公認心理師 2020-129

副交感神経が優位な状態で生じる現象を選択する問題です。

交感神経の役割、副交感神経の役割を踏まえておけば、身体の各部がどのように働くかもイメージしやすいだろうと思います。

問129 副交感神経系が優位な状態として、正しいものを2つ選べ。
① 血管拡張
② 血糖上昇
③ 瞳孔散大
④ 胃酸分泌の減少
⑤ 消化管運動の亢進

解答のポイント

交感神経と副交感神経のそれぞれがどのような状況で作用するか理解し、それを踏まえて身体の各機能の反応を把握する。

選択肢の解説

① 血管拡張
② 血糖上昇
③ 瞳孔散大
④ 胃酸分泌の減少
⑤ 消化管運動の亢進

人間の神経系は「中枢神経系」と「末梢神経系」に分類されます。

「中枢神経系」は「脳」と「脊髄」を含み、「末梢神経系」には「体性神経系」と「自律神経系」が含まれます。

中枢神経系は、脳と脊髄にあるすべてのニューロンを含み、正確には大脳・小脳・脳幹・脊髄から構成されています。

これに対して末梢神経系は、脳と脊髄を、身体の他の部分と連結している神経です。

「自律神経系」はさらに「交感神経系」と「副交感神経系」に分かれます。

本問で問われているのは、この「副交感神経系」の働きになりますが、後述するように、交感神経系と副交感神経系は拮抗的であり、互いの作用が反対であることも多いので、ここではまとめて解説していくことにしますね。

まず「体性神経系」ですが、骨格筋を制御し、皮膚、筋肉および各種の感覚受容器から情報を受け取ります。

これに対して「自律神経系」では、内分泌腺及び心臓、血管、胃や腸の内部を含む平滑筋を制御します(顕微鏡で見ると滑らかなので、平滑筋と名付けられました)。

自律神経系は、それが制御する活動の多くが、消化や循環のように自律的あるいは自己制御的で、眠っていても意識がなくても活動し続けるところから名づけられています。

交感神経系は通常、強い興奮状況で活動し、副交感神経は休息時に働き、身体の正常な状態(=極度の興奮状態と植物状態との間のどこかを意味する)は、この2つの神経系のつり合いによって維持されています。

交感神経系はまとまって働くことが多いのが特徴ですが、副交感神経は1回に一つの器官に作用することが多いです。

副交感神経系は消化に従事し、一般に身体資源を保存および保護する機能であって、交感神経系の興奮に伴って起こる現象に比べれば、副交感神経系が優位な方がずっと少ないエネルギーで過ごすことができます。

交感神経系と副交感神経系は、通常は拮抗的に作用しております(以下の図を見れば、交感神経と副交感神経の両方が関わっているものが多いことがわかりますね)。



ただ例外もあり、強い恐怖状況では交感神経系が優位になりますが、恐怖が極度になると失禁という副交感神経系の徴候が生じます。

他にも、男性の性行為では勃起(副交感神経)と射精(交感神経)という状況も見られ、本来は拮抗的でも、複雑な相互作用もあるということですね。

男性が加害者の強制性交では、本来交感神経が優位な状況のはずですが、勃起という副交感神経優位な反応が起こるのは身体の仕組みとして本来ならば生じないはずなのです(だからごく一部の男にしか生じない現象なのかもしれない)。

暴力を振るうときには勃起できないのが生理的に順当なはずですし、射精に至っては交感神経系優位性が副交感神経系優位性と急速に交代しなければならず、それが暴力行為の最中に起こるのは生理学的に理解し難いです。

しかし、そういう男がいるのは事実ですから、古典的な泥棒が侵入してまず排便を行うといいますが、それを似ているかもしれませんね。

さて、以下は交感神経系が優位な場合と、副交感神経系が優位な場合で、各器官にどのような反応を生じさせるかをまとめたものです(本問と関わる部分は赤字にしてあります)。



