公認心理師 2018追加-112

コーピングについて、誤っているものを1つ選ぶ問題です。

コーピングでは、認知を変容させるようなやり方が長年重視されてきました。
しかし、近年になって、認知を変容させようとするのではなく、認知や気分が個人に与える影響を低減させることを重視し、マインドフルネスやアクセプタンスなどの方向性が注目されています。

解答のポイント

ラザルスの理論からコーピングとその種類までを流れとして把握しておくこと。

選択肢の解説

『①ストレスフルな事態に対して行う認知的行動的努力である』
『②ストレスフルな事態そのものに焦点を当てたコーピングを問題焦点型コーピングという』
『⑤解決が困難な事態では、問題焦点型コーピングが情動焦点型コーピングよりもストレス反応の低減効果が大きい』

ストレスとなる状況によって引き起こされる常道と生理学的興奮は、かなり不快な状態であるので、それをなくすために何かをしたいという行動を動機付けることになります。

この人がストレスに満ちた要求を何とかしようとする過程は、コーピングと呼ばれ、主に以下の2つの形をとります。
一つは、特定の問題、または状況に焦点を合わせて、それを変える方法や将来二度と同じ経験をしないで済むような方法を探そうとするようなやり方で、「問題焦点型コーピング」と呼ばれています
よく勘違いされることですが、問題焦点型コーピングは「自分を変える」ことも含まれます。
例えば、目標を変えたり、別の楽しみを見つけたり、新しい技術を学ぶなどです。
問題焦点型コーピングを使う人の特徴として、ストレス状況の中でも抑うつ的になりにくいということが挙げられます。
このことを逆転させ、うつ病患者に問題焦点型コーピングを用いさせることでうつ状態を改善することができるという知見があります。
もう一つは、状況そのものが変えられなくても、ストレスになる状況に伴う情動を軽減することに焦点を合わせるやり方もあり、これを「情動焦点型コーピング」と呼びます
問題解決行動を適切に取るには、その実行を妨害するような否定的な情動を体験しないようにすることが重要になります。
また、問題が制御不能のような場合、すなわち直ちに問題解決ができない(=問題焦点型コーピングが実行できない)場合においても、情動焦点型コーピングを用いるとされています
この点については、公認心理師2018-95の選択肢⑤にも記述しましたね。
変えようがない問題については認知的再評価を行い、実際にその事態を変えるのではなく、その事態の意味を変えることによって、付随する脅威を低減するというのは情動的コーピングの代表的方法ですね
こちらの内容は選択肢⑤と齟齬があると言えます。
実際には、ほとんどの人が問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピングを併用しており、選択肢①のコーピングが「ストレスフルな事態に対して行う認知的行動的努力である」という表現は問題焦点型コーピング(行動)と情動焦点型コーピング(認知)を合わせたものであると捉えることが可能ですね
※問題焦点型の中には、行動だけではなく認知的なもの(考え方を変える)も含まれていますが、理解のために大雑把に示しています。

以上より、選択肢①および選択肢②は正しいと言え、除外することが求められます。
また、選択肢⑤は問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピングが逆になっており、誤りと言えるので、こちらを選択することが求められます。

『③ストレスフルな事態を過度に脅威的だと評価すると、選択できるコーピングの幅が狭くなる』

選択肢にあるような「ストレスフルな事態を過度に脅威的だと評価する」という点は、ラザルスの理論における「一次評定」に該当します
つまり、その事態が「無関係」「無害-肯定的」「ストレスフル」かの判断を行いますが、自分にとって脅威であると判断されれば「ストレスフル」であるという評価になります。

「ストレスフル」と判定された出来事に対して、それにどう対処するべきか、どのような選択肢があるかを判断するのが「二次評定」です
本来ここでは、過去の経験、使える資源、自身の性格などに基づいて、いつ、どこで、どのようにすれば最も良い結果が得られるのかを考えて方針を立てていきます。
そして、それを実行し、効果的ならストレスは軽減され、無効であれば別のコーピングが採られます。

しかし、その事態があまりに脅威的だと感じると、使えるコーピングの幅がぐっと狭まってしまいます
例えば、そのストレス事態が過去に経験がないような事柄だと、その人には過去に対応した経験がないため、経験で蓄積されたコーピングが使用できないことになりますね

また、脅威的な事態では視野が狭くなりがちで、ネガティブな思考に陥ったり、いつも同じ思考が繰り返し生じてしまうということが起こります
こちらは認知療法などでいう「自動思考」に近いものと言えるかもしれません。

このような反芻思考がある場合、つまり堂々巡りの思考をする人は、ストレッサーに対して反応して活動的に問題解決を推し進めることをしないとされています
このことは、反芻思考後に問題解決課題をさせた実験を通して明らかにされています。

以上より、選択肢③は正しいと判断でき、除外することが求められます。

『④事態に応じて柔軟に適切なコーピングを選択できることはストレスマネジメントの重要な側面である』

代表的なコーピングの種類である問題焦点型と情動焦点型では、活用されやすい状況が異なります。
問題焦点型は、方法論的に解決することができる場合、例えば困難なテストが目の前にあれば、それに向けて勉強する、自分に求める水準を下げるといったやり方が可能になります。

一方で、選択肢⑤の解説でも述べたように、問題焦点型ではどうしようもできない事態、例えば慢性的な問題がある場合などは問題焦点型ではなく情動焦点型の方が効果的とされています。
こうした目の前にあるストレス事態によって、コーピングを変えられることによって、ストレス軽減を図りやすいと言えます

また、ストレスマネジメントとは「ストレスによる心身への悪影響を緩和し、疾病を予防するための活動」を指します。
ストレスが個人の生活の質を脅かさないように、その強さや持続期間を適度なレベルにコントロールすることが大切です。

つまり、コーピングは明白な問題場面だけで行う営みではなく、もっと日常的なレベルで、そのいくつかは無自覚に行うものです
問題焦点型でも情動焦点型でも、複数のコーピングを備えていることによって、そうした日常的なストレスの圧力を下げることがしやすくなり、それが結果としてストレスマネジメントにつながると考えられます

更に、ストレスマネジメントの構成要素としては以下が挙げられます。

  1. 刺激となる環境への介入:ストレッサーの軽減、除去
  2. 個人の認知への介入:刺激の捉え方、考え方の変容
  3. 個人のコーピングへの介入:対処レパートリーの拡充
  4. 個人のストレス反応への介入:心身のストレス反応の緩和

当然、ストレスによって対処法も異なるので、対処レパートリーが多い方がよいことは明白ですね

よって、選択肢④は正しいと判断できるので、除外することが求められます。

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