公認心理師 2020-95

災害時の保健医療支援体制に関する問題です。

DPATやDMATなどは過去問やブループリントでも出題されていますから、その仕組みについてきちんと把握していることが求められますね。

「どこが出している資格か?」といった基本的なことをしっかりと押さえておきましょう。

問95 災害時の保健医療支援体制について、最も適切なものを1つ選べ。
① 災害派遣精神医療チーム〈DPAT〉は、都道府県医師会によって組織される。
② 災害拠点病院は、高度の医療を提供できる400床以上の病院の中から厚生労働省が指定する。
③ 災害派遣医療チーム〈DMAT〉は、各都道府県で実施する養成研修の修了者によって構成される。
④ 災害医療コーディネーターは、所定の研修を修了した者に対して厚生労働省が付与する資格である。
⑤ 広域災害救急医療情報システム〈EMIS〉は、インターネット上で災害時の医療情報の共有を図るシステムである。

解答のポイント

災害時の保健医療体制について、その概要、それを組織する機関、資格を付与する者などを正しく把握している。

選択肢の解説

① 災害派遣精神医療チーム〈DPAT〉は、都道府県医師会によって組織される。

本選択肢については、厚生労働省から出ている「DPAT活動要領」から引用しつつ解説していきましょう。

まず、DPATとは何かについてです。


自然災害や犯罪事件・航空機・列車事故等の集団災害が発生した場合、被災地域の精神保健医療機能が一時的に低下し、さらに災害ストレス等により新たに精神的問題が生じる等、精神保健医療への需要が拡大する。

このような災害の場合には、被災地域の精神保健医療ニーズの把握、他の保健医療体制との連携、各種関係機関等とのマネージメント、専門性の高い精神科医療の提供と精神保健活動の支援が必要である。

このような活動を行うために都道府県及び指定都市(以下「都道府県等」という)によっ
て組織される、専門的な研修・訓練を受けた災害派遣精神医療チームが DPAT である。


このようにDPATは、都道府県及び指定都市によって組織されることが示されています。

この点が、本選択肢の正誤判断になりますね。

続いて、DPATの構造及びその構造に関する定義についても把握しておきましょう。


DPATは、発災直後から中長期に渡り活動する必要があるため、各都道府県等は複数の班を構成し、各班が引継ぎながら活動できるように整備する必要がある。

それぞれの都道府県等が整備する DPATを都道府県等DPATと称する。

都道府県等 DPATを構成する各班は、被災地の交通事情やライフラインの障害等、あらゆる状況を想定し、交通・通信手段、宿泊、日常生活面等で自立して活動できることが必要である。

都道府県等DPATを構成する班のうち、発災から概ね48時間以内に、被災した都道府県等において活動できる班を先遣隊と定義する。

先遣隊は、主に本部機能の立ち上げやニーズアセスメント、急性期の精神科医療ニーズへの対応等の役割を担うこと先遣隊の後に活動する班は、主に本部機能の継続や、被災地での精神科医療の提供、精神保健活動への専門的支援、被災した医療機関への専門的支援、支援者(地域の医療従事者、救急隊員、自治体職員等)への専門的支援等の役割を担うこと。


このように、DPATは複数の班に分かれ、それぞれに役割が与えられているわけですね。

本選択肢の都道府県の医師会については、以下のような記載があります。


DPAT 都道府県調整本部は、あらかじめ各都道府県によって任命された精神科医(以
下「DPAT 統括者」という)並びに被災都道府県等の本庁担当部局及び精神保健福祉
センターがその機能を担うこと。

都道府県における統括業務は、長期・多岐に渡るため、都道府県は、あらかじめ各統
括者の役割や統括者をサポートする体制を整備すること(例:統括者を複数名任命す
るなど)。

