Banduraの業績

Banduraの業績について述べていきます。
2018年度の試験では自己効力感についての出題がありましたね。

観察学習

バンデューラといえば「観察学習(モデリング)」ですね(自己効力感については後ほど)。
観察学習は、伝統的な学習理論の枠組みでは説明不可能であって、刺激-反応に限定された理論ではなく、認知過程を重視し、観察学習を構成すると考えられる諸概念をまとめて「社会的学習理論」と呼びます。

社会的学習理論では観察学習は注意、保持、運動再生、動機づけの4つの過程で構成されています。

  1. 注意過程:
    観察学習が成立するには、まずモデルの行動やその特徴に注意を向けることが大切。
  2. 保持過程:
    注意過程によって得られた情報は、後の行動に反映させるまで保持することが必要。
  3. 運動再生過程:
    保持された情報を使って実際に行動する過程。
    ちなみに1~3までが、新しい行動を獲得する過程である。
  4. 動機づけ過程:
    その後の行動に反映されるかどうかはこの動機づけ過程による。

動機づけは主に外的強化、代理強化、自己強化の3つがあります。
外的強化とは、その行動が適切に行える状況(外的環境)によって強化される場合を指します。

代理強化とは、モデルが何らかの強化を受けていることを観察している場合を指し、「強化の期待」がこちらでは重要となります。
また、自己強化とは、自分自身で行動に強化を与える場合を指します。
観察学習は、大人が人形を攻撃する場面を見せて、その後の大人への対応(報酬を与えられる、怒られる)によって群を分け、子どもがどのような行動を取ったか、という研究内容が有名ですね。
バンデューラは、この研究を通して、怒られた群の模倣行動が少なくなることが説明できないこと、必ずしも強化は必要ないが「強化の期待」が重要であることを明らかにしています。

自己効力感

観察学習の研究より発芽したBanduraの社会的学習理論は、その後更に発展させられ、セルフ・エフィカシー(自己効力感)の概念を生むことになりました。
自己効力感は社会的認知理論の中核となる概念の1つであり、自己効力感が強いほど実際にその行動を遂行できる傾向にあるとされます。

この概念は、学習を刺激-反応の連合とする伝統的な学習理論に対して、観察学習を含む多様な人間の学習形態を統一的に理解するために、習慣よりはより包括的で、認知的な媒介概念として発案されたものです。

定義

自己効力感は「自分が行為の主体であり、自分が行為を統制しており、外部からの要請に対応できるという確信」のことを指します。
バンデューラの社会的学習理論における人間観は「個体は環境に働きかける、つまり個体は刺激を受けて反応するだけでなく、認知が媒介することによって行動を主体的に起こす」というものでした。

Banduraは、行動遂行の先行要因として結果期待と効力期待の2つをあげています。

  • 結果期待:
    知識や過去の経験に基づき、特定の行動を行った際の結果を推測することを指します。ある行動がある結果を生み出すという推測のこと。
  • 効力期待:
    特定の結果を導くために必要な行動を自分自身が上手く行うことが出来るという確信のことを指します。ある結果を生み出すために必要な行動をうまく行うことが出来るという確信のこと。

社会的学習理論では、この2つからなる「自己効力感」という要因が行動の生起に重要であり、行動を行うかどうかの決定や課題遂行の是非や課題完了に費やす努力と時間を決定する大きな要因であるとしています。
バンデューラは特に「効力期待」を重視しています。

成功体験は「効力期待」「結果期待」を高めるので、自分ができるという感覚が強まり、目標も高く設定されることにつながります。
逆に失敗をすれば、「効力期待」は下がるため自身の能力を低く見積もることになりますし、よい「結果期待」を生み出すことができなくなるために目標を低く設定することになります。

以上より、自己効力感は「結果期待」「効力期待」によって構成され、ある行動の結果が、次の「結果期待」「効力期待」に影響することがわかります。

自己効力感の変動に影響する要因

以下の4つを挙げています。
  1. 達成経験:
    いわゆる成功体験で、自分で何かに臨み、成功したという経験を指す。失敗経験は、自己効力感が確立されていないと、効力感が弱まることになる。
  2. 代理経験:
    自分以外の他人が何かを達成・成功するのを観察すること。モデリングおよびコンピテンスと関連があります。
  3. 言語的説得:
    自身の行為を言葉で励まされること(特に1の経験を褒められると良い)。松岡修造がやってくれそう。
  4. 生理的情緒的高揚:
    生理的状態が自己効力の判断の手掛かりになる。生理的な状態の解釈を変えることで、自己効力感を高めることができる(情動の二要因理論に似ていますね)。
※これらの中でBanduraが一番重要としていたのが達成経験になります。

自己効力感のタイプ

Banduraは自己効力感のタイプを以下のように分けています。

  • 自己統制的自己効力感:自己の行動を制御する基本的な自己効力感
  • 社会的自己効力感:対人関係における自己効力感
  • 学業的自己効力感:学校での学習などにおける自己効力感

カンファーやバンデューラらは、自己の内的な要因が行動に与える影響を重視し、自己制御という概念を提出しています。

この概念に基づくと、人は自己の行動をモニターし、その内容と自己のもつ何らかの基準(要求水準など)とを比較して行動を評価し、その結果に応じて自己の行動を統制するとされます。
自己制御ができる子どもの方が、学業、社会的スキル、対処能力において優れているとされています。

対処すべき課題や標的とする行動を細分化する基準

Banduraは対処すべき課題や標的とする行動を細分化する基準として「マグニチュード
(magnitude)」「強度(strength)」「一般性(generality)」の3次元を想定し、それぞれにおいて自己効力感が変化すると考えています。

  1. マグニチュード:
    特定の課題を構成する下位行動を主観的あるいは客観的な困難度にしたがって、容易なものから困難なものへと配列し、自分がどのくらいの行動までなら対処できるかと言う解決可能性の水準を指す語である。
  2. 強度:
    「マグニチュード」で示されたそれぞれの行動をどのくらい確実に遂行できるかという主観的確率を意味する。
  3. 一般性:
    ある状況における特定の具体的な行動に対して形成された自己効力感が、場面や状況、行動を超えてどの程度まで般化するかという次元であり、特性としての自己効力感の一般的傾向を説明するもの。
つまりBanduraの理論的枠組みでは、4つの情報源を通して獲得された自己効力感を個人がどの程度身につけているか、とりわけ、どのようなマグニチュードの行動に対して、どの程度の強度の自己効力感を身につけているかを認知することが、自らの行動の変容を予測したり、情動反応を抑制する要因となると想定されています。

このように具体的な課題をさらに階層化し、評定するといった「マグニチュード」、「強度」の交互作用から知覚される自己効力感は、課題ごとに変動していくものであると言えます。
一方、「一般化」の概念からは、自己効力感が異なる課題間である程度一貫することが想定されており、課題や場面にそれほど依存しないと言えます。

【2018追加-83】

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