公認心理師 2022-98

タイプCパーソナリティに関する問題です。

過去問で一度タイプCについては触れられていますが、タイプAやタイプDとの弁別も重要になってきます。

問98 L.Temoshok と B.H.Foxが提唱し、がん患者に多いとされるタイプCパーソナリティについて、最も適切なものを1つ選べ。
① 競争を好む。
② 協力的である。
③ 攻撃的である。
④ 自己主張が強い。
⑤ 不安を感じやすい。

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解答のポイント

タイプA行動パターン、タイプB行動パターン、タイプC行動パターン、タイプDパーソナリティについてそれぞれ概要を説明できる。

選択肢の解説

① 競争を好む。
③ 攻撃的である。
④ 自己主張が強い。

Friedman&Rosenmanは、その臨床的経験から冠動脈心疾患に特有と思われる行動パターンを「タイプA」と名付け、これと対照的となるおとなしいパターンを「タイプB」としました。

タイプAの特徴として、競争心がきわめて強く、多くのいろいろなことに関係し、常に時間に追い立てられている、漠然とした敵意などが挙げられます。

タイプAの行動傾向のうち、基本的で重要なものは以下の通りです。

  1. 時間的切迫感:時間に追われながらの多方面にわたる活動。
  2. 性急さ:身体的精神的活動速度を常に速めようとする習癖。
  3. 達成努力:自分が定めた目標を達成しようとする持続的な強い欲求。
  4. 野心:永続的な功名心。
  5. 競争:競争を好み、追求する傾向。
  6. 敵意性:身体的精神的な著しい過敏性を伴う。

ただし、タイプAと冠疾患リスクについて否定的な報告が相次ぐ中で、タイプAの構成成分としての性格傾向、とりわけ「敵意」と「怒り」に関心が向けられるようになり、現在ではそれらの性格因子と冠疾患リスクの関連が支持されています。

Friedmanら(1994)は認知療法的技法と行動療法的技法を組み合わせることで、タイプA行動を減少させることができることを証明しました。

過去に少なくとも1回心臓発作を経験したことがある1000人以上の被験者の治療群に対して、以下のようなアプローチを行いました。

  • 普段なら時間をかけてじっくり考えない事柄をじっくり考える機会を持たせる。
  • 他人を観察してもらう。
  • 見知らぬ人と会話を交わす機会を持つ。
  • 人に爆発することなく自分の感情を表現できるように、また特定の行動を変えるように助言を受ける。

更に、治療者はタイプA型行動の背景にある基本的な信念(成功か否かは、仕事量による等)を再評価できるよう援助しました。

これらによって参加者は、家庭環境と仕事環境のストレスを減らす方法を見つけていきました。

この研究では、もう一度心臓発作が起こるか否かを重要な従属変数と見立て、縦断的に経過を追っていきました。

その結果、4年半の間、治療を受けた群の心臓発作の再発率は、統制群(特に生活に修正を加えられていない)のほぼ半分であったことがわかりました。

このことは、明らかにタイプA行動を修正することを学習することは、彼らの健康に有益であったことを示しています。

これらを踏まえると、ここで挙げた選択肢の「競争を好む」「攻撃的である」はタイプA行動パターンの特徴を指していると考えることができます。

何となくのニュアンスとして選択肢④の「自己主張が強い」もタイプAに入りそうな印象を受けますので、こちらに含めておきました(もしかすると、タイプC行動パターンの逆張りかもしれません)。

以上より、選択肢①、選択肢③および選択肢④は不適切と判断できます。

② 協力的である。

タイプC行動パターンとは、他者評価懸念のために感情抑制をする行動パターンであり、1980年代以降、Grossarth-Maticek&Eysenckが肺がんを中心とするがん親和性パーソナリティとして、また、Temoshok&Foxが悪性黒色腫患者に中心に見られる行動パターンとして実証研究を続けられたものです(タイプCはCancerのCです)。

怒りをはじめとしたネガティブな感情を表出せず、経験もしないということや忍耐強く控え目で、周囲の人々に対して協力的で、権威に対して従順であるという、他者の要求を満たすためには極端に自己犠牲的になり得るなどの特徴を示す行動パターンのことを指します。

そのため、表面的にはいわゆる「良い人」に見えるのであるが、何らかの葛藤やストレスを抱えている可能性も考えられています。

こうした特徴を踏まえれば、タイプC行動パターンでは他者評価を懸念し、周囲に対してネガティブな表現をせずに協力的に振る舞うような行動パターンを示すことがわかります。

ですから、選択肢②の「協力的である」というのはタイプC行動パターンのものであることがわかりますし、また、選択肢④の「自己主張が強い」はこのタイプC行動パターンの逆の内容を示していることがわかります(なお、タイプCはタイプAの逆タイプだとされているので、やはり「自己主張が強い」はタイプAの特徴と見て良いと思います)。

なお、選択肢②の「協力的である」というのがタイプB行動パターンと近く感じる人もいるかもしれませんが、タイプBは基本的にのんびりとしており、目立たず、被攻撃な行動パターンを有しており、穏やか、怒らない、自分のペースで無理をしないように遂行するなどの性格であるとされています。

この「自分のペースで無理をしない」というのが、選択肢②の「協力的である」とは異なる特徴であると言えますから、やはり「協力的である」はタイプC行動パターンを示していると見るのが妥当です。

よって、選択肢②が適切と判断できます。

⑤ 不安を感じやすい。

こちらはタイプAでもタイプBでもタイプCでもなく、タイプDパーソナリティを指していると考えられます。

こちらは感情的悩みを抑える傾向のことで、感情面で悩みが多く、否定的に物事を考える傾向があるにも関わらず、社会面で他者と距離を置いて悩みを打ち明けようとしない性格を指します。

「否定的感情や考えを抱きやすい傾向」と「他者からの否認や非難などを恐れるために否定的感情を表現できない傾向」を併せ持つ傾向とされています。

この否定的感情の中身としては、不安・抑うつ・怒り・攻撃性・敵意などであり、自己に対して消極的な考えをもつ傾向とされています(こちらの論文など)。

タイプDパーソナリティはオランダの精神医学者Denolletによって定義され、タイプA行動パターンと同様に心疾患との関連が強いことが奉告されました。

その後、特異的な感情特性や性格が心疾患リスクになることが明らかになっており、タイプD行動パターンではなくタイプDパーソナリティと呼ぶようになったので注意が必要です。

年齢やアルコール、喫煙、肥満、教育歴、社会経済的地位、同居人数を統計学的に調整し解析した結果、タイプDパーソナリティのある人では、心理的苦痛を感じるリスクは4~5倍、自分で不健康だと感じるリスクが2倍に上昇することが示されています。

特に、65~74歳でタイプDパーソナリティのある人の場合、気分障害などの精神的疾患に関する重篤な心理的苦痛へのリスクは9.92倍と高くなり、より注意が必要だということが判明しました。

上記の通り、タイプDパーソナリティは否定的感情(不安・抑うつ・怒り・攻撃性・敵意など)を生じさせやすく、その一方で他者からの否認や非難などを恐れるためにそうした感情を表現できない傾向を指します。

よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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