もちろん他にもたくさんあるのですが、代表的なものと本選択肢に関わるものを中心に挙げました。

では、以下では本問の選択肢に関わる部分について詳しく見ていきましょう。

まず選択肢①の「血管拡張」です。

活発な活動時は交感神経が優位になりますから、全身に血液を送るために心臓の鼓動が速くなり、血液を全身に素早く巡らそうとするため血圧も上がります。

血圧が上がるということは「血管が細くなる」ということですよね(川の流れでも、同じ量の水であれば細い川の方が流れが速いですね)。

逆に副交感神経が優位な状況では、一般に、エネルギーを温存し、落ち着かせ、体を回復させる方向へ傾きますから、心拍数を減らし、血圧を低下させます。

当然、血管は太くなる(つまり、拡張する)ことになりますね(同じ水の量なら太い川の方が流れがゆっくり)。

以上より、選択肢①の「血管拡張」は副交感神経が優位な状態と言えますね。

続いて、選択肢②の「血糖上昇」についてです。

まず食事をすると一時的に血液内の血糖値が上がります。

こうした血糖値の一時的な上昇は、間脳の「視床下部」で感知されて副交感神経が刺激され、その刺激がすい臓のランゲルハンス島のB細胞に伝わることでインスリンが分泌されます。

こうした仕組みによって、食事によって一時的に上昇した血糖値は再び安定することになります。

つまり、副交感神経系が優位な状況では血糖値が下がるということですね。

逆に空腹など血糖値が低下した状態になると、視床下部で感知されて交感神経が刺激され、その刺激がすい臓のランゲルハンス島のA細胞に伝わることでグルカゴンを分泌させます。

グルカゴンは肝臓に貯蔵されているグリコーゲンをグルコースに分解させ、血糖値を上昇させるので、交感神経が優位な状況では血糖値が上昇するということですね。

ちなみに、血糖に関してはホルモンなどの働きも大きいことに留意しておく必要があります。

以上より、選択肢②の「血糖上昇」は交感神経が優位な状態と言えますね。

次に選択肢③の「瞳孔散大」についてです。

交感神経優位な状況は一種の興奮状態です。

こうした状況では、瞳孔は開いてより多くの視覚情報が脳に入るようになります(まわりの明るさに関係なく生じます)。

また、目がよく見えるように涙の分泌が減ります。

交感神経系が優位な状況とは、とっさの対応が必要な時に備える体制を作るわけですから、細かな情報も見逃さないような身体の状態が形成されるわけです。

逆に休息時(副交感神経が優位な状況)には、瞳孔は縮小することになります。

以上より、選択肢③の「瞳孔散大」は交感神経が優位な状態と言えますね。

最後に選択肢④の「胃酸分泌の減少」と、選択肢⑤の「消化管運動の亢進」を合わせて解説していきましょう。

先述の通り、交感神経が優位な状況はとっさの対応が求められるわけですから、「食べ物を消化する」という「その瞬間の生存に不要な」一連の働きは抑制されます。

ですから、交感神経が優位な状況では「胃酸分泌が減少」しますし、「消化管運動は抑制」することになります。

落ち着いた状況(副交感神経優位)では、胃酸の分泌は上昇しますし、消化管運動は亢進しますね。

ストレスがかかると、脳は落ち着かせようとして副交感神経を働かせて胃酸の分泌が増加するので「ストレスで胃が痛い」という現象が生じるわけです。

消化管は口から肛門までを指しますが、活動中(交感神経系優位)に排尿や排便があってはならないので、膀胱の筋肉はゆるみ尿の貯留量が増えたり、肛門括約筋がより締まって大便が出ないようになります。

以上より、選択肢④の「胃酸分泌の減少」は交感神経優位であり、選択肢⑤の「消化管運動の亢進」は副交感神経優位な状態であると言えます。

このように見てみると、大雑把に言えば、交感神経は「その瞬間を生きる」という役割を担っているように見え、副交感神経は「種の保存」のイメージに近い働きをしているように捉えることができそうです。

実際はこれらが拮抗的に働いていますから、いずれの方向に極端に傾くことなくバランスを取って生体を維持させているということですね。

上記の通り、選択肢①および選択肢⑤が副交感神経系が優位な状態であると判断できます。

対して、選択肢②、選択肢③および選択肢④は交感神経系が優位な状態と判断できます。

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