いずれにしても選択肢③の「近隣住民から情報収集をする」や選択肢②の「Aに両親のけんかの原因や頻度などを詳しく質問する」というのは、事例の時点において学校が率先して行わなければならない事柄ではないと言えるでしょう。

また「Aに両親のけんかの原因や頻度などを詳しく質問する」というのは、その意図としては、児童虐待の在り様を明確にしたり、もしかしたら単発的な出来事である可能性も考えて、ということだろうと思います。

しかし、あくまでも「児童虐待と思われる状況」に出遭ったわけですから、そういう「確かめ」の作業はすべて後回しになります。

現時点の情報だけで通告するのに足るわけですから、まずはそちらを優先し、その後に必要な情報をどのように集めるかは児童相談所等を交えての検討になります。

最後に、本事例において一時保護されない可能性について述べます。

この可能性については「わからない」というのが正しい理解です。

これは「この事例だからわからない」のではなく、「虐待として一時保護するか否かは、本質として児童相談所側が決めることである」から「わからない」のです。

児童相談所外の支援者はこの点を強く認識しておく必要があります。

学校内で大変な事例ほど、学校側の人間は「どうしてこの状況で一時保護しないんだ」「こんなにひどい状態になっているのに」などと思いがちですが、どんな状況であろうと「一時保護を決めるのは児童相談所」であり、その判断に相談所外の人間は口出しできないのです。

学校側が一時保護を願う事例が一時保護されない状況で考えられることとしては、①学校で大変な事例が、虐待事例として深刻であると端的に言えない場合も多い、②一時保護に伴う親子分離の傷つきを懸念する、③仮に一時保護した場合、おそらくこの保護者は再び引き取ることはしないだろうと予見される(そして深刻な②につながる)、などがあるかもしれません。

いずれにせよ、学校が「一時保護すべき状況だ」と思っても、児童相談所がそう判断しないことはよくあることです。

むしろ「学校で大変な事例」は、多くの場合、対人関係上の厄介さが前面に出ているものですが、「対人関係上の厄介さ=関わりの中でもがいている」ことが多いので、その実、親子分離が大きな傷つきになることも多いのです(関わりを繋ごうともがいているところを切られる)。

大切なのは、学校ができる範囲のことをしっかりと行うことです。

具体的には、①自分たちの範囲で得られた情報を、余計な解釈することなく記録・提示すること、②子どもがどのような状況であれ、自分たちのできる範囲のことを精一杯やるという共有、③子どもが「こういう状況にあることを、児童相談所等に伝えた」という記録を、その市町村の教育委員会も含めて残しておくこと、などになります。

①については、きちんと情報を提示して、児童相談所が判断しやすくするために必要ですし、ここに過剰な色付けや取捨選択をすると、却って厄介な状況になってしまうので気をつけましょう。

③に関しては、万が一があったときに「学校はやるべきことをやっていた」という保険ですが、こういう保険がなければ②の「精一杯支援する」ということは難しいです(私は会議の場でそれとなく「児童相談所に通告し、必要な情報を提示したという事実」を学校関係全体で共有していることを匂わせます)。

いずれにせよ、臨床の場に限らずですが、自分のできる範囲を知り、その範囲の責任を全うすることが大事ですし、自分の権限の範囲外のことは「天気と一緒」と思っておくことが大切です。

以上より、Aから詳しい状況を確認することも、近隣からの情報収集することも、現段階で行うべき事柄ではありません。

よって、選択肢②および選択肢③は不適切と判断できます。

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