公認心理師 2020-122

学校教育法施行規則に関する問題です。

小学校にも中学校にも設置が規定されていない、つまり「法的に設置が義務づけられていない」のはどの校務分掌であるかが問われているわけです。

問122 学校教育法施行規則において、小学校及び中学校のいずれにも設置が規定されていないものを1つ選べ。
① 学年主任
② 教務主任
③ 保健主事
④ 教育相談主任
⑤ 進路指導主事

解答のポイント

校務分掌の法的根拠を理解している。

選択肢の解説

① 学年主任
② 教務主任

これらについては第44条に以下の通り規定されています。


  1. 小学校には、教務主任及び学年主任を置くものとする。
  2. 前項の規定にかかわらず、第四項に規定する教務主任の担当する校務を整理する主幹教諭を置くときその他特別の事情のあるときは教務主任を、第五項に規定する学年主任の担当する校務を整理する主幹教諭を置くときその他特別の事情のあるときは学年主任を、それぞれ置かないことができる。
  3. 教務主任及び学年主任は、指導教諭又は教諭をもつて、これに充てる。
  4. 教務主任は、校長の監督を受け、教育計画の立案その他の教務に関する事項について連絡調整及び指導、助言に当たる。
  5. 学年主任は、校長の監督を受け、当該学年の教育活動に関する事項について連絡調整及び指導、助言に当たる。

このように、小学校では学年主任および教務主任を置くことが定められています。

学校教育法施行規則では、中学校に関しては、学年主任および教務主任を置くことを定めていないように見えますね。

しかし、中学校(第79条)、義務教育学校(第79条の8)、高等学校(第104条)、中等教育学校(第113条)、特別支援学校(第135条)に、第44条の規定が準用される旨が示されています。

上記の第79条を抜粋すると「第四十一条から第四十九条まで、第五十条第二項、第五十四条から第六十八条までの規定は、中学校に準用する」とあります。

ここで知っておいてほしいのが、法律における「準用」の意味です。

「準用」という法令用語は、ある事項に関する規定を、他の類似の事項について、必要な修正を加えてあてはめると法令作成技術で、これを利用することで条数が増えるのを防ぐことができます。

すなわち「Aの場合には(法律要件)、Bせよ(法律効果)」という条文を、A’の場合に準用すれば「A’の場合には、Bせよ」という条文があるものと扱ってよいということになります。

すなわち、「中学校に準用する」という第79条の規定がある以上、学年主任や教務主任は中学校にも置くことが定められているということです。

ですから「条項が定められていないから、教務主任や学年主任は中学校では置かなくてもいいんだ」と早とちりしないようにしましょうね。

主幹教諭が置かれているときには、校務主任や学年主任を置かないこともできるという規定もありますが、たいていの場合は置かれていると考えて間違いないです。

以上より、選択肢①および選択肢②は学校教育法施行規則において、小学校及び中学校のいずれにも設置が規定されていると判断でき、除外することになります。

③ 保健主事

こちらは第45条に規定されています。


  1. 小学校においては、保健主事を置くものとする。
  2. 前項の規定にかかわらず、第四項に規定する保健主事の担当する校務を整理する主幹教諭を置くときその他特別の事情のあるときは、保健主事を置かないことができる。
  3. 保健主事は、指導教諭、教諭又は養護教諭をもつて、これに充てる。
  4. 保健主事は、校長の監督を受け、小学校における保健に関する事項の管理に当たる。

このように、小学校には保健主事を置くことが定められています。

また、上記でも述べた通り、第79条の「第四十一条から第四十九条まで、第五十条第二項、第五十四条から第六十八条までの規定は、中学校に準用する」という規定がある以上、中学校でも原則として保健主事を置くことが定められているということですね。

以上より、選択肢③は学校教育法施行規則において、小学校及び中学校のいずれにも設置が規定されていると判断でき、除外することになります。

④ 教育相談主任

学校教育法施行規則には「教育相談主任」という校務分掌は規定されていません。

教育相談と係わる校務分掌として考えられるのが「教育相談コーディネーター」と「不登校担当」になります。

それぞれの根拠を以下に示していきましょう。

まず「教育相談コーディネーター」についてです。

こちらは「児童生徒の教育相談の充実について(通知)」にて示されています。

この通知の中の(3)に「教育相談コーディネーターの配置・指名」があり、以下のように規定されています。


学校において、組織的な連携・支援体制を維持するためには、学校内に、児童生徒の状況や学校外の関係機関との役割分担、SCやSSWの役割を十分に理解し、初動段階でのアセスメントや関係者への情報伝達等を行う教育相談コーディネーター役の教職員が必要であり、教育相談コーディネーターを中心とした教育相談体制を構築する必要があること。


このように「教育相談コーディネーター」については「児童生徒の教育相談の充実について(通知)」で、その設置が示されています。

こちらは通知を根拠にしているので、法的な設置義務があるわけではありませんが、通知で示されている内容は基本的に実施されるので、どの学校でも「教育相談コーディネーター」が置かれていますね。

続いて「不登校担当」という校務分掌についてです。

こちらは「不登校児童生徒への支援に関する最終報告~一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援の推進~」という「不登校に関する調査研究協力者会議」の報告書にて示されています。

「第7章 教育委員会に求められる役割」の「1 不登校や長期欠席の早期把握と取組」の中に、以下のような文章が確認できます。


教育委員会においては、所管の学校に対して、「児童生徒理解・教育支援シート」の積極的な活用を促し、その効果検証を実施することが重要である。その際、このような取組を推進するためにはコーディネーターとしての役割を果たす教員の存在が重要であることから、生徒指導のための人的措置の充実が効果的である。


このように「不登校担当」については「不登校児童生徒への支援に関する最終報告~一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援の推進~」という報告書の中で示されています。

こちらに関して設置義務は設けられていませんが、多くの学校で「教育相談コーディネーター」が兼ねているのではないかと考えています(もちろん、地域差等はあるのでしょうが)。

上記の通り、教育相談主任に関しては学校教育法施行規則には定められておらず、通知や報告書の中で、その設置が言及されているものです。

学校現場では、これらをまとめて「教育相談担当」という教員が充てられていると考えられます(分けられている場合もありますが)。

以上より、選択肢④は学校教育法施行規則において、小学校及び中学校のいずれにも設置が規定されていないと判断でき、こちらを選択することが求められます。

⑤ 進路指導主事

こちらは第70条に以下の通り規定されています。


  1. 中学校には、生徒指導主事を置くものとする。
  2. 前項の規定にかかわらず、第四項に規定する生徒指導主事の担当する校務を整理する主幹教諭を置くときその他特別の事情のあるときは、生徒指導主事を置かないことができる。
  3. 生徒指導主事は、指導教諭又は教諭をもつて、これに充てる。
  4. 生徒指導主事は、校長の監督を受け、生徒指導に関する事項をつかさどり、当該事項について連絡調整及び指導、助言に当たる。

このように、進路指導主事は中学校に置かれていることがわかりますね。

進路指導主事は中学校から規定されており、小学校には設置の必要性は示されていません。

なお、義務教育学校(第79条の8)、高等学校(第104条)、中等教育学校(第113条)、特別支援学校(第135条)に、第70条の規定は準用されることが定められています。

小学校には準用の規定はありませんので、進路指導主事は小学校では定められていないことがわかりますね。

以上より、選択肢⑤は学校教育法施行規則において、中学校に設置が規定されていると判断でき、除外することになります(本問は「学校教育法施行規則において、小学校及び中学校のいずれにも設置が規定されていないもの」ですから、中学校に規定されていれば除外されますね)。

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