公認心理師 2022-87

5因子モデルの開放性に関する語群を選択する問題です。

こちらの問題は5因子モデルに関する、それなりにしっかりとした理解が求められているという印象があります。

ポイントは開放性が「何に関する開放性か」を知っておくことでしょうね。

問87 パーソナリティの5因子モデルのうち、開放性に関連する語群として、最も適切なものを1つ選べ。
① 寛大な、協力的な、素直な
② 怠惰な、無節操な、飽きっぽい
③ 陽気な、社交的な、話し好きな
④ 悩みがち、動揺しやすい、悲観的な
⑤ 臨機応変な、独創的な、美的感覚の鋭い

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解答のポイント

5因子モデル(ビッグファイブ)の下位特性およびその高低による特徴を把握している。

選択肢の解説

① 寛大な、協力的な、素直な
② 怠惰な、無節操な、飽きっぽい
③ 陽気な、社交的な、話し好きな
④ 悩みがち、動揺しやすい、悲観的な
⑤ 臨機応変な、独創的な、美的感覚の鋭い

5因子理論とは、パーソナリティ特性の個人差を以下の主たる5つの特性次元によって説明しようとする考え方です。

  1. 神経症傾向:情動的に不安定で不安を感じやすい。
  2. 外向性:対人的・社会的に活動的
  3. 親和性(調和性):他者を信頼し協調的に振る舞う
  4. 誠実性(勤勉性):自らを律して行動し目標の遂行に忠実である
  5. 経験への開放性(知性/教養):知的好奇心が高く想像力が豊かである

パーソナリティの特性研究においては、長らく基本的な特性次元に関して共通の理解が示されることはありませんでした。

しかし、1960年代になると人間‐状況論争を契機として、特性論に反対の立場の研究者に対する理論武装が求められ、80年代以降になると質問紙法を用いた調査データの因子分析的な研究によってパーソナリティ特性が比較的共通した5つの特性次元によって記述できることが知られ始め、ひとまずの統一見解としてこの5因子が扱われるようになりました。

有名なのが、Allport以来の心理辞書的研究アプローチの流れを汲んでいる「ビッグ・ファイブ」や、心理辞書的研究を基にまとめられた5つの特性次元を質問紙を用いて測定しようとした「5因子モデル」であり、特に後者はビッグ・ファイブにも対応させたNEO-PI-Rにつながっています。

オルポート→BigFive(ゴールドバーグ)≒5因子モデル(コスタ&マクレー)→NEO-PI-Rという流れがあることを把握しておくと良いだろうと思います(この辺についてはこちらの記事をお読みください)。

Costa&McCraeの開発したNEO-PI-Rでは、上記の5因子にはそれぞれ6つの下位次元があるとされています。

  1. 神経症傾向:不安、敵意、抑うつ、自意識、衝動性、傷つきやすさ
  2. 外向性:温かさ、群居性、社交性、活動性、刺激希求性、よい感情
  3. 経験への開放性(知性/教養):空想、審美性、感情、行為、アイデア、価値
  4. 親和性(調和性):信頼、実直さ、利他性、応諾、慎み深さ、優しさ
  5. 誠実性(勤勉性):コンピテンス、秩序、良心性、達成追求、自己鍛錬、慎重さ

ちなみに上記のビッグファイブ(5因子)の順番は、因子が確認された順番に並べてあります。

Eysenckらによって「神経症傾向」と「外向性」が見出され、その後、「開放性」「調和性」「誠実性」の順で見出されました。

ここでは、より上記を詳しく見ていくことにしましょう。

【神経症傾向】

神経症傾向とは、怒り、不安、抑うつなどの否定的な感情を経験する傾向のことであり、これは「感情の不安定性」や逆に「感情の安定性」と呼ばれることもあります。

安定性が高いということは、安定した穏やかな性格であることを示しているが、無感動で無関心であると見ることもできます。

対して低い安定性は、動的な個人にしばしば見られる反応性で興奮性の人格として現れるが、不安定もしくは自信不足と認識されることがあります。

先述の通り神経症傾向には「不安、敵意、抑うつ、自意識、衝動性、傷つきやすさ」が下位特性として示されていますが、本問を解くにあたって大切なのはこれらの傾向が「低い場合」と「高い場合」のそれぞれの特徴を掴んでおくことです。

こちらを以下に示します。

下位特性低い値を示す場合高い値を示す場合
怒り
(敵意)
温和:あまり怒ることはない。激情的:特に物事が思ったように進まないときに、激しく感情が高ぶる。
不安自信がある:穏やかで自信がある傾向がある。心配性:起こるかもしれないことをいろいろ心配しがちである。
抑うつ満足:自分に大体満足している。悲観的:おもしろくないことを頻繁に考える。
衝動性自制心がある:欲望は特に強くなく、欲望を制御できる。快楽主義:欲望を強く感じ、欲望に誘惑されやすい。
自意識過剰自信に満ちた:当惑することはほとんどなく、大抵の場合は自信にあふれている。自己を意識する:人が自分をどう思うかに敏感である。
傷つきやすいプレッシャーに強い:予期しないことにも落ち着いて効果的に対処する。低ストレス耐性:ストレスの多い状況に負けやすい。

