公認心理師 2019-9

問9は学習心理学における基本的用語の把握を問うています。
こちらは確実に取っておきたい問題ですね。

問9 ある刺激に条件づけられた反応が他の刺激に対しても生じるようになることを何というか、正しいものを1つ選べ。
①馴化
②消去
③般化
④シェイピング
⑤オペラント水準

あまり「この問題は基本的な問題ですよ」と言うと、解けなかった人に侵襲的になってしまうような気がしてあまり言わないのですが、この問題は「基本的な問題です」と言わざるを得ないほど基本的です。

間違えた方は「読み間違えたんだ」「勘違いしただけだ」と思わずに、もう一度条件づけ理論を復習しておきましょう。
やはり間違えたということに拓かれていないと学ぶ上ではよろしくないと思うのです。

解答のポイント

条件づけ理論における基本的用語を理解していること。

選択肢の解説

①馴化

生活体は、何らかの刺激が与えられると注意が喚起され、顔をそちらに向けるなどの反応を起こします。
これらの刺激を、強化を伴わない状態で繰り返し呈示すると、刺激に対する反応は相対的に減少していきます。
このような一連の過程を「馴化」と呼びます
要は「馴れた」ということですね。

ただし、反応の生起頻度の減少は、神経の興奮と関係した変化である順応や疲労による注意の低下がありますが、これらは馴化とは別の現象として区別されています。

馴化の特徴としては以下の通りです。

  1. 刺激が十分長い間与えられていないと、その刺激に対する反応は自然的に回復する。
  2. 刺激の提示頻度が多くなればなるほど速く馴化する。
  3. 刺激強度が強いほど馴化は遅くなる。
  4. 似た刺激に対しても馴化は生じる。
これらは私たちの日常体験と重ねてもそれほど違和感なく理解できると思います。
このように馴化が生じても、それと異なる他の刺激が与えられると、新たな刺激に対する注視反応などの行動が再び喚起されます。
このような現象を「脱馴化」と呼びます。
脱馴化で呈示される刺激は、それ以前の試行において提示されていなかった刺激となります。
馴化・脱馴化はブループリントにも明記されている用語ですから、間違いなく押さえておくようにしましょう。
以上より、選択肢①は誤りと判断できます。

②消去

消去とは、条件づけにより形成された反応が、強化されないことにより、その遂行が減衰してゆく過程、または手続きを指します(手続きを指して「実験的消去」と呼ばれます)
ただし、一定の休憩時間の後に再び条件刺激を呈示すると、自発的回復が生じるとされています。

以上より、選択肢②は誤りと判断できます。

③般化

般化とは「ある刺激に条件づけられた反応が、他の刺激に対しても生じること」を指します
一般に、般化の程度は、その刺激の物理的次元上の類似度の関数として決まります(般化勾配といいます)。
簡単に言えば、条件づけられた刺激に似ているほど反応が生じやすくなるということです。

般化現象は、各刺激ごとに学習しなくても、似た刺激の下では適切な反応が生じることを可能にするという点で非常に重要です。
この機能が人間に備わってないと、人間の学習過程は非常に面倒くさいものになるでしょう(鉛筆とシャーペンの持ち方を別々に学習するようなイメージかな?)。

これとは逆に、ある特定の刺激に対してのみ反応が生じるようになることを分化または弁別と呼びます。
パブロフは、犬により厳しい弁別実験を行い、その繰り返しによって生じた犬の混乱状態を「実験神経症」と呼びました。

以上より、選択肢③が正しいと判断できます。

④シェイピング

シェイピングとは、複雑で新しい行動を獲得させるために、標的行動をスモールステップに分けて、達成が容易なものから順に形成していく方法です
「3回まわってワン」を獲得させたいときに、「3回まわってワン」という行動が自発的に出現するまで待っていてもなかなか出てきません。
だから、まずは「1回まわったら」エサを与え、それを2回、3回と増やし、最後にワンと鳴いたら…という形でやっていくわけです。
この自発を待っていてもなかなか出現しない行動を学習させたいとき、というのがシェイピングの出番ということですね

これはオペラント技法のひとつであり、スキナーによって提唱されたプログラム学習の基礎を成します。
シェイピングを成功させるための留意点としては以下の通りです。

  1. 標的行動を正確に明確化する。
  2. すでに達成できている行動を確認して、シェイピングされるべき行動を選択する。
  3. 大きすぎず小さすぎないステップのサイズを設定する。
こちらも「そりゃそうだ」と実感を持てると思います。
人間でもいきなり複雑なことをやれと言われても「手順を教えてくださいよ」となりますよね。
以上より、選択肢④は誤りと判断できます。

⑤オペラント水準

オペラント条件づけでは、ある一定の確率で自発する行動に対して条件づけし、その行動の生起頻度を増加(もしくは減少)させていきます(オペラント条件づけではこのように「最初に反応がある」というのが特徴であり、対して古典的条件づけでは「最初に刺激がある」というのが特徴になります)。

ただ強化や罰を行ったところで、元々の生起頻度からどの程度変わったかが見えないとオペラント条件づけが形成されたのか不明ですよね。
ですから、特別な誘発刺激がない状態で標的となる行動の生起頻度を知っておくことが重要になってきます。
この「特別な誘発刺激がない状態での標的行動の生起頻度」のことを「オペラント水準」と呼びます(要は条件づける前の標的行動の自発頻度ということです)

オペラント条件づけにおいては、条件づけの対象となったオペラント行動の、条件づけ前の自発頻度(オペラント水準)を測定し、学習の達成度に対する基準とすることが多いわけです

以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です