公認心理師 2018-26

パニック障害に最も伴いやすい症状を選択する問題です。
「最も伴いやすい」なので、伴うことがあってもその頻度が少なければ誤答になる可能性がある問題ですね。

解答のポイント

パニック障害の診断基準を把握していること。
各症状の診断基準や成り立ちを把握していること。

選択肢の解説

『①常同症』

DSM-5には「常同運動障害」の診断基準が記載されています。

  • 反復し、駆り立てられるように見え、かつ外見上無目的な運動行動(例:手を震わせるまたは振って合図する、身体を揺する、頭を打ちつける、自分の身体を噛む、自分の身体を叩く)
  • この反復性の運動行動によって、社会的、学業的、または他の活動が障害され、自傷を起こすこともある。
  • 発症は発達期早期である。
  • この反復性の運動行動は、物質や神経疾患の生理学的作用によるものではなく、他の神経発達症や精神疾患(例:抜毛症、強迫症)ではうまく説明されない。
常同行動は、繰り返し膝をこすったり、パチパチと手を叩くような単純な運動を繰り返す症状から、「いつも同じ服を着たがる」「デイルームの決まった椅子に座りたがる」のような比較的まとまった行動まで幅広く見られます。
知的障害、ASD、前頭側頭型認知症、統合失調症などの見られるとされています。
以上より、選択肢①は誤りと言えます。

『②解離症状』

「解離性障害」ではなく「解離症状」となっています。
パニック症状と解離症状の違いについて明確にしていく必要があります。

解離には、圧倒的な脅威の事態を「ひとごと」にすることによって、無益で危険な損壊行動を止めさせ、事態を凌ぎ易くするという機能があります。

西丸先生の「精神医学入門」では、以下のような記載があります。
不安が人格を圧倒してしまうと、その人格は消えて、人格から離れた行動が起こり、支離滅裂な行動、昏迷、夢幻状態、夢中遊行、健忘などが現われ、これを解離反応という。…不安が転換されて随意的に制御される身体部分や諸器官の機能障害になるとヒステリー反応であり…」

不安の圧倒が解離で、不安が身体部分などに転換されるとヒステリーとされています。
(パニック障害=ヒステリーではありませんが…)

いわゆる「解離性障害」の症状として挙げられるのは、健忘や離人症、同一性障害などであり、パニック障害のような記載は見られません
よって、選択肢②の内容は誤りと言えます。

『③疾病恐怖』

DSM-5に「病気不安症」という疾患が記載されています(身体症状症および関連症群の中の一つです)。
かつて心気症と呼ばれていたものですね。

診断基準は以下の通りです。

  • 重い病気である、または病気にかかりつつあるというとらわれの存在。
  • 身体症状は存在しない、または存在してもごく軽度である。
    他の医学的疾患が存在する、または発症する危険が高い場合(例:濃厚な家族歴がある)は、とらわれは明らかに過度であるか不釣り合いなものである。
  • 健康に対する強い不安が存在し、かつ健康状態について容易に恐怖を感じる。
  • 病気についてのとらわれは少なくとも6ヵ月は存在するが、恐怖している特定の病気は、その間変化するかもしれない。
  • その病気に関連したとらわれは、身体症状症、パニック症、全般不安症、醜形恐怖症、強迫症、または「妄想性障害、身体型」などの他の精神疾患ではうまく説明できない

以上のように、パニック障害を除外する項目が記載されております。
よって、選択肢③は誤りと言えます。

『④社交恐怖』

DSM-5の診断基準Dに以下のような記載があります。

「その障害は、他の精神疾患によってうまく説明されない」とし、以下にパニック障害に該当しない例を列挙しています。

  • パニック発作が生じる状況は、社交不安症の場合のように、恐怖する社交的状況に反応して生じたものではない
  • 限局性恐怖症のように、限定された恐怖対象または状況に反応して生じたものではない
  • 強迫症のように、強迫観念に反応して生じたものではない
  • 心的外傷後ストレス障害のように、外傷的出来事を想起するものに反応して生じたものではない
  • 分離不安症のように、愛着対象からの分離に反応して生じたものではない。
また、ICD-10には「一定の恐怖症的状況で起こるパニック発作は、恐怖症の重篤さの表現とみなされ、診断的優先権は後者に与えるべきである。パニック障害それ自体は、F40.-のいかなる恐怖症も存在しない場合にのみ診断されるべきである」とされています。
そして、「F40.1 社会恐怖(症)」とされているので、明らかに除外できます。
上記より、社交的状況によるものを除外しているので、選択肢④は誤りと言えます。

『⑤広場恐怖』

DSM-5によると、毎年、青年と成人の約1.7%が広場恐怖症として診断されています。
広場恐怖症の症状が現れる前にパニック発作またはパニック症が起きる人は、一般人口で30%、臨床例では50%にのぼります

広場恐怖症のほとんどは、パニック障害によると考えられているため、パニック障害が治療されれば、広場恐怖症も改善することが多いとされています。
パニック障害の既往歴のない広場恐怖症は、しばしば慢性化するようです。

広場恐怖症に関するDSM-5の診断基準には以下のような記載があります。

  • パニック様の症状や、その他耐えられない、または当惑するような症状(例:高齢者の転倒の恐れ、失禁の恐れ)が起きた時に、脱出は困難で、援助が得られないかもしれないと考え、これらの状況を恐怖し、回避する。
  • 広場恐怖症はパニック症の存在とは関係なく診断される
    その人の症状の提示が、パニック症と広場恐怖症の基準を満たしたならば、両方の診断が選択されるべきである。
以上より、広場恐怖はパニック障害に伴われることが非常に多い症状と言え、選択肢⑤の内容が適切と言えます。

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