これらの内容は、選択肢④の「悩みがち、動揺しやすい、悲観的な」に該当するものと考えられます。

悩みがち=悲観的、動揺しやすい=低ストレス耐性、悲観的な=悲観的、にそれぞれ対応していると見なして矛盾がないでしょう。

よって、選択肢④は神経症傾向に関する語群であり、開放性に関連する語群ではないと考えられます。

【外向性】

外向性は、活力、興奮、自己主張、社交性、他人との付き合いで刺激を求める、おしゃべりであることを表していますが、過度の外向性はしばしば注意を引き、威圧的であると認識されます。

外向性が低いと内気で内省的な性格が現れ、それはよそよそしい、または自己完結的であると受け取られることがあります。

このような状況では、内向的な人とは対照的に、外向的な人が社会的な状況でより優勢に見えることがあります。

先述の通り外向性には「温かさ、群居性、社交性、活動性、刺激希求性、よい感情」が下位特性として示されていますが、本問を解くにあたって大切なのはこれらの傾向が「低い場合」と「高い場合」のそれぞれの特徴を掴んでおくことです。

こちらを以下に示します。

下位特性低い値を示す場合高い値を示す場合
温かさ
(親しみやすさ)
遠慮がち:内向的で、人と打ち解けない。外向性:すぐに友達ができ、人といると満足する。
群居性
(自己主張)
控えめ:特にグループの中では、話すより聞くほうが好き。強い自己主張:意見をはっきり述べ、場を支配する。グループを先導することに満足を覚える。
社交性独立心が強い:自分に時間を使いたいと強く思う。付き合い上手:人と一緒にいることを楽しむ。
活動性
(活発度)
のんびり:ゆったりしたペースの生活が好き。精力的:スケジュールに予定が多く埋まっていて忙しい状態を好む。
刺激希求性平穏を求める:静かで、穏やかで、安全なことを好む。刺激を求める:リスクを負うことに興奮を覚え、いろいろ起こらないと退屈に感じる。
よい感情
(明朗性)
険しい:いつも真面目で、冗談をあまり言わない。陽気:楽しい人で、その楽しさを人と分かち合う。

これらの内容は、選択肢③の「陽気な、社交的な、話し好きな」に該当するものと考えられます。

陽気な=陽気、社交的な=付き合い上手、話し好きな=強い自己主張、それぞれ対応していると考えられます(話し好きなは外向性かもしれないですね…)。

よって、選択肢③は外向性に関する語群であり、開放性に関連する語群ではないと考えられます。

【経験への開放性(知性/教養)】

開放性とは、芸術、感情、冒険、珍しいアイディア、想像力、好奇心、および多様な経験に対する一般的な評価になります。

開放性が高い人は知的好奇心が強く、感情に関してオープンで、美しさに敏感で、新しいことに挑戦する意欲があるとされ、開放性が低い閉鎖的な人と比べると、創造的で自分の気持ちをよく理解している傾向があります。

また、型破りな信念を持っている可能性も高いとされています。

開放性の下位特性には「空想、審美性、感情、行為、アイデア、価値」が示されていますが、本問を解くにあたって大切な、これらの傾向の「低い場合」と「高い場合」のそれぞれの特徴を掴んでおきましょう。

こちらを以下に示します。

下位特性低い値を示す場合高い値を示す場合
空想
(想像力)
地に足のついた:想像よりも事実を優先する。空想的:豊かな想像力を持っている。
審美性
(芸術的興味)
芸術に無関心:ほとんどの人に比べて芸術的活動や創造的活動への興味が薄い。芸術の鑑賞眼がある:美しいものが好きで、創造的経験を求めている。
感情
(情動性)
冷静:自分の感情について考えたり、感情を表に出すことがほとんどない。感情に自覚的:自分の感情を自覚していて、感情の表し方を知っている。
行為
(冒険)
着実:よく知っているルーチンを快適に感じ、そこからの逸脱を好まない。冒険的:新しい経験を熱望している。
アイデア
(知性)
具象:世界をそのまま捉えることを好み、抽象的な考えをすることはめったにない。哲学的:新しい考えに対してオープンであり、興味があり、もっと知りたいと望む。
価値
(自由主義)
権力を尊重:伝統に従って安定を維持することを好む。権力に対して挑戦的:権力や伝統的価値に挑戦して変化をもたらしたいと思っている。

これらの内容は、選択肢⑤の「臨機応変な、独創的な、美的感覚の鋭い」に該当するものと考えられます。

臨機応変な=冒険的、独創的な=空想的、美的感覚の鋭い=芸術の鑑賞眼がある、にそれぞれが対応しているものと思われます(冒険的についてはちょっと自信がないですが…)。

