公認心理師 2020-120

慢性疲労症候群に関する概要が問われています。

詐病と間違えられることも多いため、こうした疾患の存在を知っておくことが大切です。

TEGのFCやACとの関連もあるとされていますね。

問120 慢性疲労症候群について、不適切なものを1つ選べ。
① 男性より女性に多い。
② 筋肉痛がよくみられる。
③ 睡眠障害がよくみられる。
④ 6か月以上持続する著しい倦怠感が特徴である。
⑤ 体を動かすことによって軽減する倦怠感が特徴である。

解答のポイント

慢性疲労症候群の概要について理解している。

選択肢の解説

① 男性より女性に多い。
② 筋肉痛がよくみられる。
③ 睡眠障害がよくみられる。
④ 6か月以上持続する著しい倦怠感が特徴である。

慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome:CFS)とは、健康に生活していた人が風邪などに罹患したことがきっかけとなり、それ以降原因不明の強い全身倦怠感とともに、微熱、頭痛、筋肉痛、思考力の低下、抑うつ、不安などが長期に続いて健全な生活が送れなくなるという病態であり、CDC(米国疾病対策センター)により1988年に提唱された比較的新しい疾患概念です。

この症候群は、主に20~50歳の人でみられ、男性より若年の女性や中年の女性でより多くの記述がありますが、小児を含むどの年代の人でも認められています(こちらが選択肢①の内容の正誤判断になりますね)。

朝起きたときからひどい疲労を感じ、それが1日中続き、この疲労はしばしば身体活動や精神的ストレスを感じているときに悪化しますが、筋力の低下、関節や神経の異常などの証拠がみられることはありません。

ウイルス感染症様の症状が出ているときかその後で極度の疲労が生じ、発熱、鼻水、リンパ節の痛みや圧痛が伴いますが、多くの人では、先にウイルス感染症様の症状が出ることなしに疲労が現れ始めます。

そのほかに、集中力の低下、不眠、のどの痛み、頭痛、関節痛、筋肉痛、腹痛などの症状が現れることもあります。

抑うつも見られ、特に症状が重度であるか、悪化しつつあるときにその傾向があります。

症状には、関連疾患である可能性がある線維筋痛症と重なる部分がしばしばみられます。

これまで確定診断に結びつくような検査異常(バイオマーカー)は同定されておらず、したがって、その診断には臨床症状を中心とした診断法が用いられており、日本でのCFS診断には厚生労働省(旧厚生省)の研究班がHolmes診断基準を基に1991年に作成した以下にある厚生省CFS診断基準が用いられています。


A.大クライテリア(大基準)

  1. 生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6ヶ月以上の期間持続ないし再発を繰り返す(50%以上の期間認められること)。
  2. 病歴、身体所見.検査所見で表2に挙げられている疾患を除外する。

B.小クライテリア(小基準)

ア)症状クライテリア(症状基準)
※以下の症状が6カ月以上にわたり持続または繰り返し生ずること。

  1. 微熱(腋窩温37.2~38.3℃)ないし悪寒 
  2. 咽頭痛 
  3. 頚部あるいは腋窩リンパ節の腫張 
  4. 原因不明の筋力低下 
  5. 筋肉痛ないし不快感 
  6. 軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感 
  7. 頭痛
  8. 腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛 
  9. 精神神経症状(いずれか1つ以上)
    羞明、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、錯乱、思考力低下、集中力低下、抑うつ
  10. 睡眠障害(過眠、不眠)
  11. 発症時、主たる症状が数時間から数日の間に発現

イ)身体所見クライテリア(身体所見基準)(2回以上、医師が確認)
1.微熱、2. 非浸出性咽頭炎、3. リンパ節の腫大(頚部、腋窩リンパ節)

◎大基準2項目に加えて、小基準の「症状基準8項目」以上か、「症状基準6項目+身体基準2項目」以上を満たすと「CFS」と診断する。

◎大基準2項目に該当するが、小基準で診断基準を満たさない例は「CFS(疑診)」とする。

◎上記基準で診断されたCFS(疑診は除く)のうち、感染症が確診された後、それに続発して症状が発現した例は「感染後CFS」と呼ぶ。


上記の通り、慢性的な疲労感とともに、発熱、リンパ節腫大、咽頭痛などの感染症様症状、頭痛、筋肉痛、関節痛、脱力感などの膠原病様症状、睡眠障害、思考力低下、抑うつ、不安などの精神・神経症様症状などの多彩な症状が認められる疾患です。

