公認心理師 2020-124

チーム医療に関する基本的な理解が問われています。

こちらの問題については「公認心理師 2018追加-38」や「公認心理師 2019-49」などに類似の内容が出題されていますね。

過去問をやっておくとかなり解きやすかったと言えます。

問124 チーム医療について、最も適切なものを1つ選べ。
① 多職種でのカンファレンスは、議論や検討の場ではない。
② 医療に従事する多種多様な医療スタッフが、場所を共有する。
③ 患者自身がチームの意思決定や治療選択に関わることはない。
④ 各職種の機能と役割について、互いに知っておくことが必要である。

解答のポイント

チーム医療に関する基本的な理解がある。

選択肢の解説

本問の解説には、主に以下の書籍を活用しました。

チーム医療の問題は正誤判断はしやすいことが多いのですが、きちんと説明するのが意外と難しいなと感じます。

その点について綺麗にまとめてあったので、こちらの書籍は読みやすかったです。

① 多職種でのカンファレンスは、議論や検討の場ではない。

病院では、さまざまな医療職が集まり一人ひとりの患者のケースを検討するチームカンファレンスが行われます。

このカンファレンスは単に情報を交換・共有する場ではなく、異なる専門的知見をもつ専門職が集まって様々な視点から現状を分析し、議論を経て目標を共有していく場である必要があります。

以前から、患者の治療やケアの方針を医療に関わる多職種が集まって検討を行うことは普通に行われてきました。

ただ、どうしても医師主導の議論になり、医師の方針を他のスタッフが確認するという、どちらかというと検討よりも伝達の色合いが強い傾向がありましたし、今でもそのような施設も少なからずあります。

確かに様々な医療職がチーム医療を行っているとしても、法的に最終的な責任は医師が負う必要がありましたし、たとえば看護師が行っている業務の中にも「医師の指示の下」でのみ行うことができる医療行為が定められています(この点は公認心理師も同様ですね)。

こうしたことから他の医療職が医師に遠慮してしまうような空気が生まれてくる場合もあるかもしれません。

しかし、チームカンファレンスは患者のためにベストを尽くすために行うという基本的な部分がおろそかになってはいけません。

カンファレンスに参加する誰もが専門的な見地から意見を述べ、それぞれの意見を尊重し、そのうえで決められた方針を全員が共有してチーム一体となって医療を提供する、こうした垣根のない雰囲気を日頃から作っていくこともとても重要で、最終的には医療の質に直結していきます。

こうしたチーム医療が円滑に進められるには、もちろん病院の中での意識づけも重要ですが、卒前教育の段階からコミュニケーション技術を磨いたり、専攻科を超えた合同の演習などを経験したりすることはとても有意義です。

以上のように、多職種でのカンファレンスは、それぞれの専門性に基づき、議論や検討を行って、患者により良い医療を提供できるようにする場であると言えます。

よって、選択肢①は不適切と判断できます。

② 医療に従事する多種多様な医療スタッフが、場所を共有する。

チーム医療を実践するためには、医療職間の情報の共有が不可欠です。

具体的な方法の一つとしては、「診療録の電子化(電子カルテ)」の導入が挙げられ、これによって、かつては同じ病院内でも診療科ごとに作られていたカルテが一本化され、治療が重複して行われていたり、方針がずれるなどの問題も改善されました。

電子カルテからさまざまな情報を引き出して医療の質の評価や臨床研究のデータ抽出などにも活用することができ、結果として医療の質を上げることができます。

さて、こうした電子カルテは一つの例ではありますが、これによって病院内での情報共有がやりやすくなったと言え、これもチーム医療の一つの形と捉えることができます。

しかし、患者は常に一つの病院にだけ通院しているわけではありません。

特に高齢者は複数の病気や症状を抱えている人が多く、そのため複数の医療機関に通院している場合が少なくありません。

こうした医療機関を超えた情報共有も重要な課題であり、病診連携(病院と診療所の連携)や病病連携(病院同士の連携)もチーム医療の1つの形と言えます。

日本ですでに活用されている情報共有の仕組みのひとつに「お薬手帳」があります。

これは病院や調剤薬局などで処方された薬品の名前と用量、処方箋を発行した医療機関や調剤薬局の名前などを日付とともに一冊の手帳に記録していくもので、これにより別の医療機関からの処方の重複や併用を避けるべき薬剤の処方のチェックなどを行うことができます。

こうしたシステムがないと、例えば精神科薬をあちこちでもらって依存症の形成につながるなどの危険が大きくなります。

また、お薬手帳によって、旅行先や災害時での病変においても必要な医療処置を受けられるという点でも非常に有効で、定着促進のため「薬剤服用歴管理指導料」としてお薬手帳を持参することで料金が安くなるシステムも作られています。

