公認心理師 2022-130

日本における里親制度に関する問題です。

里親制度そのものや、里親の種類による違いを把握しておくことが大切ですね。

問130 我が国の里親制度に関する説明として、正しいものを2つ選べ。
① 養子縁組里親は、家庭裁判所の審判により決定される。
② 親族里親は、祖父母等の親族が養育を行う里親制度である。
③ 全ての里親は、子どもの日常生活にかかる費用の支給を受ける。
④ 養育里親は、法律上の親子関係を成立させることを目的とする。
⑤ 専門里親は、児童相談所に付設する施設において、子どもの保護を行う。

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公認心理師 2021-134

解答のポイント

里親制度及び里親の種類による違いを把握している。

選択肢の解説

① 養子縁組里親は、家庭裁判所の審判により決定される。

養子縁組里親とは、子どもに保護者がいない場合や、実親が親権を放棄する意思が明確な場合などに、特別養子縁組を前提として子どもを預かる里親のことです。

いわゆる「里親(養育家庭)」との大きな違いは、特別養子縁組が成立した場合、里親としての一時的な養育関係ではなく、法的にも実親子関係として認められる点にあります。

平成29年度から、里親の新規開拓から委託児童の自立支援までの一貫した里親支援を都道府県(児童相談所)の業務として位置付けるとともに、養子縁組里親を法定化し、研修を義務化しています。

要するに、特別養子縁組が前提の里親ということになりますね(法律としては、児童福祉法で以下の通り規定されています)。


第六条の四 この法律で、里親とは、次に掲げる者をいう。
一 厚生労働省令で定める人数以下の要保護児童を養育することを希望する者(都道府県知事が厚生労働省令で定めるところにより行う研修を修了したことその他の厚生労働省令で定める要件を満たす者に限る。)のうち、第三十四条の十九に規定する養育里親名簿に登録されたもの(以下「養育里親」という。)
二 前号に規定する厚生労働省令で定める人数以下の要保護児童を養育すること及び養子縁組によつて養親となることを希望する者(都道府県知事が厚生労働省令で定めるところにより行う研修を修了した者に限る。)のうち、第三十四条の十九に規定する養子縁組里親名簿に登録されたもの(以下「養子縁組里親」という。)
三 第一号に規定する厚生労働省令で定める人数以下の要保護児童を養育することを希望する者(当該要保護児童の父母以外の親族であつて、厚生労働省令で定めるものに限る。)のうち、都道府県知事が第二十七条第一項第三号の規定により児童を委託する者として適当と認めるもの


本選択肢のポイントは、「里親」と「養子縁組」が混ざり合っていることだと考えられます。

つまり、「里親」と「養子縁組」では、決定する機関が異なるということですね。

養子縁組里親(というか里親)に関しては、児童福祉法第三十三条の六の二②に「児童相談所長は、前項の規定による請求に係る児童について、特別養子縁組によつて養親となることを希望する者が現に存しないときは、養子縁組里親その他の適当な者に対し、当該児童に係る民法第八百十七条の二第一項に規定する請求を行うことを勧奨するよう努めるものとする」とあるように、児童相談所の決定によって行われています。

こちらに対して、特別養子縁組の手続きは、養親となる者が居住地の家庭裁判所に申し立てを行い、6ヶ月以上の養育状況を踏まえ、審判により成立します。

6ヶ月の期間は申立時点から起算されますが、申し立てる前に児童相談所から里親委託され、養育の状況が明らかな場合はこの限りではありません。

特別養子縁組は、父母による監護が著しく困難又は不適当である等特別の事情がある場合において、子どもの利益のために特に必要があると認められるときに成立するものであり、そのような場合には積極的に活用されます。

なお、特別養子縁組の成立には、父母の同意が原則として必要とされるが、父母において子どもの利益を著しく害する事由がある等の場合には、父母の同意がなくても、家庭裁判所は特別養子縁組を成立させることができます(民法817条6のただし書)。

