公認心理師 2019-1

問1は公認心理師法に関する問題です。
やはり公認心理師法は確実に押さえておきたいところですね。

問1 公認心理師の業務や資格について、正しいものを1つ選べ。
①診断は公認心理師の業務に含まれる。
②公認心理師資格は一定年数ごとに更新する必要がある。
③公認心理師の資質向上の責務について、罰則が規定されている。
④公認心理師が業務を行う対象は、心理に関する支援を要する人に限定されない。
⑤公認心理師以外でも、心理関連の専門資格を有していれば「心理師」という名称を用いることができる。

基本的な問題だとは思いますが、公認心理心理法を幅広く把握していることが求められている問題ですね。

解答のポイント

公認心理師という資格に関する法律的な理解(公認心理師法の把握)。

選択肢の解説

①診断は公認心理師の業務に含まれる。
⑤公認心理師以外でも、心理関連の専門資格を有していれば「心理師」という名称を用いることができる。

公認心理師法第2条に、公認心理師の業務が規定されております。
「この法律において「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう」とされ、以下の4つが定めらえております。

  1. 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
  2. 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
  3. 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
  4. 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。

下線部の箇所が公認心理師の業務ということになりますので、選択肢①にある「診断」は含まれていないことがわかります。

診断については医師の行う「医業」に該当します。
そして医師法第17条には「医師でなければ、医業をなしてはならない」とされています。
これは医師という資格が「業務独占資格」であることを示しています
医師法第17条に違反すれば「三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(同法第31条第1項)」となります。

これに対して公認心理師は「名称独占資格」です。
公認心理師法第44条には「名称の使用制限」が定められており、それが公認心理師が名称独占資格であるという根拠になります。
第1項:公認心理師でない者は、公認心理師という名称を使用してはならない
第2項:前項に規定するもののほか、公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない。

こちらに違反した場合、「三十万円以下の罰金」に処されることになります(同法第49条)。
ただし、資格がなく公認心理師の仕事をすることには罰則規定がありません。
ここが業務独占資格と名称独占資格との大きな違いとなっています。
ちなみに、作業療法士、理学療法士なども名称独占資格になりますね。

以上より、選択肢①および選択肢⑤は誤りと判断できます。

②公認心理師資格は一定年数ごとに更新する必要がある。

公認心理師法では、登録の取り消し等(第32条)などの規定はありますが、更新に関する条項は定められておりません
その点が公認心理師成立に対する大きな懸念の一つとされていました。

最も社会的影響が大きいとされてきた臨床心理士に関しては、5年毎の更新が定められております。
海外の同様の資格に関しても更新が定められていることが多く、これは生涯学習の一環でもありますし、最新の知見を取り入れることが重要とされているという面もあるためでしょう。

本選択肢は臨床心理士との比較や、公認心理師成立の経緯も踏まえた問題と考えられます。
以上より、選択肢②は誤りと判断できます。

③公認心理師の資質向上の責務について、罰則が規定されている。

まずは公認心理師法第43条に「公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、第二条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない」という、いわゆる資質向上の責務についてが定められております。

公認心理師法に規定されている罰則を見てみると、第41条(秘密保持義務)に違反した場合は「一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金」に処されます(同法第46条)。
また第44条(名称の使用制限)に違反すれば「三十万円以下の罰金」となります(同法第49条)。
これ以外で公認心理師の業務に関する罰則は定められておりません(事務局に関する罰則は、もちろんありますけど)。

常識的に考えてみて「資質向上の責務に違反した」ということをどのように判定するか、非常に難しいことがわかると思います
何をもって資質向上に資するか否かを判断するか、その判断基準は曖昧であり、多岐にわたります。
場合によっては「資格をもっているけど業務をしない時間」でも、何かの知見を拡げるという意味では非常に有用な時間とも言えるでしょう。

いずれにせよ、資質向上の責務に違反したということに関する罰則の規定は定められていません。
以上より、選択肢③は誤りと判断できます。

④公認心理師が業務を行う対象は、心理に関する支援を要する人に限定されない。

こちらを解くには公認心理師法第1条および第2条を把握していることが重要です。

第1条:この法律は、公認心理師の資格を定めて、その業務の適正を図り、もって国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的とする。

第2条:この法律において「公認心理師」とは、第二十八条の登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいう。

  1. 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
  2. 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
  3. 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
  4. 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。

上記の下線部が重要になります。

第1条に関しては「国民」と広く対象を取っておりますし、第2条第3号では「関係者」が対象であることが示されています。
また、同条第4号では主語が定められてはいませんが、これは対象が第1条にある「国民」になると考えることも可能です。
すなわち、選択肢にあるように公認心理師の業務の対象は「心理に関する支援を要する者」に限らないことがわかりますね。

以上より、選択肢④は正しいと判断できます。

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