DPAT 統括者は、以下のいずれも満たす者が望ましい。

  • 災害精神医療、精神科救急体制に関わる精神科医師(基幹的医療機関等の精神科医師)、地域精神医療に関わる精神科医師(管内の医師会等が推薦する精神科医師)、または地域精神保健医療に関わる精神科医師(精神保健福祉センター等の精神科医師)
  • DPAT 事務局が行う DPAT 研修及び DPAT 先遣隊研修を受講済み又は今後受講する意思がある者
  • 夜間土日の緊急連絡体制の確保できる者

このように、統括者としては「地域精神医療に関わる精神科医師(管内の医師会等が推薦する精神科医師)」がその候補として挙げられていますね。

この点から、DPATが地域の医師会と連携しつつ支援にあたることも理解できると思います。

以上のように、地域の医師会はDPATと連携しつつ支援にあたるわけですが、DPAT自体を組織するのは医師会ではなく都道府県や指定都市になります。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② 災害拠点病院は、高度の医療を提供できる400床以上の病院の中から厚生労働省が指定する。

災害拠点病院とは、日本において、地震・津波・台風・噴火等の災害発生時に災害医療を行う医療機関を支援する病院のことです。

1995年の阪神・淡路大震災を受けて同年4月に被災地の医療機関、医師会の関係団体、救急医療、建築、機器設備、情報通信、医薬品の専門家等による「阪神・淡路大震災を契機とした災害医療体制のあり方に関する研究会」(厚生科学研究費補助金による研究班)より研究成果が発表され、患者の広域搬送や応急用資器材の貸出し、医療救護チームの派遣等に対応できる「災害医療支援拠点病院」の設置が提言されました。

これを受ける形で厚生省は、各都道府県知事宛に「災害時における初期救急医療体制の充実強化ついて(平成8年5月10日健政発第451号健康政策局長通知)」を発出し、各都道府県内や近県において災害が発生し、通常の医療体制では被災者に対する適切な医療を確保することが困難な状況となった場合に、都道府県知事の要請により傷病者の受け入れや医療救護班の派遣等を行うこととなりました。

この通知の中で、災害拠点病院の要件が記されています。

なお、この要件については「災害拠点病院指定要件の一部改正について(令和元年7月17日)」によって改正が行われていますので、こちらの内容を引用しましょう。


(1) 運営体制

災害拠点病院として、下記の要件を満たしていること。

  1. 24 時間緊急対応し、災害発生時に被災地内の傷病者等の受入れ及び搬出を行うことが可能な体制を有すること。
  2. 災害発生時に、被災地からの傷病者の受入れ拠点にもなること。なお、「広域災害・救急医療情報システム(EMIS)」が機能していない場合には、被災地からとりあえずの重症傷病者の搬送先として傷病者を受け入れること。また、例えば、被災地の災害拠点病院と被災地外の災害拠点病院とのヘリコプターによる傷病者、医療物資等のピストン輸送を行える機能を有していること。
  3. 災害派遣医療チーム(DMAT)を保有し、その派遣体制があること。また、災害発生時に他の医療機関のDMATや医療チームの支援を受け入れる際の待機場所や対応の担当者を定めておく等の体制を整えていること。
  4. 救命救急センター又は第二次救急医療機関であること。
  5. 被災後、早期に診療機能を回復できるよう、業務継続計画の整備を行っていること。
  6. 整備された業務継続計画に基づき、被災した状況を想定した研修及び訓練を実施すること。
  7. 地域の第二次救急医療機関及び地域医師会、日本赤十字社等の医療関係団体とともに定期的な訓練を実施すること。また、災害時に地域の医療機関への支援を行うための体制を整えていること。
  8. ヘリコプター搬送の際には、同乗する医師を派遣できることが望ましいこと。

