公認心理師 2022-129

睡眠時無呼吸症候群を疑わせる症状に関する問題です。

睡眠時無呼吸症候群の人と一緒に寝ていると、すっごい不安になります。

問129 睡眠時無呼吸症候群を疑わせる症状として、適切なものを2つ選べ。
① 血圧の低下
② 体重の減少
③ 日中の眠気
④ 寝付きの悪さ
⑤ 激しいいびき

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なし

解答のポイント

睡眠時無呼吸症候群の概要を把握している。

選択肢の解説

① 血圧の低下
② 体重の減少
③ 日中の眠気
④ 寝付きの悪さ
⑤ 激しいいびき

睡眠時無呼吸症候群は眠り出すと呼吸が止まってしまう病気です。

呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下するため、目が覚めて再び呼吸し始めますが、眠り出すとまた止まってしまいます。

問診などで睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、携帯型装置による簡易検査や睡眠ポリグラフ検査(PSG)にて睡眠中の呼吸状態の評価を行います。

PSGにて、1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数である無呼吸低呼吸指数(AHI)が5以上であり、かつ上記の症状を伴う際に睡眠時無呼吸症候群と診断します(10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や、呼吸が弱くなる「低呼吸」が、1時間あたり5回以上繰り返される状態)。

その重症度はAHI5~15を軽症、15~30を中等症、30以上を重症としています。

睡眠時無呼吸症候群では…

  1. 周囲からいびきを指摘される
  2. 夜間の睡眠中によく目が覚める(息苦しくなって目覚めることもある)
  3. 起床時の頭痛や体のだるい感じ
  4. 日中の眠気

…などを経験します。

睡眠時無呼吸症候群には、口や鼻から肺の入り口である声帯に至る空気の通り道が細くなるために発生する「閉塞型」、呼吸を調整する脳の働きが低下するために発生する「中枢型」、これら両方が関係する「混合型」に分けられますが、「閉塞型」が大部分を占めるので、こちらを念頭に置きつつ解説していきます。

閉塞型の睡眠時無呼吸症候群の原因のひとつは肥満とされています(実際に肥満は睡眠時無呼吸症候群全体の60%以上に見られます)。

睡眠中にはのどの緊張が緩むため、正常の人でも空気の通り道が細くなりますが、肥満の人ではのどへの脂肪沈着が増加するために空気の通りが悪くなるとされています。

体重増加により、のどに脂肪が蓄積して気道が狭くなるうえに、あおむけで寝ることでさらに気道が狭まるとされています。

この狭くなった気道を空気が通るたびに、大きないびきが起こり、この気道が完全に塞がれたときに無呼吸となります。

ただし、睡眠時無呼吸症候群は「肥満」の人だけにみられる病気ではなく、やせている人でも「下あごが小さい、後退している」「扁桃腺が大きい」などがあれば気道が狭くなりやすいため睡眠時無呼吸症候群の原因となります(ほかに、閉経後の女性や高齢者の方でも睡眠時無呼吸症候群は起こりやすくなります)。

そして、こうした無呼吸状態や低呼吸状態を一晩中繰り返すため、深い睡眠がまったくとれなくなり、日中に強い眠気が出現します。

このように、睡眠時無呼吸症候群では、選択肢③の「日中の眠気」や、選択肢⑤の「激しいいびき」が見られることがわかりますね。

また、上記の通り「中途覚醒」については示されていますが、選択肢④の「寝付きの悪さ」については示されておりません。

起きている間はのどの緊張が保たれていることが多いので、起きている間に無呼吸や低呼吸になることはありませんから、寝付きに影響することはないと考えるのが自然ですね(もちろん、睡眠時無呼吸症候群によって心身のバランスを崩したことで生じることはあり得るが、それ自体は睡眠時無呼吸症候群によって生じたものではないですね)。

睡眠時無呼吸症候群の問題は上記の止まりません。

酸素濃度が下がるため、これを補うために心臓の働きが強まり、高血圧となります。

酸素濃度の低下により動脈硬化も進み、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなります(低酸素状態が続くことで、心臓や血管に大きな負担がかかる)。

さらに睡眠不足によるストレスにより、血糖値やコレステロール値が高くなり、さまざまな生活習慣病やメタボリックシンドロームが引き起こされます(低酸素状態と睡眠不足の影響で、体に過度なストレスが加わると、糖の代謝にかかわるインスリンなどホルモンの働きが悪くなる)。

すなわち、選択肢①の「血圧の低下」は誤りであり、実際は「血圧の上昇」になります。

また、選択肢②の「体重の減少」も誤りで、むしろ肥満であることが睡眠時無呼吸症候群である可能性を高めますし、メタボリックシンドロームを招くことが示されていますね。

治療ですが、経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous positive airway pressure:CPAP)が標準的治療とされています(睡眠時無呼吸症候群では、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が約3~4倍高くなり、特に、AHI30以上の重症例では心血管系疾患発症の危険性が約5倍にもなります。しかし、CPAP治療にて、健常人と同等まで死亡率を低下させることが明らかになっています)。

CPAPはマスクを介して持続的に空気を送ることで、狭くなっている気道を広げる治療法です。

また、下あごを前方に移動させる口腔内装置(マウスピース)を使用して治療することもあります。

また、肥満者では減量することで無呼吸の程度が軽減することが多く、食生活や運動などの生活習慣の改善を心がけることが重要になってきます。

アルコールは睡眠の質を悪化させるので、晩酌は控える必要があります(寝付きは良くなるけど、深いねむりになりにくくなりますね)。

以上より、選択肢③および選択肢⑤は睡眠時無呼吸症候群を疑わせる症状として適切と判断できます。

一方、選択肢①、選択肢②および選択肢④は睡眠時無呼吸症候群を疑わせる症状として不適切と判断できます。

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