公認心理師 2020-26

 構成的グループエンカウンターに関する問題です。

エンカウンターグループと構成的グループエンカウンターは異なるものですから、間違えないようにしておきましょう。

問26 構成的グループエンカウンターの特徴として、最も適切なものを1つ選べ。

① グループを運営するリーダーを決めずに実施する。

② 参加者の内面的・情動的な気づきを目標としていない。

③ 特定の課題設定などはなく、参加者は自由に振る舞える。

④ レディネスに応じて、学級や子どもの状態を考慮した体験を用意できる。

⑤ 1回の実施時間を長くとらなくてはならないため、時間的な制約のある状況には向かない。

解答のポイント

構成的グループエンカウンターに関する基本的な理解があること。

必要な知識・選択肢の解説

グループエンカウンターとは、集中的なグループ体験のことを指します(この意味の場合は、エンカウンターグループも含む)。

参加者はクライエントや患者に限定されず、すなわち、治療を求めてではなく、自己啓発や自己変革を求めて参加する人を対象にしています。

こうした集中的なグループ体験には2種類あります。

その1つは、カール・ロジャーズらを創始者とするベーシック・エンカウンターグループです(単にエンカウンターグループと呼ぶことの方が多いかもしれない)。

ロジャーズによれば「経験の過程を通して、個人の成長、個人間コミュニケーションおよび対人関係の発展と改善」を意図した集中的グループ体験が、エンカウンターグループということになります。

もう1つは、オープン・エンカウンターで、ウィリアム・シュッツらによって提唱されました。

こちらはヒューマニスティック心理学の文脈から生じており、ゲシュタルト療法のパールズもシュッツのいる研究所(エスリン研究所)に所属していました。

これら2つの相違は、エクササイズの活用の有無にあります。

ロジャーズのそれは「計画された「演習」を避ける」というものであり、非構成的とも表現されます。

これに対して、シュッツらのグループはエクササイズを活用します。

こちらは日本において、主に國分康孝らによって「構成的グループエンカウンター(Structured Group Encounter:SGE)」と命名され、1970年代後半から提唱・実践され始めました。

SGEは、ふれあい(本音と本音の交流)と自他発見(自他の固有性・独自性・かけがえのなさの発見)を目標として、個人の行動変容を目的としています。

このように、エンカウンターグループ(実存主義と来談者中心療法)と構成的グループエンカウンター(実存主義、プラグマティズム、論理実証主義とゲシュタルト療法)は別の潮流をもつものと言えます。

これらを同一のものと見なしてしまっている人がいますが、きちんと弁別して語れるようにしておくことが大切です(特に大学院入試の時に、いずれかの専門家がいたら弁別できないとまずいですよ)。

① グループを運営するリーダーを決めずに実施する。

SGEにはリーダーを置くことになります(学校で行う場合は教師やスクールカウンセラーがその役割になりますね)。

リーダーはプログラムの推進者であり、メンバーの依存・模倣の対象でもあります。

その主たる役割は「インストラクション」「プログラム構成」「観察・介入」となります。

ワークショップ中は、メンバー全体や個人の様子を観察したり、情報収集したりして理解に努めます。

特に、のれていないメンバーや落ち込んでいるメンバーがいたら、プログラムを構成し直し、より状況にあったものにしていきます。

ワークショップ中に起こった問題は、集団の中で解決していくのが基本です。

また、リーダーは、出会いの自己紹介やデモンストレーションなどを自己開示的に行い、メンバーとの感情交流が深まるように心がけます。

エクササイズを実施する際は、狙いや内容、留意点などを適切にメンバーに伝える役割です。

このようなメンバーの立ち居振る舞いによって、メンバーは安心してエクササイズに取り組み、目標を達成することができます。

このことが、リーダーが「メンバーの模倣と依存の対象」ということの意味です。

以上のように、SGEではグループを運営するリーダーを決めて実施することになっています。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② 参加者の内面的・情動的な気づきを目標としていない。