上記のとおり、電子カルテ上での情報共有も含めてチーム医療に含まれますし、病診連携や病病連携など「場所を共有しないチーム医療」もあることがわかりますね。

よって、選択肢②は不適切と判断できます。

③ 患者自身がチームの意思決定や治療選択に関わることはない。
④ 各職種の機能と役割について、互いに知っておくことが必要である。

かつての医療は患者の病気を治すことに目的がほぼ集約されていた面があります。

もちろん、病気を克服し、患者を苦痛から救うことが医療の最大の使命であることは、過去も現在も、そして将来も変わることはないでしょう。

しかし、現在では「全人的医療」という言葉に象徴されるように、単なる病気や障害など身体的な側面にとどまらず、心理的あるいは社会的側面にも視野を向けて、患者とともに最善の解決に向けた共同作業を行う医療の提供が求められています。

よって、現在では患者自身もチームの一員として加わり「患者協同の医療」を提供しようという考え方が広がっています。

こうしたチーム医療の実践のためには、さまざまな専門職がさまざまな視点や技術をもとに患者の訴えや求めを掬い上げ、客観的・科学的に評価し、問題点を共有する必要があります。

そして、職種横断的な円滑なコミュニケーション、情報の共有、チーム全体のマネジメントが求められます。

具体的なチーム医療の流れとしては、以下のように進められます。

  1. 患者の問題点の把握
  2. 問題解決のための計画立案
  3. 専門医療職の役割分担の確認
  4. 問題解決型の医療やケア
  5. 医療の評価
  6. 必要に応じた治療計画の修正

この流れは品質管理などの業務を効率的に推進する目的で用いられるPDCA(plan-do-check-act plan)とも共通するものです。

上記の3にあるように、各医療専門職の役割分担を確認することもチーム医療の実践に必要ですから、当然、各医療専門職の機能と役割を互いに把握しておくことが重要になりますね。

なお、医療関係職種の業務分野と根拠法は以下の通りです。

職種業務分野法律制定
医師医業医師法1948
保健師保健指導と診療の補助保健師助産師看護師法1948
助産師助産または妊婦、褥婦もしくは申請時の保健指導と診療の補助同上
看護師傷病者もしくは褥婦に対する療養上の世話または診療の補助同上
診療放射線技師医師および歯科医師の指示のもとに放射線を人体に照射する診療放射線技師法1951
臨床検査技師医師の指導監督のもと各検査を行う
※政令で定める生理学的検査を含む
臨床検査技師
衛生検査技師等に関する法律
1958
衛生検査技師医師の指導監督のもと各検査を行う同上
理学療法士身体に障害のある者に対し、主としてその基本動作能力の回復を図るため運動や様々な物理的手段を加えること理学療法士および作業療法士法1965
作業療法士身体又は精神に障害のある者に対し、応用的動作能力や社会的適応能力の回復を図るため、作業を行わせる同上
視能訓練士両眼視機能に障害のある者に対するその回復のための矯正訓練、およびこれに必要な検査を行うこと視能訓練士法1971
臨床工学技士生命維持装置の操作および保守点検を行うこと臨床工学技士法1987
義肢装具士義肢及び装具の装着部位の採型、制作、身体への適合を行う義肢装具士法1987
救急救命士重度傷病者が病院または診療所に搬送されるまでの間に救急救命処置を行う救急救命士法1991
精神保健福祉士精神障害者の社会復帰の相談、助言、指導、訓練などの援助を行うこと精神保健福祉法1997
言語聴覚士音声機能、言語機能、聴覚に障害のある者に、言語訓練、必要な検査、助言、指導などの援助を行うこと言語聴覚士法1997
歯科医師法歯科医業歯科医師法1948
歯科衛生士歯牙および口腔疾患の予防措置と歯科診療の補助歯科衛生士法1948
歯科技工士特定人に対する歯科医療の用に供する補綴物、充填物または矯正装置を作成、修理、加工すること歯科技工士法1955
薬剤師調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどること薬剤師法1960
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師法律には特に業務の規定はないが、あん摩、マッサージ、指圧、はり又はきゅうを業とする者は、それぞれ免許を受けなければならないあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律1947
柔道整復師法律の定義は「厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者」柔道整復師法1970
公認心理師保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、心理状態の観察、分析、心理援助、心理の健康に関する知識の普及を行う公認心理師法2015

チーム医療の実践のためには、これらの各職種の役割もきっちり頭に入れておくことが重要ですね。

以上より、患者もチームの一員として見なすのがチーム医療の考え方ですし、チーム医療の実践のためには各職種の機能と役割について互いに知っておくことが必要となります。

よって、選択肢③が不適切と判断でき、選択肢④が適切と判断できます。

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