公認心理師 2018-9

パーソナリティの特性論に関する問題です。
今回の試験では、「○○はどれか?」という単に知識を問う問題が少なかったように思いますが、本設問は知識を問うているものでしたね。

解答のポイント

「根源特性」と「表面特性」という用語から特定の心理学者を想起できること。
「16因子」と聞いて特定の心理学者を想起できること。

選択肢の解説

『①C.R.Cloninger』

クロニンジャーという名前がインパクトがありますね。
彼はパーソナリティの規定要因として遺伝と環境に分け論じました。
遺伝要因として、刺激探究、罰回避、報酬依存、持続性の4側面を挙げました。
環境要因として、自己志向、協調性、自己超越の3側面を挙げました。これらはそれぞれ自己・社会・宇宙レベルでの個人の成長度・発達度を想定しています。

クロニンジャーの7次元モデルは精神疾患との関連で語られることも多いです。
これらの点から、選択肢①は設問の内容には合致しないことが分かります。

『②G.A.Kelly』

ケリーは、人が外界を認識するために用いている見方(コンストラクト)の個人差がパーソナリティに他ならないと考え、認知システムの独自性を強調するパーソナル・コンストラクト理論を提唱しました。

基本公理として「人間の処理過程は事象を予測するやりかたによって心理学的に規定される」という考えが示されており、こうした事象の予測にはコンストラクトが用いられるとした。
コンストラクトとは「現実を眺める透明なパターンあるいは眼鏡」であり、これを知ることこそがパーソナリティを理解することであると考えました。
これらの内容から、選択肢②も設問の記述には合致しないと思われます。

『③H.J.Eysenck』

アイゼンクについては別記事でも書いているので、ご参照ください。
行動療法の包括的定義などでも有名ですね。

アイゼンクは、人の類型は特性から形成されると考え、類型論と特性論の統合を目指しました。
彼は性格特性を、以下の4つの水準の階層で捉え定めています。
階層1:個別的(特殊)反応水準:個人特有の行動様式
階層2:習慣反応水準;様々な状況で1が生じることで習慣的になる
階層3:特性水準;類似した2同士が集まって構成される
階層4:類型水準;3同士の因子分析により示された高次の類型次元

さらに因子分析によって、性格を以下の3つの次元を見出しました。
このうち「モーズレイ人格目録;MPI」は、内向−外向と神経症傾向の二次元からなっています。

これらの業績は、設問の内容に合致しないと判断できます。

『④J.P.Guilford』

精神測定法の研究、特に知能の因子構造について独自のモデルを提案したことで知られています。
人間の知能は内容4種類、操作5種類、所産6種類の計120種類からなるという説を唱えました。
YG性格検査の「G」にあたる人物(Yは矢田部です)。
YG性格検査はギルフォードが開発した3種の性格検査をベースに、矢田部らが作成したもので、12の性格特性の得点プロフィールに基づいて、被験者を5つの性格類型に分けていく。
これらの内容は、設問の記述とは合致しないと判断できます。

『⑤R.B.Cattell』

キャッテルは、オルポートの意図を更に推し進めて、因子分析という科学的な方法を用いてパーソナリティ構造を明らかにしようとしました。
(ただ、特性論+因子分析という用語では、ビッグファイブの方が有名ですね)

オルポートと同様、類似の社会経験をしている全ての人に共通の「共通特性」と、特定個人に特有の「独自特性」に分けました。
そして「独自特性」は、以下の二つに分けられると考えました。

  1. 表面特性:外部から観察可能な、互いに相関し合っているクラスター;束)
  2. 根源特性:表面特性を因子分析して見出された、表面のさらに根底にある特性。

彼は少なくとも25個の根源特性を見出しており、そのうち16因子を測定するために標準化されたのが16因子パーソナリティ因子質問紙(16PF)になる。

これらの内容は、設問の記述と合致するので、この選択肢が正しいと判断できます。
意外とややこしいのが、オルポートも支配的‐服従的、持久的‐動揺的、外向的‐内向的などの14の共通特性にまとめあげ、これらを測定して人の性格をプロフィールで描くことができる心誌(Psychograph)を作成したというのがあります。
オルポートと迷わせる設問かな、と思いましたが、オルポートの選択肢がなかったので知っていれば比較的解きやすい問題だったと思われます。

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