SGEの原理としては以下が挙げられています。

  1. 本音に気づくこと
    気づいた本音を表現し、他者の本音を受け入れる。本音とは、あるがままの自分のことを指す。
  2. SGE体験を構成すること
    構成とは、エクササイズをはじめとする枠を介して自己開示を促進するということである。エクササイズは参加者の心理面の発達を促す課題である。心理面の発達とは、感情体験の幅を広げること、認知の修正・拡大を行うこと、そして反応・行動の柔軟性を高めることを意味している。エクササイズは自己開示の誘発剤となり、自己開示はリレーションを形成することになる。
  3. シェアリング
    シェアリングは、認知の拡大・修正を狙いとしている。認知とは、見方・受け取り方・考え方のことを指す。

このように、SGEでは内面的・情動的な気づきも目標に据えていることがわかりますね。

またSGEにおける行動変容とは、①ある特定の感情へのとらわれ(例えば、劣等感にとらわれている)、②ある特定の思考へのとらわれ(例えば、家事は女性がやるべき)、③ある特定の行動へのとらわれ(例えば、権威主義的に振る舞うこと)から脱却するということを意味します。

このことを踏まえても、SGEが参加者の内面の変化を目標にしてることがわかりますね。

以上より、選択肢②は不適切と判断できます。

③ 特定の課題設定などはなく、参加者は自由に振る舞える。

構成的グループエンカウンターの「構成」とは、枠を与えるという意味を持ちます。

SGEには、「グループのルール」「グループサイズ」「グループの構成員」「時間制限」「エクササイズをする際の条件」という主たる5つの枠があります。

この枠を与える理由としては以下の通りです。

  1. 参加しやすいエクササイズから始め、メンバーの心的外傷を予防する。
  2. ワークショップの初めはエクササイズの時間を短めにし、のれない人に配慮する。
  3. グループサイズを小グループから始め、段階的にリレーションを作る。
  4. エクササイズの気持ちの揺さぶりの浅いものから深いものへと配列し、ワークショップの目標達成をステップバイステップにする。
  5. SGEを効率的かつ効果的に進める。
  6. リーダーやメンバーの持ち味を生かす。

このように、枠組みを設定することでより効果的にSGEを行うことができることが示されています。

一定の「構成」があること、つまり枠があるということは、自由を阻害すると考えられがちですが、それは間違いです。

ある枠組みが与えられることによって、その範囲で自由に振る舞うことが可能になります。

例えば、風景構成法のフリーハンドで描かれる「枠」には、そこで描かれる表現を守るという意味が含まれています。

そして、表現が守られることによって自由な表現がしやすくなるということです。

これは人の発達でも言えることかもしれません。

自分の特徴、性格、生まれてから今の自分までの連続性などがしっかりと理解できるということは、ある意味「制限」が生まれます。

自分にできることとできないことが明白になるということですから「無限の可能性」は失われるはずです。

しかし、そうした自己理解が進んでから(つまり、無限の可能性が失われてから)の方が、実は自由に自分の人生の選択をすることができるようになるのです。

このことは、SGEでも同じだろうと思います。

構成をあらかじめ備えておくことで、その範囲内においてメンバーは自由になることができると言えます。

すなわち、本選択肢にある「課題設定がない=自由に振る舞える」という論理自体が適切とは言えないと考えられます。

なお、「エンカウンターグループは課題設定がないから自由に振る舞える」という論理も成り立たないことがわかりますね。

エンカウンターグループでは、むしろ課題設定がないという「重しのある」状況の中で、自由に振る舞うことの難しさを感じつつ、その中で自分の表現をしていくことが大切な気がします。

ですから、「課題設定がないのはエンカウンターグループだから、SGEの説明としては妥当ではない」という解説は間違いなのです(この解説だと「課題設定がない=自由に振る舞える」という論理の誤りを指摘したことにはならない)。