(2) 施設及び設備

① 医療関係

ア.施設

災害拠点病院として、下記の診療施設等を有すること。

  • 病棟(病室、ICU等)、診療棟(診察室、検査室、レントゲン室、手術室、人工透析室等)等救急診療に必要な部門を設けるとともに、災害時における患者の多数発生時(入院患者については通常時の2倍、外来患者については通常時の5倍程度を想定)に対応可能なスペース及び簡易ベッド等の備蓄スペースを有することが望ましい。
  • 診療機能を有する施設は耐震構造を有することとし、病院機能を維持するために必要な全ての施設が耐震構造を有することが望ましい。
  • 通常時の6割程度の発電容量のある自家発電機等を保有し、3日分程度の備蓄燃料を確保しておくこと。なお、自家発電機等の燃料として都市ガスを使用する場合は、非常時に切替え可能な他の電力系統等を有しておくこと。また、平時より病院の基本的な機能を維持するために必要な設備について、自家発電機等から電源の確保が行われていることや、非常時に使用可能なことを検証しておくこと。なお、自家発電機等の設置場所については、地域のハザードマップ等を参考にして検討することが望ましい。
  • 災害時に少なくとも3日分の病院の機能を維持するための水を確保すること。具体的には、少なくとも3日分の容量の受水槽を保有しておくこと又は停電時にも使用可能な地下水利用のための設備(井戸設備を含む)を整備しておくことが望ましいこと。ただし、必要に応じて優先的な給水協定の締結等により必要な水を確保することについても差し支えないこと。

イ.設備

災害拠点病院として、下記の診療設備等を有すること。

  • 衛星電話を保有し、衛星回線インターネットが利用できる環境を整備すること。また、複数の通信手段を保有していることが望ましい。
  • 広域災害・救急医療情報システム(EMIS)に参加し、災害時に情報を入力する体制を整えておくこと。すなわち、情報を入力する複数の担当者を事前に定めておき、入力内容や操作方法などの研修・訓練を行っておくこと。
  • 多発外傷、挫滅症候群、広範囲熱傷等の災害時に多発する重篤救急患者の救命医療を行うために必要な診療設備
  • 患者の多数発生時用の簡易ベッド
  • 被災地における自己完結型の医療に対応出来る携行式の応急用医療資器材、応急用医薬品、テント、発電機、飲料水、食料、生活用品等
  • トリアージ・タッグ

ウ.その他

食料、飲料水、医薬品等について、流通を通じて適切に供給されるまでに必要な量として、3日分程度を備蓄しておくこと。その際、災害時に多数の患者が来院することや職員が帰宅困難となることを想定しておくことが望ましい。

また、食料、飲料水、医薬品、燃料等について、地域の関係団体・業者との協定の締結により、災害時に優先的に供給される体制を整えておくこと(ただし、医薬品等については、都道府県・関係団体間の協定等において、災害拠点病院への対応が含まれている場合は除く)。

② 搬送関係

ア.施設

原則として、病院敷地内にヘリコプターの離着陸場を有すること。病院敷地内に離着陸場の確保が困難な場合は、必要に応じて都道府県の協力を得て、病院近接地に非常時に使用可能な離着陸場を確保するとともに、患者搬送用の緊急車輌を有すること。なお、ヘリコプターの離着陸場については、ヘリコプター運航会社等のコンサルタントを受けるなどにより、少なくとも航空法による飛行場外離着陸場の基準を満たすこと。また、飛行場外離着陸場は近隣に建物が建設されること等により利用が不可能となることがあることから、航空法による非公共用ヘリポートがより望ましいこと。

イ.設備

DMATや医療チームの派遣に必要な緊急車輌を原則として有すること。その車輌には、応急用医療資器材、テント、発電機、飲料水、食料、生活用品等の搭載が可能であること。


いくつか大切なポイントはありますが、本選択肢の前半部分(400床以上の~)の正誤判断で大切になってくるのは「病棟(病室、ICU等)、診療棟(診察室、検査室、レントゲン室、手術室、人工透析室等)等救急診療に必要な部門を設けるとともに、災害時における患者の多数発生時(入院患者については通常時の2倍、外来患者については通常時の5倍程度を想定)に対応可能なスペース及び簡易ベッド等の備蓄スペースを有することが望ましい」という箇所でしょう。

