公認心理師 2018-39

障害者の雇用の促進等に関する法律にまつわる設問です。

公認心理師の問題でよくみられるのが、「○○法」に関する問題の場合、それと関連して各省庁が出している通知や指針なども把握している必要があるということです。
通知や指針なども法律の範囲と考えておいた方が、試験を解くうえでは良さそうですね。

解答のポイント

障害者の雇用の促進等に関する法律の差別の禁止や合理的配慮について把握していること。
厚生労働省が出している指針や事例集などに目を通していること。

選択肢の解説

『①障害者の法定雇用率の算定基礎の対象には、精神障害者が含まれている』

法第69条に「雇用義務等及び納付金関係業務に係る規定の適用に関する特例」が示されています。
少々長いので区切りながら。

「精神障害者のうち精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第四十五条第二項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者(第七十三条、次節及び第七十九条を除き、以下「精神障害者」という)である職員及び精神障害者である労働者については」
精神保健福祉法の規定する精神保健福祉手帳を持っている人を「精神障害者」と呼び、その人を労働者とする場合は…

「この条から第七十二条までに定めるところにより、身体障害者又は知的障害者である職員及び身体障害者又は知的障害者である労働者に関する前二節(第三十七条、第三十八条第三項から第五項まで、第四十三条第二項から第六項まで、第四十四条第三項、第四十五条の二第四項から第六項まで(第四十五条の三第六項、第四十六条第二項、第五十条第四項、第五十四条第五項及び第五十五条第三項において準用する場合を含む。)、第四十八条、第四十九条第一項第二号から第九号まで、第五十条第二項並びに第五十四条第二項及び第三項を除く。)の規定を適用するものとする」
大雑把にいえば、第37条~第48条までは「対象障害者の雇用義務等」について記載されています。つまり、精神障害者にもこの規定を適用するとしています

そして、第70条の「雇用義務等に係る規定の精神障害者である職員についての適用に関する特例」には以下の通り記載されています。
「第三十八条第一項に規定する場合において、当該機関に精神障害者である職員が勤務するときにおける同項の規定の適用については、同項の計画の作成前に、当該機関の任命権者が身体障害者又は知的障害者である職員以外の職員に替えて当該精神障害者である職員の数に相当する数(精神障害者である短時間勤務職員にあつては、その一人をもつて、厚生労働省令で定める数に相当する数)の身体障害者又は知的障害者である職員を採用したものとみなす

そして2018年の法律改正により、法定雇用率の算定基礎に精神障害者を加えることとなりました。
こちらを参照にしてください。
よって、選択肢①は正しいので、除外することができます。

2018年の試験に2018年の改正が入ってきたわけですね。

『②募集、採用、賃金、教育訓練及び福利厚生施設の利用について、障害者であることを理由とする差別が禁止されている』

2016年の障害者権利条約の批准や関係法制の変化により、障害者差別禁止規定や合理的配慮の概念が導入されました。
法第34条、第35条に記載があります。

まず法第34条には以下の通り記載があります。
「事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない

それと第35条ですね。
「事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない

つまり、第34条で募集、採用についてが、第35条で賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用についてが明記されています。
以上のように、選択肢②は正しいため、除外できます。

『③事業主は採用試験の合理的配慮として、例えば視覚障害者に対して点字や音声などで特性に応じた必要な措置を行う』

この点については法第36条の2に記載があります。
「事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となつている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」

そして選択肢後半の「視覚障碍者に対して点字や音声などで…」という部分に関しては法律を離れ、内閣府の「合理的配慮等具体例データ集(合理的配慮サーチ)」に示されています。
視覚障害者の部分だけを抜き出すと以下の通りです。

  • 驚かせることのないように正面から「私は○○ですが何かお手伝いしましょうか?」と声をかける
  • 「こちら」「あちら」などの指示語ではなく「30センチ右」「2歩前」というように位置関係を分かりやすく伝える
  • 資料を拡大文字や点字によって作成したり、資料の内容を読み上げて伝えたりする
  • パソコンなどで読上機能を使えるように資料のテキスト形式データを提供する
  • 本人の意思を十分に確認しながら書類の記入やタッチパネルの操作などを代行する

上記に明示されていますね。
よって、選択肢③は正しいと言え、除外することができます。

『④障害者のみを対象とする求人など、積極的な差別是正措置として障害者を有利に取り扱うことは、禁止される差別に該当する』

こちらについては、厚生労働省が出している法律に関する解釈通知である「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律の施行について」の中に示されています。
上記の中で、「法違反とならない場合(差別禁止指針第3の 14 関係)」が示されております。
「差別禁止指針14イは、障害者を障害者でない者と比較して有利に取り扱うことは差別ではなく、法違反とならないことを明確にするために規定していること。
例えば、障害者のみを対象とする求人(いわゆる障害者専用求人)は、障害者を有利に取り扱うものであり、法違反とならないこと

上記にある「差別禁止指針」の中には、上記のもととなる記載があります。
以上のように、選択肢④の内容は誤りであり、こちらを選択することが求められます。

『⑤事業主が必要な注意を払っても被雇用者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反を問われない』

厚生労働省が出している「合理的配慮指針」に、こちらに関する記載があります。
合理的配慮指針とは、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」のことです。

上記によると、合理的配慮の基本的考え方として以下が示されています。

  1. 合理的配慮は、個々の事情を有する障害者と事業主との相互理解の中で提供されるべき性質のものであること。
  2. 合理的配慮の提供は事業主の義務であるが、採用後の合理的配慮について、事業主が必要な注意を払ってもその雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反を問われないこと
  3. 過重な負担にならない範囲で、職場において支障となっている事情等を改善する合理的配慮に係る措置が複数あるとき、事業主が、障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、より提供しやすい措置を講ずることは差し支えないこと。
    また、障害者が希望する合理的配慮に係る措置が過重な負担であるとき、事業主は、当該障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で合理的配慮に係る措置を講ずること。
  4. 合理的配慮の提供が円滑になされるようにするという観点を踏まえ、障害者も共に働く一人の労働者であるとの認識の下、事業主や同じ職場で働く者が障害の特性に関する正しい知識の取得や理解を深めることが重要であること。

選択肢の内容は、上記2に示されております。

では、どうすれば「必要な注意」を払ったことになるのかについては、「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関する Q&A【第二版】」に示されております。
これによると以下の通りです。
全従業員への一斉メール送信、書類の配布、社内報等の画一的な手段により、合理的配慮の提供の申出を呼びかけている場合には、「必要な注意」を払っているものと考えられます

以上のように、選択肢⑤の内容は正しいと言え、除外できます。

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