公認心理師 2020-20

介護保険適用サービスを選択する問題です。

誤りの選択肢も何かしらに基づいて行われているので、それも含めて覚えておくことが重要になります。

個人的には、こういう問題は幅広い理解が必要なので大変だろうと思います。

問20 介護保険が適用されるサービスとして、正しいものを1つ選べ。

① 配食サービス

② 精神科訪問看護

③ 介護ベッドの購入

④ 住宅型有料老人ホーム

⑤ 通所リハビリテーション

解答のポイント

介護保険適用のサービスを把握していること。

それ以外のサービスが何に基づいて行われているかを把握していること。

選択肢の解説

① 配食サービス

介護保険サービスには介護保険法に定められている厳格な利用基準があり、サービスの種類や利用条件に制限があります。

そこで、介護保険では提供できないサービスを提供するのが「介護保険外サービス」で、介護認定を受けている高齢者も、受けていない高齢者も利用できるのが特徴です。

介護保険外サービスには、市区町村などが実施する非営利目的の支援サービスから民間企業が行うサービスまで幅広くあり、実施する主体によって利用方法や費用が異なっています。

利用者も要介護者から比較的元気な高齢者まで幅広く対象となるものがあり、料金も一部自己負担のものから全額自費になるものまであります。

介護保険外サービスの例としては以下のようなものがあります。

  • 配食サービス:介護保険には配食弁当の宅配サービスはありません。自治体によっては、老齢のため調理が困難で栄養失調のおそれがある高齢者に配食事業を行っているところがあります。自治体が補助金を出しているため、500円前後(自治体や本人の所得によって異なる)の料金で宅配してくれます。
  • 移送サービス:公共の交通機関を使って外出することが難しい高齢者を対象とした送迎サービスです。自治体や市民団体が運営しており、料金設定はタクシーのように走行距離で換算する場合や定額制など、運営団体により異なります。自治体が移送サービス券を発行しているところもあります。
  • 寝具乾燥サービス:高齢者世帯を対象におおむね月1回車で訪問し、寝具を預かり高温乾燥させるサービスです。自治体が無料または低額料金で提供している場合が多いです。
  • おむつサービス:現物を月1回自宅に配送、または購入費を助成します。
  • 訪問理美容サービス:外出困難な人に理髪店、美容院から訪問します。
  • 緊急通報システム:ひとり暮らしの高齢者に民間受信センターに通報する機器を貸与します。
  • 訪問による生活援助サービス:掃除、食事の準備などの家事支援、外出支援などを行います。訪問介護事業者、NPO、民間事業者、シルバー人材センターなどの住民ボランティアがなどサービスを提供します。

これらは一例ですが、サービスを行う主体によって、その内容がずいぶん変わってきます。

ニーズに応じて、条件に合った利用しやすいサービスを選ぶことが大切になりますね。

なお、介護保険で提供できるサービスとしては、生活援助(掃除、洗濯、寝具の整え、衣服の整理と補修、一般的な調理、買い物、薬の受け取り)と身体介護(食事介助、排せつ介助、入浴介助、衣服の着脱介助、通院・外出介助、就寝・起床介助)があり、訪問介護ならお弁当を買ってきてもらえますが、これは生活援助にあたるため同居家族がいる場合は利用できません。

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。

② 精神科訪問看護

訪問看護とは、看護師などが居宅を訪問して、主治医の指示や連携により行う看護 (療養上の世話又は必要な診療の補助)です。

その対象者は以下の通りです。

  1. 40歳未満の者
  2. 40歳以上65歳未満の者:条件は16特定疾病の対象者でない者
  3. 40歳以上65歳未満の者:条件は介護保険第2号被保険者でない者
  4. 65歳以上の者:条件は要支援・要介護に該当しない者、介護保険を利用しない者
  5. 要介護・要支援の認定を受けた者:条件は厚生労働大臣が定める疾病等、精神科訪問看護が必要な者(認知症は除く)、病状の悪化等により特別訪問看護指示期間にある者

このように、要支援者または要介護者は、原則、介護保険が適用されますが、要支援者または要介護者であっても、がん末期等厚生労働大臣が定める疾病等の者、急性増悪による頻回な訪問が必要な者、精神科訪問看護の対象者は医療保険の適用となります。

一般的に、介護保険対象者においては在宅サービスの利用にあたって医療保険より介護保険が優先されますが、2014年の診療報酬改定により、精神科訪問看護指示書によって実施する訪問看護については、65歳以上の高齢者(介護保険対象者)であっても医療保険による訪問看護となりました。