この文章から災害拠点病院に求められているのは、一律的な病床数ではなく「入院患者については通常時の2倍、外来患者については通常時の5倍程度」であることがわかります。

おそらく、そうした一律に求めない理由としては、災害が生じた地域によって必要となる病床数がかなり異なってくるからであり、人口が多い地域の病院は通常時の入院・外来の受け入れ人数もそれに比例して多くなりますから、その「2倍」「5倍」なら必要数に達するということでしょう(人口が少なければ、元々の受け入れ人数も少なく、災害時も都会ほどは人が押し寄せないので、通常時の「2倍」「5倍」で良い)。

そして、そうした「入院患者については通常時の2倍、外来患者については通常時の5倍程度」という受け入れが可能なスペース等の確保が重要になってくることがわかりますね。

ですから、本選択肢にある400床以上という一律の設定は不適切と言えます(ただし、実際の災害拠点病院の病床数を見ると400床以上であることが多いので、一つの目安であることは間違いないかもしれません)。

また、災害拠点病院の指定に関しては、以下のような記載があります。


災害拠点病院の指定に当たっては、都道府県医療審議会等の承認を得ることとし、指定されたものについては医療計画に記載すること。また、都道府県は指定した災害拠点病院が要件に合致しているかどうかを毎年(原則として4月1日時点)確認し、指定要件を満たさなくなった場合には指定の解除を行うこと。


上記の通り、災害拠点病院を指定するのは、都道府県であることがわかります(選択肢後半部分の正誤判断ですね)。

そして、災害拠点病院は「基幹災害医療センター」と「地域災害医療センター」に分類でき、原則として、基幹災害医療センターは各都道府県に1ヶ所以上、地域災害医療センターは二次医療圏に1ヶ所以上が整備されています。

都道府県の規模に応じて病院数は異なり、多ければ1つの都道府県に数十の災害拠点病院が集まります。

このように、災害拠点病院の指定は厚生労働省ではなく都道府県が行うということになっています。

以上より、選択肢②は不適切と判断できます。

③ 災害派遣医療チーム〈DMAT〉は、各都道府県で実施する養成研修の修了者によって構成される。

大地震及び航空機・列車事故等の災害時に被災者の生命を守るため、被災地に迅速に駆けつけ、救急治療を行うため、厚生労働省の認めた専門的な研修・訓練を受けた災害派遣医療チームが日本DMATです。

この構成者については「日本DMAT活動要領」から引用しつつ解説していきましょう。


1.DMAT

  • DMATとは、災害の発生直後の急性期(概ね 48 時間以内)に活動が開始できる機動性を持った、専門的な研修・訓練を受けた医療チームである。
  • DMAT1隊の構成は、医師1名、看護師2名、業務調整員1名の4名を基本とする。
  • DMATは、本部活動、広域医療搬送、病院支援、地域医療搬送、現場活動等を主な活動とする。また、本部業務のサポート、病院支援や情報収集等を担うロジスティクスも行う。なお、医療チームの参集状況に応じて、必要な場合には、初期の避難所や救護所での活動のサポート等を考慮する。

2.DMAT登録者

  • DMAT登録者は、厚生労働省等が実施する「日本DMAT隊員養成研修」を修了し、又はそれと同等の学識・技能を有する者として厚生労働省から認められ、厚生労働省に登録された者である。
  • DMAT登録者には、DMAT隊員証が交付される。
  • DMAT登録者は、災害の急性期にDMATとして派遣される資格を有する。

3.統括DMAT登録者

  • 統括DMAT登録者は、厚生労働省が実施する「統括DMAT研修」を修了し、厚生労働省に登録された者である。
  • 統括DMAT登録者は、通常時に、DMAT登録者への訓練、DMATに関する研修、都道府県等の災害医療体制に関する助言等を行う。
  • 統括DMAT登録者は、災害時に、各DMAT本部の責任者として活動する資格を有する。

上記2の通り、「DMAT登録者は、厚生労働省等が実施する「日本DMAT隊員養成研修」を修了し、又はそれと同等の学識・技能を有する者として厚生労働省から認められ、厚生労働省に登録された者である」とされています。

