公認心理師 2022-105

難病法における「指定難病」に関する問題です。

ほぼ定義に関する問題と言えますね。

問105 難病の患者に対する医療等に関する法律〈難病法〉による「指定難病」について、正しいものを1つ選べ。
① 治療法が確立している。
② 発病の機構が明らかではない。
③ 指定難病とされた疾患数は約30である。
④ 医療費助成における自己負担額は一律である。
⑤ 客観的な診断基準又はそれに準ずるものが定まっていない。

関連する過去問

なし

解答のポイント

難病の定義等を把握している。

選択肢の解説

① 治療法が確立している。
② 発病の機構が明らかではない。
③ 指定難病とされた疾患数は約30である。
⑤ 客観的な診断基準又はそれに準ずるものが定まっていない。

本選択肢と関連のある難病法の条項を見ていきましょう。


第一条(目的) この法律は、難病(発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものをいう)の患者に対する医療その他難病に関する施策(以下「難病の患者に対する医療等」という)に関し必要な事項を定めることにより、難病の患者に対する良質かつ適切な医療の確保及び難病の患者の療養生活の質の維持向上を図り、もって国民保健の向上を図ることを目的とする。


このように、難病法における難病は「発病の機構が明らかでない」ことに加えて「治療方法が確立していない」ことが要件となっておりますね。

続いて、指定難病については難病法第5条に規定があります。


第五条(特定医療費の支給) 都道府県は、支給認定(第七条第一項に規定する支給認定をいう。以下この条及び次条において同じ。)を受けた指定難病(難病のうち、当該難病の患者数が本邦において厚生労働省令で定める人数に達せず、かつ、当該難病の診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっていることその他の厚生労働省令で定める要件を満たすものであって、当該難病の患者の置かれている状況からみて当該難病の患者に対する良質かつ適切な医療の確保を図る必要性が高いものとして、厚生労働大臣が厚生科学審議会の意見を聴いて指定するものをいう)の患者が、支給認定の有効期間(第九条に規定する支給認定の有効期間をいう。第七条第四項において同じ。)内において、特定医療(支給認定を受けた指定難病の患者に対し、都道府県知事が指定する医療機関(以下「指定医療機関」という。)が行う医療であって、厚生労働省令で定めるものをいう。以下同じ。)のうち、同条第三項の規定により定められた指定医療機関から受けるものであって当該支給認定に係る指定難病に係るもの(以下「指定特定医療」という。)を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該支給認定を受けた指定難病の患者又はその保護者(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条に規定する保護者をいう。以下同じ。)に対し、当該指定特定医療に要した費用について、特定医療費を支給する。


そして、この指定難病ですが、厚生労働省のページ一覧のエクセルデータがあります(2022年9月24日現在です)。

こちらを見る限り、現在338の病気が指定難病とされていることがわかりますね(こちらの資料がわかりやすいです)。

なお、検索には難病情報センターのサイトが役立ちます。

上記の条項において、指定難病とは「難病のうち、当該難病の患者数が本邦において厚生労働省令で定める人数に達せず、かつ、当該難病の診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっていることその他の厚生労働省令で定める要件を満たすもの」とされています。

そもそも難病とは「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病」であり「当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるもの」になり、これが難病の定義ということになります。

そして、指定難病は「当該難病の患者数が本邦において厚生労働省令で定める人数に達していない=人口の概ね1/1000(0.1%)程度に該当する数と厚生労働省令において想定している」ことと「客観的な診断基準(またそれに準ずるもの)が確立している」ということが要件になっております。

これは当然のことであって、客観的な診断基準がないと医療費助成などの対応がしづらい形になってしまいますね。

これらを総合すれば、以下の通りになります。

難病とは、①発病の機構が明らかでなく、②治療方法が確立していない希少な疾病、③当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とする、ということになります。

そして、指定難病とは、上記の難病のうち、①当該難病の患者数が本邦において厚生労働省令で定める人数に達していない=人口の概ね1/1000(0.1%)程度に該当する数と厚生労働省令において想定している、②客観的な診断基準(またそれに準ずるもの)が確立しているものを指します。

