公認心理師 2022-91

Rappが提唱したストレングス・モデルに関する問題です。

過去に一度出題されたことがある内容になっていますね。

問91 C. A. Rappが提唱したストレングス・モデルの説明として、最も適切なものを1つ選べ。
① 強化子を積極的に活用する。
② 地域の資源を優先的に活用する。
③ クライエントに支援計画の遵守を指示する。
④ クライエントの症状や障害に焦点を当てる。
⑤ 症状の消失をリカバリーの到達目標にする。

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解答のポイント

ストレングス・モデルの原則を把握している。

選択肢の解説

① 強化子を積極的に活用する。
② 地域の資源を優先的に活用する。
③ クライエントに支援計画の遵守を指示する。
④ クライエントの症状や障害に焦点を当てる。
⑤ 症状の消失をリカバリーの到達目標にする。

カンザス大学のRappらは、エンパワーメントモデルをベースに、1970年代から、ケースマネジメント領域において新たな実践モデルを生み出しました。

それが「ストレングスモデル」であり、その要点は、「リカバリー(その人の人生をとりもどすこと)」のために、「アスピレーション(熱望、夢、希望)」に重点を置き、「個人の強み(過去、現在、未来のすべての実験体験を含む)」と「地域の強み」を活用し、新たな生活設計や具体化を図ろうとするものです。

「ストレングスモデル」では以下の原則が掲げられています。

  1. 人々はリカバリーし、生活を改善し高めることができる
  2. 欠陥ではなく、個人のストレングス(強みや長所)に焦点を当てる
  3. 地域を資源のオアシスとして捉える
  4. 利用者こそが支援過程の監督者である
  5. ケースマネージャーと利用者の関係性が根本であり本質である
  6. 支援者の仕事の主要な場所は地域である

このように、ストレングス・モデルでは、疾患や障害に焦点を当てるのではなく、ストレングス、つまりその人の健康的な部分、可能性に着目するわけです。

この6原則のうち、特に原則2が大きな意味を持ちます。

すなわち、専ら病気や障害の克服に焦点を当ててきた「伝統的な医学モデルや社会福祉モデル」から、ユーザーのアスピレーションや潜在能力を最大限に尊重し、その実現のために医療福祉や福祉サービスなどが貢献するという「リカバリーモデル」への転換の必要性と実効性を提示しているからです。

これらを踏まえて、まず真っ先に外すことができるのは選択肢①の「強化子を積極的に活用する」になります。

ある行動を行って望ましい結果が伴えば、その行動の頻度は高まりますが、これを「強化」と言い、その際の望ましい結果を「強化子」と呼びます(強化の定義は「ある行動が、行動の生起に後続する結果事象によって強められるプロセス」になりますね)。

こうした強化子を積極的に活用するのは、応用行動分析が代表になります。

応用行動分析は、オペラント条件づけの原理を応用し、人間の問題行動の変容を目的とした心理療法であり、ABAや行動修正学とも呼ばれ、現在の認知行動療法の中核的な理論体系の一つになっています。

強化子を積極的に活用するものの代表は応用行動分析ですが、これとストレングスモデルとは深い関連があるとは言えませんね(もちろん、応用行動分析自体は様々な技法の中核、言い換えればあくまでも技術の延長線上にあるものなので、それを扱う人の「思想」「考え方」の中にストレングスモデルが存在していることはあり得ます)。

続いて選択肢②の「地域の資源を優先的に活用する」ですが、こちらは上記のストレングスモデルの原則3および原則6に掲げられている内容と合致しています。

これらの原則を読んでもらえたらわかるように、「ストレングス」は個人がもっている能力だけに限っていません。

ストレングスモデルは、「個人の強み(過去、現在、未来のすべての実験体験を含む)」と「地域の強み」を活用し、新たな生活設計や具体化を図ろうとするものです。

すなわち、その人が生活している地域などの環境も「ストレングス」であると考えるのです。

そうした「ストレングス」と個人がつながるようにアプローチしていくのも、ストレングスモデルの特徴になりますね。

選択肢③~選択肢⑤の内容は、ストレングスモデルの内容と反するものになっています。

選択肢③の「クライエントに支援計画の遵守を指示する」ですが、これは上記の原則4と反するものになっています。

医学モデルの場合には、障害や病気を「治してもらう対象」であった人々が、このストレングスモデルの考え方では「自ら考え、自ら決定していく」ということになり、支援を決めるのはその人自身であるということです。

選択肢④の「クライエントの症状や障害に焦点を当てる」については、原則2の「欠陥ではなく、個人のストレングス(強みや長所)に焦点を当てる」と反するものになっていますね。

選択肢④の内容は医学モデルに基づいた考え方ですから、障害や問題はあったとしても、それとは別にその人に存在している健康な部分や可能性に着目するストレングスモデルとは異なるものになりますね。

選択肢⑤の「症状の消失をリカバリーの到達目標にする」についても、症状の消失を目標にしているのは医学モデルの考え方が濃いと言えます(もちろん、それも重要ですね)。

「個人のストレングス(強みや長所)に焦点を当てる」のがストレングスモデルの基本的な考え方ですから、症状というその人の問題に焦点を当てるという考え方とは異なると言えます。

以上より、選択肢②が適切と判断でき、選択肢①、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断できます。

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