精神科訪問看護は、精神疾患のある利用者とその家族が対象です。

認知症のある利用者の場合は精神科訪問看護の対象とならないので、介護保険での対応になります。

この辺が本選択肢の迷いどころではありますが、一般的に精神科訪問看護は医療保険が適用され、認知症の場合は例外的に介護保険が適用されるということになります。

この選択肢が完全な「誤り」ではないと見ることもできますが、あくまでも「例外的」と考えれば「正しい」とも言えないのがわかります。

もしもこの選択肢に迷うことができたなら、とても幅広く勉強しているということになるでしょうね。

以上より、選択肢②は誤りと判断できます。

③ 介護ベッドの購入

介護にあたっては福祉用具や介護用品が必要になりますが、介護保険法ではこれらに対する補助が出ます。

ただし、介護保険の適用になる場合でも「福祉用具貸与」と「特定福祉用具販売」があります。

すなわち、レンタルする時に補助が出る品目と、購入する時に補助が出る品目があるということです。

介護保険法第8条第12項には以下の通り定められています。

この法律において「福祉用具貸与」とは、居宅要介護者について福祉用具(心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障がある要介護者等の日常生活上の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練のための用具であって、要介護者等の日常生活の自立を助けるためのものをいう)のうち厚生労働大臣が定めるものの政令で定めるところにより行われる貸与をいう。

そして、具体的な品目については「厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目」で定められています。

以下の通りです。

  1. 車いす:自走用標準型車いす、普通型電動車いす又は介助用標準型車いすに限る。
  2. 車いす付属品:クッション、電動補助装置等であって、車いすと一体的に使用されるものに限る。
  3. 特殊寝台:サイドレールが取り付けてあるもの又は取り付けることが可能なものであって、次に掲げる機能のいずれかを有するもの
    一 背部又は脚部の傾斜角度が調整できる機能
    二 床板の高さが無段階に調整できる機能
  4. 特殊寝台付属品:マットレス、サイドレール等であって、特殊寝台と一体的に使用されるものに限る。
  5. 床ずれ防止用具:次のいずれかに該当するものに限る。
    一 送風装置又は空気圧調整装置を備えた空気マット
    二 水等によって減圧による体圧分散効果をもつ全身用のマット
  6. 体位変換器:空気パッド等を身体の下に挿入することにより、居宅要介護者等の体位を用意に変換できる機能を有するものに限り、体位の保持のみを目的とするものを除く。
  7. 手すり:取付けに際し工事を伴わないものに限る。
  8. スロープ:段差解消のためのものであって、取付けに際し工事を伴わないものに限る。
  9. 歩行器:歩行が困難な者の歩行機能を補う機能を有し、移動時に体重を支える構造を有するものであって、次のいずれかに該当するものに限る。
    一 車輪を有するものにあっては、体の前及び左右を囲む把手等を有するもの
    二 四脚を有するものにあっては、上肢で保持して移動させることが可能なもの
  10. 歩行補助つえ:松葉づえ、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホームクラッチ及び多点杖に限る。
  11. 認知症老人 徘徊感知機器:介護保険法第五条の二第一項に規定する認知症である老人が屋外へ出ようとした時等、センサーにより感知し、家族、隣人等へ通報するもの
  12. 移動用リフト(つり具の部分を除く):床走行式、固定式又は据置式であり、かつ、身体をつり上げ又は体重を支える構造を有するものであって、その構造により、自力での移動が困難な者の移動を補助する機能を有するもの(取付けに住宅の改修を伴うものを除く)
  13. 自動排泄処理装置:尿又は便が自動的に吸引されるものであり、かつ、尿や便の経路となる部分を分割することが可能な構造を有するものであって、居宅要介護者等又はその介護を行う者が容易に使用できるもの。

このように、介護ベッドに関しては「貸与」に対して介護保険の対象となることがわかります。

これに対して、介護保険法第8条第13項には「特定福祉用具販売」について、以下のように定められています。

「特定福祉用具販売」とは、居宅要介護者について福祉用具のうち入浴又は排せつの用に供するものその他の厚生労働大臣が定めるもの(以下「特定福祉用具」という)の政令で定めるところにより行われる販売をいう。

具体的には「厚生労働大臣が定める特定福祉用具販売に係る特定福祉用具の種目及び厚生労働大臣が定める特定介護予防福祉用具販売に係る特定介護予防福祉用具の種目」に以下の通り定められています。

