公認心理師 2020-121

発達障害者支援法に関する問題です。

内容は定義や支援対象など、基本的な項目になっていますから、間違いなく押さえておきたいところですね。

問121 発達障害者支援法について、不適切なものを1つ選べ。
① 発達支援には、医療的援助も含まれる。
② 支援対象には、18歳未満の者も含まれる。
③ 支援対象には、発達障害者の家族も含まれる。
④ 国の責務の他に、地方公共団体の責務も定められている。
⑤ 支援は、個々の発達障害者の性別、年齢及び障害の状態に関係なく、一律に行う。

解答のポイント

発達障害者支援法に規定されている支援内容、支援対象について把握している。

選択肢の解説

① 発達支援には、医療的援助も含まれる。
② 支援対象には、18歳未満の者も含まれる。

こちらは第2条の「定義」に記載があります。


  1. この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
  2. この法律において「発達障害者」とは、発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。
  3. この法律において「社会的障壁」とは、発達障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

こうした各法律に定められている「定義」は、とても大切なものですから、きっちりと覚えておきたいところですね。

わかっているでしょうが、第1号の自閉症およびアスペルガー症候群は「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」に、広汎性発達障害は「神経発達症群/神経発達障害群」に、かつて広汎性発達障害に含まれなかった注意欠陥多動性障害は「神経発達症群/神経発達障害群」の1カテゴリーとしてDSM-5では変更されています。

法律と医療の表記が合致していないので、その辺はDSMの改定前・後を把握し、自分で読み替えて読み進める必要があります。

そのように考えると、「最新の版」だけを覚えておけばよいのではないことがわかるはずですね。

さて、選択肢の解説に戻りましょう。

上記の第4号にある通り、本法における「発達支援」とは、「その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う個々の発達障害者の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいう」を指します。

こちらは選択肢①の内容が適切であることを示していますね。

また、上記第2号にある通り、この法律において「発達障害者」とは、発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものを指すことが明示されています。

すなわち、本法において「発達障害者」は18歳未満の者も含んでいることがわかりますし、「発達障害児」に焦点を当てた支援内容について記載した条項も存在します(第6条~第9条)。

こちらは選択肢②の内容が適切であることを示していますね。

以上より、選択肢①および選択肢②は適切と判断でき、除外することになります。

③ 支援対象には、発達障害者の家族も含まれる。

こちらは第13条の「発達障害者の家族等への支援」に以下のように定められております。


都道府県及び市町村は、発達障害者の家族その他の関係者が適切な対応をすることができるようにすること等のため、児童相談所等関係機関と連携を図りつつ、発達障害者の家族その他の関係者に対し、相談、情報の提供及び助言、発達障害者の家族が互いに支え合うための活動の支援その他の支援を適切に行うよう努めなければならない。


このように発達障害者の家族も支援の対象に含まれていることがわかります。

他にも第14条や第19条の2にも家族に対する支援の規定がありますね。

以上より、選択肢③は適切と判断でき、除外することになります。

④ 国の責務の他に、地方公共団体の責務も定められている。

こちらは第3条の「国及び地方公共団体の責務」に以下のように定められております。


  1. 国及び地方公共団体は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることに鑑み、前条の基本理念にのっとり、発達障害の早期発見のため必要な措置を講じるものとする。
  2. 国及び地方公共団体は、基本理念にのっとり、発達障害児に対し、発達障害の症状の発現後できるだけ早期に、その者の状況に応じて適切に、就学前の発達支援、学校における発達支援その他の発達支援が行われるとともに、発達障害者に対する就労、地域における生活等に関する支援及び発達障害者の家族その他の関係者に対する支援が行われるよう、必要な措置を講じるものとする。
  3. 国及び地方公共団体は、発達障害者及びその家族その他の関係者からの各種の相談に対し、個々の発達障害者の特性に配慮しつつ総合的に応ずることができるようにするため、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の有機的連携の下に必要な相談体制の整備を行うものとする。
  4. 発達障害者の支援等の施策が講じられるに当たっては、発達障害者及び発達障害児の保護者の意思ができる限り尊重されなければならないものとする。
  5. 国及び地方公共団体は、発達障害者の支援等の施策を講じるに当たっては、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を担当する部局の相互の緊密な連携を確保するとともに、発達障害者が被害を受けること等を防止するため、これらの部局と消費生活、警察等に関する業務を担当する部局その他の関係機関との必要な協力体制の整備を行うものとする。

つまり、早期発見、適切は支援、相談体制の整備、当人や保護者の意思を尊重した施策、各所との協力体制の整備、ということが国や地方公共団体の責務ということになりますね。

このように、本法には国の責務の他に、地方公共団体の責務も定められています。

以上より、選択肢④は適切と判断でき、除外することになります。

⑤ 支援は、個々の発達障害者の性別、年齢及び障害の状態に関係なく、一律に行う。

本選択肢は、その内容を読んだだけで不適切であることがわかりますね。

状態像、年齢、性別、環境、その他さまざまな要因によって、多様な臨床像を示す発達障害者の支援を「一律に行う」ということは、適切な支援を行わないという宣言に等しいのであり得ませんね。

詳しい条項を確認していきましょう。

こちらについては第2条の2の「基本理念」に定められています。


  1. 発達障害者の支援は、全ての発達障害者が社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないことを旨として、行われなければならない。
  2. 発達障害者の支援は、社会的障壁の除去に資することを旨として、行われなければならない。
  3. 発達障害者の支援は、個々の発達障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に、その意思決定の支援に配慮しつつ、切れ目なく行われなければならない。

上記の第3号が、本選択肢の解説に該当します。

すなわち、発達障害者の支援は「個々の発達障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて」行われるものであり、決して本選択肢にあるような「性別、年齢及び障害の状態に関係なく、一律に」行われるものではありませんね。

以上より、選択肢⑤は不適切と判断でき、こちらを選択することになります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です