以上より、選択肢③は不適切と判断できます。

もちろん、このテーマは難しい話で、フロムの「自由からの逃走」では、支配という「枠」に自ら飛び込んでしまう人の心理も描かれています。

自由とは何か、枠組みとは何か、こうしたテーマは人の支援に携わる人の内に、自分なりの回答を持っておくことが求められることかもしれないですね。

④ レディネスに応じて、学級や子どもの状態を考慮した体験を用意できる。

SGEのエクササイズを選ぶときには、狙いによる選択(どういった狙いをもって行うかによってエクササイズが決まる)、モチベーションによる選択(初めてSGEを行うときは、モチベーションを高めるエクササイズを選ぶ)、レディネスによる選択(参加者のレディネスによって、エクササイズの狙いや達成度が決まることが多い。レディネスを高めるためには、エクササイズの実施時期・場所・意義・目的・アレンジの仕方をよく考えておくことが必要となる)、リーダーの経験度による選択(経験が増すことでアレンジを加え、より狙いが達成されるような内容を実施する)、エクササイズの配置による選択(エクササイズの配置があり、それが進むにつれてより深いエンカウンターになる)などを参考に決めていきます。

レディネスとは、学習準備性と表現され、学習や習得を行う場合に、学習者側に、学ぶために必要な条件や環境が整っている状態のことであり、特に子どもの教育に用いられる言葉です。

レディネスはいわば「心の下準備」であり、これの状態によってエクササイズへの乗りやすさなども変わってきます。

SGEのリーダーはグループのアセスメントを行うことが求められ、エクササイズに対するレディネスがあるか否かも重要なポイントになります。

このように、レディネスの状態によって効果が出やすいエクササイズを選択するのが必要になってきます。

SGEにおいてレディネスがテーマになりやすいのは、介入を行うか否かの判断です。

SGEにおける介入とは、グループが促進されるように軌道修正したり、自分の本音と向き合えるように応急処置をしたりすることを指します。

ただし、こういった介入をしない方がよい場合もあります。

例えば、子どもにSGEの経験が少ない、自我の発達が未熟である、などのようなレディネス不足が原因で、介入によって子どもが傷つく可能性が高い時です。

このような場合は、介入せずに子どもの様子を見守り、エクササイズを繰り返し経験させていくことで、子どものレディネスを育てていくことになります。

すなわち、レディネスと欲求不満耐性がどのくらいあるかを踏まえて、介入を考えていくということになります。

そのほか、レディネス不足が考えられるときには、その子どものそばでリーダーがわかりやすく手本を見せてあげることも効果的です。

以上より、選択肢④は適切と判断できます。

⑤ 1回の実施時間を長くとらなくてはならないため、時間的な制約のある状況には向かない。

SGEのエクササイズには様々なものがあり、かかる時間も長短あります。

このことはエクササイズ集を見てもらえれば、目安となる所要時間が各エクササイズに示されていることがわかると思います。

よって、「1回の実施時間を長くとらなくてはならない」ということが不適切な表現であることがわかります。

むしろ、一定の時間的な制約がある中で行うのがSGEの基本的な状況と言えるのではないでしょうか。

例えば、SCが学校でSGEを実施するときには、「45分」や「50分」という時間制限があらかじめありますし、しかもその授業時間をすべて使っていいというわけではないことがほとんどです。

「30分程度で」「15分で何とかなりますか?」といった要望も少なからずありますから、与えられたテーマと時間枠に沿って工夫することがSCには求められます。

もちろん、与えられたテーマに照らして時間枠が短すぎればそのことを伝えて調整することが大切ですが、学校も切り詰めた時間の中でSGEをすることも少なくないので、可能な限りオーダーに応えることが大切だろうと思います(特に昨今のようにコロナで休校が入ってくると、限られた時間枠がさらに限られることになりますね)。

SGEでは、むしろ、「時間制限」を重要な要素と見なしています。

時間制限を設け、守らせることは、参加者全員の権利を守り、平等に体験の機会を与えるために必要です。

グループに与えられた時間を1人が全部使うことは、他のメンバーの自己表現のチャンスが奪われることになります。

また、時間制限があるからこそ、グループに与えられた課題を協力して達成しようとして凝集性を高め、体験に集中するきっかけになります(終了前にカウントダウンすると、急に活動が活発になることが多い)。

更に、もう少し時間が欲しいという要望があっても決然として終了することで、時間は有限であり、だからこそ大切であることを気づかせる契機になります。

以上ように、SGEはある程度の時間枠がある中で行われるものですし、それが可能になるような種々のエクササイズも示されています。

よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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