  1. 腰掛便座:次のいずれかに該当するものに限る。
    一 和式便器の上に置いて腰掛式に変換するもの
    二 洋式便器の上に置いて高さを補うもの
    三 電動式又はスプリング式で便座から立ち上がる際に補助できる機能を有しているもの
    四 便座、バケツ等からなり、移動可能である便器(居室において利用可能であるものに限る)
  2. 自動排泄処理装置の交換可能部品
  3. 入浴補助用具:座位の保持、浴槽への出入り等の入浴に際しての補助を目的とする用具であって次のいずれかに該当するものに限る。
    一 入浴用椅子
    二 浴槽用手すり
    三 浴槽内椅子
    四 入浴台:浴槽の縁にかけて利用する台であって、浴槽への出入りのためのもの
    五 浴室内すのこ
    六 浴槽内すのこ
    七 入浴用介助ベルト
  4. 簡易浴槽:空気式又は折りたたみ式等で容易に移動できるものであって、取水又は排水のために工事を伴わないもの
  5. 移動用リフトのつり具の部分

このように、福祉用具のうち、利用者の肌に直接触れる用具は使い回しがきかないためレンタルに向かないとされ、購入費が補助される介護保険の対象となります。

レンタルと異なり、要介護度による制限はありませんが、購入するには事前にケアマネジャーへの相談が必要です。

以上より、選択肢③は誤りと判断できます。

④ 住宅型有料老人ホーム

介護保険施設(介護保険が適用される施設)には「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」の4つがあり、必要とする介護の内容により入所できる施設が違います。

特別養護老人ホームは、常に介護が必要で、自宅での介護が困難な方が対象となります(入居基準は要介護度3以上となっています)。

受けられるサービスは、日常生活における食事や、入浴、排せつ、機能訓練や健康管理などの介助となります。

介護老人保健施設は、病院での治療を終え病状が安定した人が、リハビリに重点を置き在宅復帰を目的とする施設です(要介護1以上が対象)。

受けられるサービスは、医学的な管理の元、介護や看護、リハビリと日常生活の介護となります。

在宅復帰を目的とする施設なので、特養のように終身利用を前提として生活することはできません。

介護療養型医療施設は、要介護1以上が対象で、治療を終え病状が安定しているものの、引き続き長期間療養を必要とする人が入所する医療施設です。

受けられるサービスは、介護体制が整った医療施設で医療や看護及び日常生活の介護となります。

介護医療院とは、要介護1以上が対象で、要介護者に対し「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する医療施設です。

主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設となります。

このように、本選択肢の「住宅型有料老人ホーム」は介護保険施設に含まれていないことがわかりますね。

住宅型有料老人ホームは、高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)第5条で以下の通り定められています。

高齢者向けの賃貸住宅又は老人福祉法第二十九条第一項に規定する有料老人ホームであって居住の用に供する専用部分を有するものに高齢者を入居させ、状況把握サービス(入居者の心身の状況を把握し、その状況に応じた一時的な便宜を供与するサービスをいう)、生活相談サービス(入居者が日常生活を支障なく営むことができるようにするために入居者からの相談に応じ必要な助言を行うサービスをいう)その他の高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービスを提供する事業を行う者は、サービス付き高齢者向け住宅事業に係る賃貸住宅又は有料老人ホームを構成する建築物ごとに、都道府県知事の登録を受けることができる。

単なる有料老人ホームならば老人福祉法になるのですが、住宅型になるとこちらの規定が根拠となると考えられます。

以上より、選択肢④は誤りと判断できます。

⑤ 通所リハビリテーション

介護保険法で定められている介護保険適用のサービスとは、要介護・支援状態にある「65歳以上の高齢者」と「40歳から64歳までの特定疾患の患者」が、介護保険料と国・自治体からの財源によって、1割の自己負担で受けられる介護サービスです(負担額は収入によって1割~3割で変動)。

介護保険法第8条には以下のように定められております。

この法律において「居宅サービス」とは、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与及び特定福祉用具販売をいい、「居宅サービス事業」とは、居宅サービスを行う事業をいう。

この中に通所リハビリテーションが含まれていることがわかりますね。

そして通所リハビリテーションとは「居宅要介護者について、介護老人保健施設、介護医療院、病院、診療所その他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、当該施設において、その心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われる理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーション」のことを指します(介護保険法第8条第8項)。

つまり、通所リハビリテーションは、介護老人保健施設や、病院、診療所などの施設に通い、リハビリを受けるサービスです。

機能回復訓練を積極的にすることは自立した生活につながりますし、要支援の場合でも介護予防として機能維持を目的に活用できます。

この「居宅サービス」以外にも、地域密着型サービス、施設サービス、介護予防サービス、地域密着型介護予防サービスなどが定められております。

以上より、選択肢⑤が正しいと判断できます。

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