よって、DMATの研修は厚生労働省等が行うとされておりますね(この点が本選択肢の正誤判断ですね)。

正直、この「厚生労働省等」の「等」が気になるのですが、こちらが何を指すのか検索しても出てきませんでしたが、少なくとも都道府県ではないだろうと思います。

そして、この登録者が「災害の急性期にDMATとして派遣される資格を有する」ということになります。

以上より、選択肢③は不適切と判断できます。

④ 災害医療コーディネーターは、所定の研修を修了した者に対して厚生労働省が付与する資格である。

これまで阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震等の経験から、医療チームの派遣調整等のコーディネート機能を十分に発揮できる体制の整備や、小児・周産期医療と災害医療との連携の必要性も指摘されていたこと、被災地に派遣される医療チームや保健師チーム等を全体としてマネジメントする機能を構築する必要があるとされたことが指摘されてきました。

そこで、大規模災害時に、被災地域において、適切に保健医療活動の総合調整が行われるよう、関係機関をコーディネートできる役割の必要性が示されました。

そうした中で生まれたのが災害医療コーディネーターです。

こちらについては、「災害医療コーディネーター活動要領」から引用しつつ解説していきましょう。


2 災害医療コーディネーターとは

災害医療コーディネーターとは、災害時に、都道府県又は保健所が保健医療活動の総合調整を適切かつ円滑に行えるよう支援する者であり、被災地の医療ニーズの把握、保健医療活動チームの派遣調整等を行うことを目的として、都道府県により任命された者である。

災害医療コーディネーターは、平時から当該都道府県等の医療提供体制に精通してお
り、養成のための専門的な研修を受け、災害対応を担う関係機関等と連携を構築してい
る者が望ましい。

なお、小児・周産期医療に係る保健医療活動の総合調整については、災害時小児周産
期リエゾンの助言を参考とする。

3 運用の基本方針

  1. 災害医療コーディネーターの活動は、平常時に、都道府県と災害医療コーディネーターの所属する医療機関等(以下「災害医療コーディネーター所属施設」という)との間で締結された協定、厚生労働省防災業務計画等に基づくものである。
  2. 厚生労働省は、都道府県による、災害医療コーディネーターの運用を含む災害時の医療体制の整備について、必要な助言及び支援を行う。
  3. 厚生労働省は、平常時に、災害医療コーディネーターの活動要領を策定するとともに、その知識や技能の向上を目的とした研修を実施する。
  4. 災害医療コーディネーターの活動は、都道府県の参集要請に基づくものである。
  5. 都道府県は、平常時に、災害医療コーディネーターの運用計画の策定、災害医療コーディネーター所属施設との協定の締結等を行い、災害時に、災害医療コーディネーターの支援を受け、保健医療活動の総合調整を行う。
  6. 都道府県は、災害医療コーディネーターの活動について、その労務管理の観点等から、災害の規模に応じて、交代要員を確保し、継続的な対応が可能となるよう配慮する。
  7. 災害医療コーディネーター所属施設は、平常時に、災害医療コーディネーターの参加する研修及び訓練に協力するよう努め、災害時に、都道府県との協定に基づき災害医療コーディネーターを派遣する。

上記の通り、「災害医療コーディネーターとは、災害時に、都道府県又は保健所が保健医療活動の総合調整を適切かつ円滑に行えるよう支援する者であり、被災地の医療ニーズの把握、保健医療活動チームの派遣調整等を行うことを目的として、都道府県により任命された者」ですから、本選択肢の「厚生労働省が付与する資格」という点に齟齬がありますね。

以上より、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ 広域災害救急医療情報システム〈EMIS〉は、インターネット上で災害時の医療情報の共有を図るシステムである。

大規模な自然災害が発生すると、病院には大勢の負傷者が搬送されるため、医療機関はリソースの確保が追い付かずにパンク状態になります。

そのような災害時に1人でも多くの負傷者へ医療を提供するために開発されたのが、病院の被災状況・稼働状況を把握する機能を持ったEMIS(広域災害救急医療情報システム)です。

