公認心理師 2022-104

Basedow病の症状に関する問題です。

甲状腺機能低下症の症状に関する問題は過去に出題されているので、それと併せて見ておくと良いでしょう。

問104 Basedow病の症状として、正しいものを1つ選べ。
① 動悸
② 便秘
③ 寒がり
④ 顔のむくみ
⑤ 声のかすれ

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解答のポイント

甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症の症状の違いを把握している。

選択肢の解説

① 動悸
② 便秘
③ 寒がり
④ 顔のむくみ
⑤ 声のかすれ

甲状腺ホルモンの働きは大きく分けると3つです。

  1. 細胞の新陳代謝を活発化する:脂肪や糖分を燃焼させてエネルギーを作り出し、全身の細胞の新陳代謝を促進します。また、新陳代謝で得られたエネルギーで体温を調節したり、心臓や胃腸、脳の働きを活性化します。
  2. 交感神経を刺激する:これによって、脈が速くなり、手が震えることもあります。
  3. 成長や発達を促す:母親の胎内で胎児が成長するとき、子どもが正常に成長し、発達するために甲状腺ホルモンは必要不可欠です。さまざまな働きがある中で、主に全身の代謝を高める役割があると言えます。

私たちの体には分泌量を一定に保つための甲状腺刺激ホルモンがあり、血液中のホルモン分泌量のささいな変動も見逃さず、常に一定量を保つような働きをしています。

なお、甲状腺は食べ物に含まれるヨウ素からホルモンを作り、血液中に分泌します。

甲状腺ホルモンの合成と分泌は、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンにより調節されており、視床下部-下垂体-甲状腺系にはネガティブフィードバック機構(ホルモンが分泌されて効果を発揮すると、この変化はホルモン分泌を抑制する方向に作用すること)が存在します。

つまり、一般に甲状腺刺激ホルモンの上昇は原発性甲状腺機能低下症を、低下は甲状腺亢進症を示すと考えられます。

以下は甲状腺機能低下症と甲状腺機能亢進症の症状をまとめたものです。

これらを前提にしつつ、続いてはバセドウ病について詳しく述べていくことにしましょう。

バセドウ病はドイツ語圏の疾患名であり、英語圏ではGraves病と呼ばれる(本症が報告された当時(1835年~1840年)から戦後しばらくの間は、日本の医学はドイツ語圏に属していた)。

バセドウ病自体は甲状腺機能亢進症の一つであり、甲状腺腫、眼球突出、頻脈を三徴とします。

この三つは報告者のBasedow博士の診療所があった土地の名前を冠してMerseburgの三徴とも呼ばれています。

三徴と言いながらも、バセドウ病は以下で述べるような多彩な症状を呈し、また、三徴が揃うのは約半数であり、初発年齢が高くなるにつれてその割合は低くなっていきます。

以下にバセドウ病の主な症状を述べていきましょう。

  • びまん性甲状腺腫:TSH(下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン)受容体が刺激し続けるので、甲状腺は肥大しびまん性甲状腺腫となる。
  • 眼症状:TSH受容体が眼窩部球後組織にも存在するため、眼球突出を来たす。内側から外側に眼球が押し出される。また、複視もしばしばみられる。バセドウ病患者に下方を見させると、眼球の運動により上眼瞼の運動が遅れるため、上眼瞼下縁と角膜の間に白い強膜が見える「von Graefe徴候」が認められる。同様に瞬きを繰り返させると、次第にその回数が減少し、痙攣様になってくる「Stellwag徴候」も認められる。
  • 循環器症状:甲状腺ホルモンは生体にとってのアクセルペダルのようなものなので、これを踏み込まれた心臓はフル回転せざるを得ない。まず、交感神経の被刺激性が高まって頻脈となり、動悸を訴える。さらに、しばしば心室細動を生じさせる。
  • 精神症状:アクセルペダルを踏まれた脳は回転が速くなるが、その一方で落ち着きが無くなり、カリカリするようになる。重症になると、せん妄に至ることもある。
  • 神経筋症状・骨症状:蛋白異化さようによって筋力低下や筋委縮を来たす。それに対して、アクセルペダルを踏まれるため腱反射は亢進する。また、手指には振戦を認める。バセドウ病では低カリウム性周期性四肢麻痺を伴うことがあり、特に日本を含む東アジア地域で多く見られる。
  • 消化器症状、発熱・体温上昇:アクセルペダルを踏み込めばエネルギー消費量も増大するが、これを補うために食欲は亢進する。ただし、エネルギー消費は摂取エネルギーを上回るため、体重は減少する。また、腸管の動きも活発になり、しばしば下痢を訴える。エネルギー消費の増大によって、発汗と体温上昇(37℃台)を来たし、異常に暑がるようになる。
  • 前脛骨粘液水腫:頻度は高くないが、足の脛などに限局性粘液水腫を来たすことがある。外見上はテカテカと光った皮膚の盛り上がりで、痛みやかゆみはなく、つまむと固い感じがする。

これらを踏まえると、便秘、寒がりなどは甲状腺機能低下症に見られる症状であることがわかります。

また、上記の表には含まれていませんが、顔のむくみも甲状腺機能低下症の代表的な症状になります(甲状腺ホルモンは代謝を高めるホルモン。甲状腺機能低下症では、このホルモンが不足するので、体中の物質や水分がうまく代謝できず、あちこちにたまって、むくむようになる)。

バセドウ病でむくむ可能性があるのは足の脛であると上記で示されていますね。

また、重度の甲状腺ホルモン低下によって声帯にむくみを起こした場合にも、声がかすれる場合があるとされていますから、選択肢②~選択肢⑤については、甲状腺機能低下症の症状が列挙されていることになりますね。

以上より、選択肢①が正しいと判断でき、選択肢②~選択肢⑤は誤りと判断できます。

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