指定難病の定義の前提には、難病の定義がありますから、指定難病の定義にも難病の定義(①発病の機構が明らかでなく、②治療方法が確立していない希少な疾病、③当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とする)が含まれることになりますね。

以上を踏まえれば、選択肢①、選択肢③および選択肢⑤は誤りと判断でき、選択肢②が正しいと判断できます。

④ 医療費助成における自己負担額は一律である。

「難病法」による医療費助成の対象となるのは、原則として「指定難病」と診断され、「重症度分類等」に照らして病状の程度が一定程度以上の場合です。

申請手続きについては以下の通りです。

  1. 都道府県・指定都市における事務手続き
    ・臨床調査個人票をもとに、診断基準に照らして、指定難病であることを確認
    ・病状の程度が、一定程度であることを重症度分類等に照らして確認
    ⇒以上2点が確認できた場合には認定
  2. 指定難病審査会における手続き
    ・上記2点が確認できなかった場合には都道府県・指定都市に設置された指定難病審査会での審査が行われます。
    ⇒指定難病審査会で上記2点が確認された場合には認定
    ⇒指定難病審査会の審査の結果、支給要件に該当しないと判断された方には、認定しない旨を通知

申請方法については、こちらの図がわかりやすいと思います。

特定医療費の支給については、第5条第2項に述べられています。


2 特定医療費の額は、一月につき、第一号に掲げる額(当該指定特定医療に食事療養(健康保険法(大正十一年法律第七十号)第六十三条第二項第一号に規定する食事療養をいう。以下この項において同じ。)が含まれるときは、当該額及び第二号に掲げる額の合算額、当該指定特定医療に生活療養(同条第二項第二号に規定する生活療養をいう。以下この項において同じ。)が含まれるときは、当該額及び第三号に掲げる額の合算額)とする。
一 同一の月に受けた指定特定医療(食事療養及び生活療養を除く。)につき健康保険の療養に要する費用の額の算定方法の例により算定した額から、当該支給認定を受けた指定難病の患者又はその保護者の家計の負担能力、当該支給認定を受けた指定難病の患者の治療状況、当該支給認定を受けた指定難病の患者又はその保護者と同一の世帯に属する他の支給認定を受けた指定難病の患者及び児童福祉法第十九条の三第三項に規定する医療費支給認定に係る同法第六条の二第一項に規定する小児慢性特定疾病児童等の数その他の事情をしん酌して政令で定める額(当該政令で定める額が当該算定した額の百分の二十(当該支給認定を受けた指定難病の患者が高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第五十条及び第五十一条の規定による後期高齢者医療の被保険者であって、同法第六十七条第一項第一号に掲げる場合に該当する場合その他政令で定める場合にあっては、百分の十)に相当する額を超えるときは、当該相当する額)を控除して得た額
二 当該指定特定医療(食事療養に限る。)につき健康保険の療養に要する費用の額の算定方法の例により算定した額から、健康保険法第八十五条第二項に規定する食事療養標準負担額、支給認定を受けた指定難病の患者又はその保護者の所得の状況その他の事情を勘案して厚生労働大臣が定める額を控除した額
三 当該指定特定医療(生活療養に限る。)につき健康保険の療養に要する費用の額の算定方法の例により算定した額から、健康保険法第八十五条の二第二項に規定する生活療養標準負担額、支給認定を受けた指定難病の患者又はその保護者の所得の状況その他の事情を勘案して厚生労働大臣が定める額を控除した額
3 前項に規定する療養に要する費用の額の算定方法の例によることができないとき、及びこれによることを適当としないときの特定医療に要する費用の額の算定方法は、厚生労働大臣の定めるところによる。


でもこちらの条項を読んでもさっぱりわかりにくいと思いますから、医療費助成の自己負担額については、法的条項よりも以下のような表を参考にした方がわかりやすいと思います。

医療費助成における自己負担額については、上記のように所得によって変わってくることになります。

また、以下の自己負担の考え方も把握しておくと良いでしょう。

いろいろ複雑ですが、手続きの中で把握することになるのが一般的ではないかなと思っています。

以上より、選択肢④は誤りと判断できます。

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