このように、養子縁組里親自体は「家庭裁判所の審判により決定される」のではなく、児童相談所の決定によってなされますが、その後の特別養子縁組については家庭裁判所の決定になるということですね。

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。

② 親族里親は、祖父母等の親族が養育を行う里親制度である。

親族里親は、両親等子どもを現に監護している者が死亡、行方不明又は拘禁等の状態になったことにより、これらの者による養育が期待できず、結果として施設への入所措置が余儀なくされる場合において、積極的に活用されています。

その子どもの福祉の観点から保護が必要な子どもを施設に入所させるよりも家庭的な環境の中で養育することが適当と決定した場合(子どもの精神的な負担を考慮し、養育里親よりも親族里親が優先されることが多い)、民法上の扶養義務の有無にかかわらず、三親等以内の親族である者に子どもの養育を委託する制度であり、次が留意点とされています。

  1. 委託について、「両親等子どもを現に監護している者が死亡、行方不明又は拘禁等の状態になったことにより、これらの者による養育が期待できない場合」には、疾病による入院や精神疾患により養育できない場合なども含まれる。なお、実親がある場合は、実親による養育の可能性を十分に検討する。
  2. 本来親族は、民法730条に「直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない」とあり、民法877条第1項により、直系血族等には、子どもを扶養する義務がある。しかしながら、扶養義務がある場合であっても、親族に養育を委ねた場合に、その親族が経済的に生活が困窮するなど結果として施設への入所措置を余儀なくされる場合には、親族里親の制度を活用することにより、一般生活費等を支給し、親族により養育できるようにすることができる。
  3. 親族里親は、保護者等がいる場合でも委託が可能となっているが、この場合、実親と親族の中で子どもの養育を行うのではなく、子どもを児童相談所が保護し、児童相談所が親族里親に委託するものであることを、実親及び親族に説明し、了解を得ることが必要である。
  4. 親族里親の制度については、制度の内容や趣旨があまり知られていないことから、児童相談所において、相談者が制度を利用することが可能と見込まれるときは、制度について適切に説明を行うことが必要である。

上記の通り、親族里親は「祖父母等の親族が養育を行う里親制度である」として間違いありません。

親族でも三親等以内という決まりがあることを理解しておきましょう。

よって、選択肢②は適切と判断できます。

③ 全ての里親は、子どもの日常生活にかかる費用の支給を受ける。

こちらについては児童福祉法第50条第7号および同法第53条に規定されています。


第五十条 次に掲げる費用は、都道府県の支弁とする。
一 都道府県児童福祉審議会に要する費用
二 児童福祉司及び児童委員に要する費用
三 児童相談所に要する費用(第九号の費用を除く。)
四 削除
五 第二十条の措置に要する費用
五の二 小児慢性特定疾病医療費の支給に要する費用
五の三 小児慢性特定疾病児童等自立支援事業に要する費用
六 都道府県の設置する助産施設又は母子生活支援施設において市町村が行う助産の実施又は母子保護の実施に要する費用(助産の実施又は母子保護の実施につき第四十五条第一項の基準を維持するために要する費用をいう。次号及び次条第三号において同じ。)
六の二 都道府県が行う助産の実施又は母子保護の実施に要する費用
六の三 障害児入所給付費、高額障害児入所給付費若しくは特定入所障害児食費等給付費又は障害児入所医療費(以下「障害児入所給付費等」という。)の支給に要する費用
七 都道府県が、第二十七条第一項第三号に規定する措置を採つた場合において、入所又は委託に要する費用及び入所後の保護又は委託後の養育につき、第四十五条第一項又は第四十五条の二第一項の基準を維持するために要する費用(国の設置する乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設又は児童自立支援施設に入所させた児童につき、その入所後に要する費用を除く。)
七の二 都道府県が、第二十七条第二項に規定する措置を採つた場合において、委託及び委託後の治療等に要する費用
七の三 都道府県が行う児童自立生活援助(満二十歳未満義務教育終了児童等に係るものに限る。)の実施に要する費用
八 一時保護に要する費用
九 児童相談所の設備並びに都道府県の設置する児童福祉施設の設備及び職員の養成施設に要する費用