このように、当人には説明がつかない疲労が6カ月以上継続することが、慢性疲労症候群の診断に重要な点であることが示されています(選択肢④の内容ですね)。

上記の中に、選択肢②の「筋肉痛」、選択肢③の「睡眠障害」が症状として示されていますね。

また、旧厚生省は慢性疲労症候群診断基準(試案)の中で「PS(performance status)による疲労・倦怠の程度」を以下の通り示しています。


0: 倦怠感がなく平常の生活ができ、制限を受けることなく行動できる。
1: 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、 倦怠感を感ずるときがしばしばある。
2: 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、 全身倦怠の為、しばしば休息が必要である。
3: 全身倦怠の為、月に数日は社会生活や労働ができず、 自宅にて休息が必要である。
4: 全身倦怠の為、週に数日は社会生活や労働ができず、 自宅にて休息が必要である。
5: 通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、 週のうち数日は自宅にて休息が必要である。
6: 調子のよい日は軽作業は可能であるが、 週のうち50%以上は自宅にて休息している。
7: 身の回りのことはでき、介助も不要ではあるが、 通常の社会生活や軽作業は不可能である。
8: 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、 日中の50%以上は就床している。
9: 身の回りのことはできず、常に介助がいり、 終日就床を必要としている。


こうした基準をもって、疲労度の査定を行っていくことになります。

多くの研究が行われているにもかかわらず、慢性疲労症候群の原因は分かっていません。

原因が1つなのか複数なのか、身体的なものか精神的なものかなどについて議論が続いていますが、いずれにしても現れる症状はその人にとって本物かつ現実のものとみなすことが大切です(詐病とされてしまうことがある)。

種々の生活環境ストレスによって引き起こされた神経・内分泌・免疫系の変調に基づく病態であり、免疫力の低下に伴って種々のウイルスの再活性化が惹起され、これを制御するために産生されたインターフェロン(IFN)などのサイトカインが脳・神経系の機能障害を生じていると思われています。

サイトカインとは、免疫システム応答や他の生理システムとのコミュニケーションにおいて重要な役割を果たす有力な免疫伝達物質です。

そして、ホメオスタシスを維持して、適切に感染症と損傷に反応します。

慢性疲労症候群の一般の症状は、ナチュラルキラー細胞の細胞毒性活性の減少とリンパ球の増殖、アレルギー性自己免疫活性の増加を含み、そのような側面は、Th2のTh1細胞活性に対する相対的上昇と整合しています。
※Th1:速やかに血流に入り、感染部位へ移動し、サイトカインを分泌し、マクロファージの活性化や炎症反応を引き起こす。これによりマクロファージの細胞外環境で感染した病原体を貪食し殺傷する能力、および、プロフェッショナル抗原提示細胞としての機能が強化される。
※Th2:サイトカインを分泌し、二次リンパ組織で同じ抗原を認識するナイーブB細胞を活性化させる。活性化B細胞は胚中心反応により、細胞分裂・クラススイッチ・親和性成熟を行い、最終的に抗体を分泌する形質細胞へと分化する。

しかしながら、未だこの論点を確認することができていないのが現状です。

確実に有効な治療法は確立していませんが、抗酸化療法(ビタミンC大量、CoQ10 など)、免疫賦活療法(漢方薬など)、向精神薬(SSRI、抗うつ薬、抗不安薬など)、精神療法(認知行動療法)、段階的運動などが行われます。

認知行動療法では、将来に対する前向きな展望や回復を妨げたり、人のやる気を損ねたりするような思考に狙いを定めた、短期間の精神療法を行います。

また、休養は、長く取りすぎるとデコンディショニング(コンディショニング(調節するの逆で、長期間の安静・臥床の結果、運動耐容能すなわち運動能力の低下・心拍数や血圧調節の異常・骨格筋の萎縮・骨粗鬆症などといった身体調節機能の異常が生じること)が起こり、慢性疲労症候群の症状を実際に悪化させることがあります。

ウォーキング、水泳、サイクリング、ジョギングなどの有酸素運動を、医療専門家の綿密な監督の下で徐々に始めて定期的に続けることにより(段階的運動プログラム)、疲労感を改善し、身体機能を高めることができます。

以上が慢性疲労症候群の概要となります。

上記で示されたように、6か月以上持続する著しい倦怠感が特徴であり(選択肢④)、男性より女性に多く(選択肢①)、筋肉痛や睡眠障害がよく見られる(選択肢②および選択肢③)とされています。

よって、選択肢①、選択肢②、選択肢③および選択肢④は適切と判断できます。

⑤ 体を動かすことによって軽減する倦怠感が特徴である。

こちらは慢性疲労症候群で見られる特徴ではありません。

慢性疲労症候群の治療で段階的な運動療法はありますが、運動をしたからといって倦怠感が軽減されるわけではなく、長い休養によるデコンディショニングで症状を悪化させるのを防ぐために行います。

本選択肢にある「体を動かすことによって軽減する」で思いつくのは、むずむず脚症候群ですね。

公認心理師 2020-131」でむずむず脚症候群に関しては詳しく述べていますが、この診断基準の中に「歩いたり、ストレッチしたりといった動きによって、少なくとも動かしている間は部分的、もしくは完全に症状がなくなってしまう」とあります。

本選択肢は、むずむず脚症候群の診断基準を引っ張ってきたものと思われます。

以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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