広域災害・救急医療情報システム(EMIS)は、災害拠点病院をはじめとした医療機関、医療関係団体、消防機関、保健所、市町村等の間の情報ネットワーク化及び国、都道府県間との広域情報ネットワーク化を図り、災害時における被災地内、被災地外における医療機関の活動状況など、災害医療に関わる情報を収集・提供し被災地域での迅速かつ適切な医療・救護活動を支援することを目的としたシステムです。

要するに、EMISは、災害時における「適切な情報の収集・提供」を目的としたシステムであり、具体的には、医療機関の患者受け入れ可否の照会、病院の被災状況や稼働可能な職員の確認を可能としており、医療機関の混乱により患者対応ができない事態を回避するために機能します。

EMISの立ち上げは、1995年1月に起きた阪神・淡路大震災での体験がきっかけとなっています。

阪神・淡路大震災の時は、災害時の初期医療体制が確立しておらず、医療機関のお互いの情報共有や、行政や都道府県外の医療機関への情報共有のツールがなく、お互いの情報がわからないまま各々が対応しなければならない状態になりました。

対応可能であったが傷病者が少なかった医療施設、キャパオーバーだが傷病者が押し寄せる医療施設、外部からの援助が必要だが援助が来ない医療施設、など、ばらつきがあることが後日の検証でわかり、1995年度から構築、年度ごとに拡充し、2006年度からEMIS運用が始まりました。

バックアップセンターを東西に2つ設けることで、災害時に活用できるシステムとしての堅牢度を高めており、スマートフォンアプリ化や操作性改善など、現在も利便性向上のためのアップデートが行われています。

なお、EMISの概念図はこちらになります。

EMISで共有できる情報・機能は、一般市民向けと関係者向けによって分かれています。

一般市民向けでは以下のような情報を入手できます。

  • 災害救急医療に関わる一般向け情報の提供(お知らせ、医療機関情報検索)
  • 災害医療に関わる固定コンテンツ
  • 災害医療全般についてのリンク集(災害ライブラリ、災害救急リンク集)

また、関係者向けでは以下のような情報を入手できます。

  • 災害医療情報の入力、検索、集計
  • 災害救急に関わる関係者向け各種情報の登録・提供
  • 医療機関情報の提供
  • 災害時における速報
  • 情報共有化機能(メーリングリスト、メールマガジン)
  • 機関情報の管理機能
  • システム運用状態の切り替え
  • 災害時における通知、連絡などの配信機能
    ※ログインのための機関コードとパスワードが必要

災害時におけるEMISの役割は、大きく2つに分けられます。

一つは、関係者向けの機能を活用し、発災直後の時期(急性期)に必要となる情報共有を行って、被災地の患者をケガの状態に応じて適切な医療機関へ搬送する「広域搬送」で、もう一つは、急性期の救護・医療活動の訓練を受けたDMATを、被災レベルに応じて各所に派遣する「DMAT派遣」です。

DMATの活動状況も集約し、提供することも役割ということになりますね。

もちろん、こうしたシステムに関してはまだまだ課題が多いのが現状です。

EMISの課題については、第8回救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会で示された「広域災害・救急医療情報システム(EMIS)を活用した情報収集体制の強化について」で指摘されていますので、こちらも参照しておくと良いでしょう。

こういう課題を見ていると、マイナンバー制度でも感じますが「どうしてそのやり方できちんと機能すると思ったのさ?」と言いたくなることが多いです(特に「医療機関において発災後に自病院の被災状況を自ら入力しない」に関しては、災害時は忙しい上に簡単に被災状況がわからないのが前提なんだから当たり前でしょと思っちゃいます)。

いずれにせよ、EMISは災害時の医療情報の共有を図るインターネット上のシステムであることがわかります。

よって、選択肢⑤が適切と判断できます。

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