第五十三条 国庫は、第五十条(第一号から第三号まで及び第九号を除く。)及び第五十一条(第四号、第七号及び第八号を除く。)に規定する地方公共団体の支弁する費用に対しては、政令の定めるところにより、その二分の一を負担する。


つまり、児童を里親に委託したときは、都道府県は、里親手当及び児童の養育に要する一般生活費、教育費等の費用(縁組里親及び親族里親については里親手当を除く)を、里親に対する措置費として支払い、国はその2分の1を負担するものであることとされています。

具体的な金額についてはこちらの資料にあります。

  • 里親手当(月額):養育里親 86,000円(2人目以降43,000円)専門里親 137,000円(2人目以降94,000円)
  • 一般生活費(食費、被服費等。1人当たり月額):乳児 58,570円、 乳児以外 50,800円
  • その他(幼稚園費、教育費、入進学支度金、就職支度費、大学進学等支度費、医療費、通院費等)

このように里親の種類によって、里親手当の有無などが変わってはきますが「全ての里親は、子どもの日常生活にかかる費用の支給を受ける」という内容自体は正しいものです。

養子縁組里親や親族里親では、一番大きい里親手当が出ないことになりますが、それ以外の一般生活費などは支給されますから「全ての里親は、子どもの日常生活にかかる費用の支給を受ける」ことになるわけですね。

以上より、選択肢③は適切と判断できます。

④ 養育里親は、法律上の親子関係を成立させることを目的とする。

養育里親については児童福祉法に定義が示されています。


第六条の四 この法律で、里親とは、次に掲げる者をいう。
一 厚生労働省令で定める人数以下の要保護児童を養育することを希望する者(都道府県知事が厚生労働省令で定めるところにより行う研修を修了したことその他の厚生労働省令で定める要件を満たす者に限る。)のうち、第三十四条の十九に規定する養育里親名簿に登録されたもの(以下「養育里親」という。)
二 前号に規定する厚生労働省令で定める人数以下の要保護児童を養育すること及び養子縁組によつて養親となることを希望する者(都道府県知事が厚生労働省令で定めるところにより行う研修を修了した者に限る。)のうち、第三十四条の十九に規定する養子縁組里親名簿に登録されたもの(以下「養子縁組里親」という。)
三 第一号に規定する厚生労働省令で定める人数以下の要保護児童を養育することを希望する者(当該要保護児童の父母以外の親族であつて、厚生労働省令で定めるものに限る。)のうち、都道府県知事が第二十七条第一項第三号の規定により児童を委託する者として適当と認めるもの


このように、養育里親とは、養子縁組を目的とせずに、要保護児童を預かって養育する里親です。

基本的には、実親の元で暮らすことができるようになるまでとなりますが、期間はまちまちで、長い場合は成人になるまで委託を続けるケースもありますが、数週間や1年以内など短期間委託するなどのニーズに応じた多様な里親委託ができます。

施設で育つ子どもたちにとっては、社会に出る前に一般家庭での生活を経験することはとても重要な機会と言えますし、また、将来的に養子縁組に至るケースも見受けられます。

なお、委託できる児童は4人までで、実子等を含めて6人までとなります。

保護者へは養育里親と養子縁組を希望する里親との違いを丁寧に説明し、長期に委託する場合や数週間や1年以内など短期間委託するなど、ニーズに応じた多様な里親委託ができることを説明し、理解を得ることが大切になります。

