公認心理師 2018追加-38

チーム医療の考え方として、最も適切なものを1つ選ぶ問題です。

チーム医療推進協議会」のホームページには、それぞれの職種の役割やどういう領域で活動しているかが記されております。
臨床心理士(まだ公認心理師という記載は無い)が活動している領域として、「リハビリテーションチーム」「糖尿病チーム」「緩和ケアチーム」が挙げられていますね。

解答のポイント

チーム医療に関する基本的事項について把握していること。

選択肢の解説

『①チーム医療は医療機関内で提供されるものをいう』

1989年策定のゴールドプランに続き、1994年には新ゴールドプランが策定され、2000年には介護保険制度が導入されました。
介護保険制度は寝たきりや認知症の高齢者の増加に対し核家族化が進行する中、社会全体で介護を支える仕組みとして創設されました。
この制度により、これまで医療と福祉が分かれていた高齢者サービスを統合して提供できる環境が整備されました。

まら、医療分野における維持期のケアやリハビリテーションは主に介護保険で提供されることになりました。
急性期、回復期、維持期という病期による施設の機能分担と施設間の連携が促進される中で、1997年に言語聴覚士と精神保健福祉士の資格が創設されています。

このように医療や福祉・介護の現場において関連職種連携の重要性が高まっており、チーム医療は単に医療機関内での連携を指す言葉ではなく、こうした地域との連携も視野に入れた概念となっています

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。

『②患者や家族は医療チームの構成メンバーの一員とみなされない』

チーム医療推進協議会ホームページによれば、チーム医療とは「一人の患者に複数のメディカルスタッフ(医療専門職)が連携して、治療やケアに当たること」と示され、多くのメディカルスタッフが連携・協働し、それぞれの専門スキルを発揮することで患者の生活の質の維持・向上、患者の人生観を尊重した療養の実現をサポートしていきます。

そして、上記の中で患者や家族もチームの一員とみなされています
中井久夫先生などが書いておられることですが、「薬の飲み心地などについて報告してくれるのがあなたの仕事」と伝え、「効いていないのに効いていると思って薬を出し続けると良くないからね」という声をかけるということでした。

また患者がカンファレンスに参加する意義として、家族が思いを話すだけではなく、各職種からも説明を受けられることで納得して治療を受けられたことが示されております
オープンダイアローグでも、患者の前でミーティングを行うことの意義が示されておりますね。

以上より、選択肢②は不適切と判断できます。

『③チーム医療のリーダーシップは状況によって構成メンバーの中で移譲される』

チーム医療を成功させる10か条 現場に学ぶチームメンバーの心得」によると、チームの中で臨床教育を行い、即戦力を養い、レベルが上がれば権限を委譲するというやり方が紹介されています
それぞれしかできない仕事を全うするとともに、チーム全体の臨床力を上げることで、その場その場で医師のパートナーになり得る人材を育成しています。
教育に基づく安全性の確保ができるのであれば、すべて「医師の具体的指示のもと」ではなく業務を遂行できるようになることの望ましさが示されております。

選択肢①で示したように、実際に地域で患者を支援していくことを考えれば、常に医師からの具体的指示を受けられる状況ばかりではないことは明らかであり、その時々の場で活動する専門職がリーダーシップをとって活動していくことが望ましいと言えます

以上より、選択肢③が適切と判断できます。

『④構成する専門職個々のテクニカルスキルが高ければ、チーム医療は効果的に遂行される』

厚生労働省が示している「チーム医療の推進について(チーム医療の推進に関する検討会 報告書)」には以下のような記載があります。

  • チーム医療とは、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と一般的に理解されている。
  • 患者・家族とともにより質の高い医療を実現するためには、1人1人の医療スタッフの専門性を高め、その専門性に委ねつつも、これをチーム医療を通して再統合していく、といった発想の転換が必要である。
  • 今後、チーム医療を推進するためには、①各医療スタッフの専門性の向上、②各医療スタッフの役割の拡大、③医療スタッフ間の連携・補完の推進、といった方向を基本として、関係者がそれぞれの立場で様々な取組を進め、これを全国に普及させていく必要がある。
  • 各医療スタッフの専門性の向上や業務範囲・役割の拡大を活かして、患者・家族とともに質の高い医療を実現するためには、チームとしての方針の下、包括的指示を活用しつつ各医療スタッフの専門性に積極的に委ねるとともに、医療スタッフ間の連携・補完を一層進めることが重要である

このように個々のスキルの向上と併せて、連携の重要性が指摘されております
連携があることで、個々の役割を補完することができ、チーム全体の統合につながることが期待されています
個々のテクニカルスキルが高いだけで、こうした連携がなければ、細かいところでの齟齬が出てきます
例えば、患者側からしたら伝わっていると思っていた話が伝わっていないなど。

また連携の厚みについても様々です。
例えば、多職種がカンファレンスですり合わせて情報を共有する形だと、チーム医療の質は高くなりますが処理能力には限界があるとされています。
こういうタイプの連携の仕方は、リスクの高い、数少ない患者に対する質の高いチーム医療の提供という中で行われることが効率的です。
現場で言えば、ER、ICUでの医師中心の根本治療に対応するチーム医療が主体となります。

一方で、例えば、電子カルテによる情報の共有を行い、業務の標準化で質を保ち、多くの患者の対応を可能にするという形もあります。
リスクの低い、数多くの患者に対する効率的なチーム医療として優れています。
一般病棟での他職種による患者の状態を良くするチーム医療が主体となります。

このように連携を前提としながらも、その対象によってその厚みを変えていくということも重要と言えます。
以上より、選択肢④は不適切と判断できます。

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