古典的条件づけ

きょうは古典的条件づけについてです。
レスポンデント条件づけとも呼ばれますが、公認心理師試験では「古典的条件づけ」という表記で出題されているので、こちらで覚えておいた方が良いでしょう。
こういう、とある概念がどのように呼称されるのか、というのは資格試験において大切なことだと思います。

本項とは少しずれますが、古典的条件づけを背景とした心理療法技法についても押さえておきましょう。
系統的脱感作法、エクスポージャーなどですね。

基本的理解

古典的条件づけは、Pavlov(パブロフ)の条件反射として知られるものです。
彼は、音と餌を対呈示(対呈示強化)を繰り返すことで、ベルだけで唾液を出すようになることを示しました。
以下のような形ですね(条件刺激からの矢印が出ていませんが、その辺は脳内補完しておいてくださいね)。

もともとベルは唾液を分泌されるような刺激ではなく、単に耳をそばだてたり、頭をかしげるくらいの反応を示すのみです。
この反応のことを「定位反応」と言います。

ですが、このベルの音を条件刺激として、唾液分泌(無条件反応)を引き出す餌(無条件刺激)と対呈示することによって、ベルの音だけで唾液が分泌される(条件反応)ようになります。

条件刺激と無条件刺激の時間的接近性によって…

  • 順行条件付け:
    条件刺激の呈示を開始してから5秒以内に無条件刺激を提示し、両刺激を同時に終了させるという手続き。まったく同時に呈示し、同時に終了する手続きを「同時条件づけ」と呼ぶ。
  • 延滞条件付け:
    条件刺激を呈示してから5秒以上の一定時間後に無条件刺激を呈示し、更に一定時間後に両刺激を同時に終了させる手続き。
  • 痕跡条件付け:
    条件刺激を一定時間だけ呈示し、呈示し終ってから条件刺激無しで更に一定時間を経てから無条件刺激を一定時間だけ呈示する手続き。
  • 逆行条件付け:
    まず無条件刺激が呈示されて、それ以後に条件刺激が呈示される手続。条件づけは困難とされている。

に分類されます。

遅延の短い「延滞条件づけ」が最も条件づけが容易とされています。

諸概念

条件づけによる学習に関する概念は以下の通りです。

  • 消去:
    条件付け形成後も、無条件刺激無しに条件刺激呈示を繰り返すと、条件反応は徐々に消失する。そのことを指す。
  • 自発的回復:
    消去後に時間をおいて条件刺激を呈示すると再び条件反応が出る。
  • 般化:
    条件づけが成立すると、条件刺激と物理的に似た別の刺激を単独呈示しても条件反応が生じること。
    このとき誘発される条件反応の量や大きさは、用いられた新しい刺激と、元の条件刺激との類似度に依存している。例えば、100拍のメトロノームで条件づけを行った場合、80拍よりも90拍の刺激の方が唾液分泌の量が多い。
  • 弁別:
    似た刺激であっても、無条件刺激を対呈示するか否かでAには条件反応が生じるが、A+には生じない、ということを指す。
    犬の弁別訓練で、円と楕円の類似性を高めて弁別を次第に難しくしていくと、犬が突然暴れ出し、容易な課題さえできなくなる。これを「実験神経症」と呼ぶ。
  • 二次条件づけ(高次条件づけ):
    すでに条件反応を形成した条件刺激に対し、新たな刺激を対呈示することで、新たな刺激だけで条件反応を示すようになることを指す。
    パブロフの犬に「ベル→唾液」を形成させた後、ベルに光刺激をくっつけて、光刺激だけで唾液が出るようにすること。
    ちなみに2次の条件刺激を無条件刺激のように扱って、別の新たな刺激とそれまでの条件反応とを結び付ければ「三次条件づけ」となりますが、空腹を基礎にした食物に対する唾液分泌といった種類の反応は二次条件づけまでが限界とされています。
    こうした二次条件づけ以上の条件づけのことを「高次条件づけ」と総称します。ただ、二次条件づけのこと自体を指すことも多いですね。

これら基本的な現象についてはしっかりと押さえておきましょう。

恐怖条件付け・嫌悪条件付け

恐怖条件付けとは、ヒトを含む動物に生得的に備わる古典的条件付け反応の一つであり、通常、恐怖を引き起こすことがないレベルの光や音(条件刺激)と恐怖を起こす電気刺激や痛みなど(非条件あるいは無条件刺激)を組み合わせることにより、条件刺激のみの提示で恐怖反応(すくみなど)を引き起こす学習反応を指します。

有名なのが、ワトソンが行ったアルバート坊やの実験です。
坊やがびっくりするような、恐怖を感じるような大きな音とともに白ネズミを提示することによって、白ネズミに恐怖するようになります。

白ネズミに対する恐怖を条件づけられたアルバート坊やには、上記の「般化」が確認されています。
条件づけ前までは怖がらなかったウサギ、毛皮、サンタクロースのお面、綿に対しても程度は異なりつつも恐怖を示すようになりました。
般化したわけですね。

ただし、いつも遊んでいた積木には一貫して恐怖反応は示しませんでした。
このように、用いられる条件刺激の類似性に基づいて同じ反応が誘発される効果を「刺激般化」と言います。

また、嫌悪条件づけでは、条件づけにおいて「嫌悪刺激」が用いられると、「ネガティブな情動」が条件づけられます。
こうした嫌悪刺激を用いての一連の条件づけ手続きによって、ある特定のタイ≦イメージ等に嫌悪感を形成することを嫌悪条件づけと称します。

その一種として「味覚嫌悪条件づけ」があり、これは食物を摂取したことにより体調を崩すと二度とその食物を摂取しなくなるという条件づけを言います(生牡蠣にあたってしまうと、牡蠣が食べられなくなる。生牡蠣→焼き牡蠣もダメになれば般化ですね)。
これをガルシア効果と呼びます(ガルシアさんが発見したから)。

嫌悪条件づけの手続きでは、古典的条件づけから回避条件づけなど様々な手続きがあります。
古典的条件づけだけのものだと思わないようにしておきましょう。

【2018-7①②⑤】

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