下位特性の表現が参考にする書籍等によって異なるので、ちょっと表現の不一致感は否めませんが、開放性自体は「知性への開放性」と捉えて理解しておくと選択肢⑤に辿り着きやすいのではないかなと思っています。

以上より、選択肢⑤が開放性に関連する語群であると判断できます。

【親和性(調和性)】

親和性(調和性)特性は、社会的調和に対する一般的関心における個人差を反映します。

親和性(調和性)がある人物は、他人とうまくやっていくことを大切にし、彼らは概して思いやりがあり、親切で、寛大で、信頼でき、助けになり、自分の利益を他人に譲ろうとします。

調和できる人は、人間性についても楽観的な見方をしていることが多く、他人に対して疑い深く敵意を抱くのではなく、思いやりがあり協力的である傾向を表しています。

そしてこの親和性(調和性)は、その人の信頼と人を手助けをする性質、加えて一般的に気立てがいいかどうかの尺度でもあり、高い親和性(調和性)はしばしばナイーブないし従順であると見なされます。

非調和的な人は、他人とうまくやっていくことよりも自分の利益を優先し、一般的に他人の幸福には関心がなく、他人のために精一杯頑張ることも少ないとされています。

そういった人は、自身が持つ他人の動機に対する懐疑心により、不信感を抱き、非友好的で、非協力的になるリスクがあると示されています。

先述の通り親和性(調和性)には「信頼、実直さ、利他性、応諾、慎み深さ、優しさ」が下位特性として示されており、これらの傾向が「低い場合」と「高い場合」のそれぞれの特徴を掴んでおくようにしましょう。

こちらを以下に示します。

下位特性低い値を示す場合高い値を示す場合
信頼
(信用性)
人を警戒する:人の意図を警戒し、簡単には信用しない。人を信じる:人の善意を信じ、簡単に人を信用する。
実直さ
(道徳性)
不義・不道徳:目的のためにはあらゆる手段を使う。不屈:出世のために人を利用するのは正しくないと考える。
利他性自己中心的:人のために時間を使うより、自分のことをしたい。利他的:人を助けることで充実感を味わい、人のために尽くす。
応諾
(協調性)
強情:人への反論を避けない。寛容:進んで対立を避けようとする。
慎み深さ
(謙虚)
高慢:自己を敬愛し、自分に満足している。慎み深い:注目されると落ち着かない。
優しさ
(共感性)
冷酷:人は、一般的に他人に依存するのではなく、自分自身でなすべきだと考える。親身:人の気持ちを感じ、思いやりがある。

これらの内容は、選択肢①の「寛大な、協力的な、素直な」に該当するものと考えられます。

寛大な=寛容、協力的な=利他的、素直な=人を信じる、それぞれ対応していると考えられます(おそらく…。こういう問題は1冊の本で解説した方が良いのでしょうが、なかなか見当たらないもので)。

よって、選択肢①は親和性に関する語群であり、開放性に関連する語群ではないと判断できます。

【誠実性(勤勉性)】

誠実性とは、組織化され信頼できる傾向、自己コントロール能力を示す傾向、忠実に行動する傾向、達成を目指す傾向、自発的な行動よりも計画的な行動を好む傾向を表しています。

高い誠実性は、頑固であり集中力があると思われがちであるが、低い誠実性は柔軟性と自発性と関連しているが、杜撰さと信頼性の欠如として現れることもあります。

先述の通り誠実性(勤勉性)には「コンピテンス、秩序、良心性、達成追求、自己鍛錬、慎重さ」が下位特性として示されており、これらの傾向が「低い場合」と「高い場合」のそれぞれの特徴を掴んでおくようにしましょう。

こちらを以下に示します。

下位特性低い値を示す場合高い値を示す場合
コンピテンス
(自己効力感)
自信がない:自分の目標達成能力を疑うことが多い。自信がある:取り組んだことには成功できると感じる。
秩序非組織的:日常生活で組織のために時間を多く取らない。組織的:生活の中で組織構造の必要性を強く感じる。
良心性
(忠実さ)
気楽:規則や義務は無視して、やりたいことをやる。従順:規則や義務が不都合であってもまじめに守る。
達成追及
(達成努力)
満足:自分の達成したレベルに満足しており、野心的な目標を設定する必要を感じない。意欲的:自分に高い目標を設定し、その達成のために 真剣に取り組む。
自己鍛錬
(自制力)
中断:長期間、むずかしいことを続けられない。持続:きついことにも立ち向かってあきらめない。
慎重さ
(注意深さ)
大胆:決断に慎重で時間を費やすより、すぐに実行する。慎重:決断する前に注意深く考え抜く。

これらの内容は、選択肢②の「怠惰な、無節操な、飽きっぽい」に該当するものと考えられます。

怠惰な=気楽、無節操な=気楽、飽きっぽい=中断、それぞれ対応していると考えられます(怠惰は非組織的かもしれません…)。

よって、選択肢②は誠実性に関する語群であり、開放性に関連する語群ではないと判断できます。

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