また、家庭引き取りが可能な子どもだけでなく、何らかの形で保護者との関係を継続する場合は、定期的な面会や外出等の工夫や家族再統合の支援を行うなど、親子関係が永続的なものになるよう配慮することが必要です。

また、現実的には親子関係を結ぶことが困難な子どもの場合も、子どもの保護者への気持ちをくみ取り、配慮することが必要となります。

短期委託する場合、子どもの生活の変化を最小限に抑える観点から、児童相談所は市町村等の協力を得て、必要な調査をし、できるだけ居住する地域の近くの里親に委託することが望ましいです。

その場合において、緊急を要するケースの場合は、児童委員や社会福祉主事等からあらかじめ児童相談所長に電話等による連絡で了解を得ることによって仮委託とするなど、弾力的な運用に配慮します。

なお、仮委託を行った場合は、速やかに子どもの状況や保護者の状況等を調査し、養育里親への正式な委託に切り替えていきます。

本選択肢の「法律上の親子関係を成立させることを目的とする」というのは養子縁組里親のことを指しており(上記の児童福祉法第6条の4の二に規定)、養育里親とは異なります。

むしろ養育里親の場合は、養子縁組里親とは異なることを丁寧に説明することが求められますね。

以上より、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ 専門里親は、児童相談所に付設する施設において、子どもの保護を行う。

専門里親については、児童福祉法施行規則に以下の通り規定があります。


第一条の三十六 専門里親とは、次条に掲げる要件に該当する養育里親であつて、次の各号に掲げる要保護児童のうち、都道府県知事がその養育に関し特に支援が必要と認めたものを養育するものとして養育里親名簿に登録されたものをいう。
一 児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)第二条に規定する児童虐待等の行為により心身に有害な影響を受けた児童
二 非行のある又は非行に結び付くおそれのある行動をする児童
三 身体障害、知的障害又は精神障害がある児童

第一条の三十七 専門里親は、次に掲げる要件に該当する者とする。
一 次に掲げる要件のいずれかに該当すること。
イ 養育里親として三年以上の委託児童の養育の経験を有する者であること。
ロ 三年以上児童福祉事業に従事した者であつて、都道府県知事が適当と認めたものであること。
ハ 都道府県知事がイ又はロに該当する者と同等以上の能力を有すると認めた者であること。
二 専門里親研修(専門里親となることを希望する者(以下「専門里親希望者」という。)が必要な知識及び経験を修得するために受けるべき研修であつて、厚生労働大臣が定めるものをいう。以下同じ。)の課程を修了していること。
三 委託児童の養育に専念できること。


虐待等で深く傷ついている子ども、障害のある子どもや非行傾向のある子どもについては、アセスメントを丁寧に行い、慎重に委託を検討することになります。

専門里親に委託する子どもは、様々な行動上の問題を起こすことがある場合があり、児童相談所、施設や関係機関等と連携し、療育機関でのケアや治療を取り入れながら、委託された子どもと専門里親の調整を行い、きめ細やかな支援が必要になります。

特に、施設から措置変更で委託された場合は、必要に応じて、施設の指導員等子どもの担当職員やファミリーソーシャルワーカーに委託後の里親への助言や養育相談の支援を依頼することも可能です。

また、専門里親への委託期間は2年以内(必要と認めるときは、期間を超えて養育を継続することはできる)としているところであり、2年を経過した後の対応については、関係機関等で協議し、子どもへの説明等の時期を含め、速やかに対応します。

里親ですから、養育自体は里親の家で行うことになりますが、さまざまな行動上の問題について各機関との連携や専門家の助言を委託後も依頼できますから、その点を踏まえて本選択肢が設定されたものと思われます。

そもそも里親制度は「家庭的な環境の下で子どもの愛着関係を形成し、養護を行うことができる制度」であると考えておくことが大切です(本選択肢の「児童相談所に付設する施設において、子どもの保護を行う」は一時保護所のことであろうと思いますが、これは里親制度とは関連がないですね)。

以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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