妄想いろいろ:一次妄想と二次妄想、うつ病の妄想など

妄想に関する問題は、各予備校などがやっている模擬試験などで散見しますね。
それらの模擬試験で出た内容を中心に、まとめていきます。

【妄想とは】

妄想は、その文化において共有されない誤った確信であり、論理的な説明で修正不能なものを指します。
「その文化において」というところがミソで、むかしアメリカで「俺は王子だ!」と言った人が病院に運ばれましたが、本当に王子様だったという話があります。
つまり、アメリカという文化では「王子」という存在は共有されにくい認識だったということでしょうね(王政をしいている国なら大丈夫な可能性が高まります)。

ちなみに妄想は、本人が妄想であるとは自覚していないとされることが多く、これを「病識がない」という表現に繋がります。
しかし実際は、漠然と非合理性に気づいている場合(病感がある状態)、あるいは他者の前では隠すことができ生活に適応している場合(二重見当識)など様々です。

他にもヤスパースの「了解」概念や、陽性症状・陰性症状なども押さえておくと良いかもしれないです。

◎妄想は精神病の指標ではない

基礎疾患によっても生じる妄想の種類が異なる傾向があります。
統合失調症では、被害妄想、関係妄想、誇大妄想などとされています。
うつ病では、罪業妄想、心気妄想、貧困妄想であるとされています。

よく勘違いされますが、妄想の存在は精神病と結び付けられるものではありません。
シュナイダーは一級症状・二級症状を提唱し、これを統合失調症の指標としました。
しかしその後、一級症状・二級症状は、「精神的問題を有している人が示しやすい症状である」と認識が広がっています。

同様のことは別の領域でも生じています。
例えば、ロールシャッハ・テスト(包括システム)では、妄想的な反応内容(ある種のスペシャルスコア:逸脱言語反応)を中心としたSCZIという統合失調症指標がありましたが、その後PTI(知覚と思考の指標)に改められました。
SCZIが、統合失調症じゃなくても生じる可能性があることが指摘されたのでしょうね。

【一次妄想と二次妄想】

妄想の古典的分類として、「一次妄想」と「二次妄想」があります。

◎一次妄想

まったく根拠を持たない妄想を指し、「俺はアラブの王だ」などのような内容です。
しかし「全く根拠をもたない」と断ずること自体が難しく、そういった考え自体が非治療的であると思われます。
こちらの「根拠がないことを言っている」と思っていることは、何かしらの形で相手に伝わりますから。
オープンダイアローグという思想・制度が、フィンランドの実践として紹介されていますが、この中での妄想との関わりは非常にサポーティブなものであり、それを続けていくことで妄想的な表現が、共有できる言語に変化していくとされています。
※オープンダイアローグは「社会構成主義」との関連がありますから、その点で公認心理師受験とも無関係ではありません。

◎二次妄想

根拠を持たない(とされる)一次妄想に対して、二次妄想は何かしらの経験と関わりがある妄想とされています。
僅かな身体の不調から「俺は不治の病だ」といった感じでしょうか。
ただこちらも、どの程度の根拠かによってはニュアンスに大きな幅があるだろうと思います。

【うつ病の妄想】

かなり古くから言われている、うつ病の妄想についてです。
以下の3つになります。

①貧困妄想

どんなにお金があっても、お金がないと感じてしまう。
「自分は非常に貧しい」「借金を抱えてしまった」などと信じる妄想。

②罪業妄想

自分が罪深い人間だと思い込む妄想。
「ポストが赤いのも、空が青いのも、全部自分のせいだ」という感じ。

③心気妄想

自分の身体の一部が病気にかかっていると思いこむ妄想。
実際に軽い病気であっても、その症状を非常に重く見積もる場合も分類される。

…学生時代は「日差し(んこん・いごう・んき)が見えないうつ病の妄想」と覚えていました。
不謹慎ですね…。

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