公認心理師 2021-40

児童の権利に関する条約〈子どもの権利条約〉に関する問題です。

一般原則を踏まえつつ、各権利を理解しておくと良さそうですね。

問40 児童の権利に関する条約〈子どもの権利条約〉に含まれないものを1つ選べ。
① 生命に対する固有の権利
② 残余財産の分配を受ける権利
③ 出生の時から氏名を有する権利
④ 自由に自己の意見を表明する権利
⑤ できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利

解答のポイント

児童の権利に関する条約〈子どもの権利条約〉の一般原則を踏まえ、各権利を把握している。

選択肢の解説

「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」は、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。

18歳未満の児童(子ども)を権利をもつ主体と位置づけ、大人と同様一人の人間としての人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子どもならではの権利も定めています。

前文と本文54条からなり、子どもの生存、発達、保護、参加という包括的な権利を実現・確保するために必要となる具体的な事項を規定しています。

1989年の第44回国連総会において採択され、1990年に発効しました(日本は1994年に批准しました)。

なお、子どもの権利条約には、3つの「選択議定書」が作られており、これは条約に新たな内容を追加や補強する際に作られる文書で、条約と同じ効力を持ちます。

2000年5月に二つの選択議定書(「子どもの売買、子ども買春及び子どもポルノに関する
子どもの権利に関する条約の選択議定書
」および「武力紛争における子どもの関与に関する子どもの権利に関する条約の選択議定書」)が、そして2011年12月に三つめの選択議定書(「通報手続に関する子どもの権利条約選択議定書」)が国連総会で採択されました。

子どもの権利条約には、以下のような一般原則が定められています。

  • 生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること):すべての子どもの命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障されます。
  • 子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと):子どもに関することが決められ、行われる時は、「その子どもにとって最もよいことは何か」を第一に考えます。
  • 子どもの意見の尊重(意見を表明し参加できること):子どもは自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、おとなはその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮します。
  • 差別の禁止(差別のないこと):すべての子どもは、子ども自身や親の人種や国籍、性、意見、障がい、経済状況などどんな理由でも差別されず、条約の定めるすべての権利が保障されます。

条約内の各権利は、こちらの一般原則と関連されながら定められております。

これらを踏まえて、各選択肢の解説に入っていきましょう。

① 生命に対する固有の権利

こちらは第6条に規定されております。

  1. 締約国は、すべての児童が生命に対する固有の権利を有することを認める。
  2. 締約国は、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する。

この「生命に対する固有の権利」とは、どんな権利なのか理解しておくことが大切です。

こちらは日本国の憲法第31条にもある表現で「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」とあり、こちらが「生命に対する固有の権利」を意味しています。

法律の手続き、というのは例えば死刑の存在などを指しているのでしょう(子どもの場合、死刑は無いのでこの点については考慮に入れなくていいでしょうね)。

すなわち「すべての児童が生命に対する固有の権利を有する」とは、世界のすべての子どもたちが「生きる権利をもっていることを認める」ということを指しているわけです。

現実には戦争や紛争によって、また事故や虐待などによって生命を失う子どもがたくさんおり、大人はそのような事態を少しでも改善し、子どもたちの生きる権利を守らなければならないということが示されているわけですね。

以上より、本選択肢の内容は児童の権利に関する条約〈子どもの権利条約〉に含まれていることがわかりますね。

よって、選択肢①は適切と判断でき、除外することになります。

② 残余財産の分配を受ける権利

まず用語について理解しておきましょう。

残余財産とは、会社や組合などがその財産を清算したのちに、なお残った積極財産のことを指します。

民法688条では「残余財産は、各組合員の出資の価額に応じて分割する」とされており、企業が解散する際に、負債を返済し、なお財産が余る場合、株主はその持ち株数に応じて残った財産の分配(株主平等の原則)を受けることができるという権利のことを「残余財産分配請求権」と呼びます。

基本的には、すべての株主に対して均等に分配されますが、残余財産を優先的に分配する種類株式や、残余財産の分配を行わない種類株式などを発行することも可能で、これらの種類株式を発行するためには、定款に記載する必要があります。

本選択肢は、こちらの内容を指しているように見受けられます。

その他、財産の分配+子どもで思いつくのが、遺産相続などですが、こちらについても子どもの権利条約とは関係ないと考えてよさそうですね(ちなみに、第1順位の法定相続人は被相続人の子どもになります)。

なお、子どもの権利条約の中で財産という言葉が書いてある第2条を抜き出すと以下の通りです。

  1. 締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。
  2. 締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活動、表明した意見又は信念によるあらゆる形態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。

こちらは差別の禁止という、子どもの権利条約の一般原則に基づいたものと言えますね。

以上より、本選択肢の内容は児童の権利に関する条約〈子どもの権利条約〉に含まれていないことがわかります。

よって、選択肢②は不適切と判断でき、こちらを選択することになります。

③ 出生の時から氏名を有する権利
⑤ できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利

こちらは第7条に規定されています。

  1. 児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。
  2. 締約国は、特に児童が無国籍となる場合を含めて、国内法及びこの分野における関連する国際文書に基づく自国の義務に従い、1の権利の実現を確保する。

このように、「出生の時から氏名を有する権利」と「できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利」が併せて規定されておりますね。

虐待や不登校などの問題の中で、実は無国籍の子どもたちが存在することがわかってきました(文部科学省の調査などで示されていますね)。

また「無戸籍の学齢児童・生徒の就学の徹底及びきめ細かな支援の充実について」も示されているので、併せて目を通しておくと良いでしょう(資格試験の勉強というよりも、一人の大人としてこの世界で起こっていることを目に留めておくことが大事だと思います)。

以上より、本選択肢の内容は児童の権利に関する条約〈子どもの権利条約〉に含まれていることがわかりますね。

よって、選択肢③および選択肢⑤は適切と判断でき、除外することになります。

④ 自由に自己の意見を表明する権利

こちらは第12条に規定されています。

  1. 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
  2. このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。

ここでは、子どもの法的および社会的地位について扱われています。

子どもは、一方では成人が有する全面的な自律性を有しないわけですが、他方では権利の主体でもあります。

この権利では、自己の意見をまとめる力のあるすべての子どもに対して、その子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明する権利を保障するとともに、子どもの意見がその年齢および成熟度にしたがって正当に重視されるとしたわけですね。

以上より、本選択肢の内容は児童の権利に関する条約〈子どもの権利条約〉に含まれていることがわかりますね。

よって、選択肢④は適切と判断でき、除外することになります。

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