第2回公認心理師試験(2019年8月4日実施)における採点除外問題について

第2回の公認心理師試験では、採点除外等の取扱いになった問題が2問ありましたね。
いずれも午前問題で、問20と問28でした。
これらが採点除外扱いとなった理由として考えられることを以下に記しておきます。
いずれも公式発表されている理由が「選択肢が不明確なため」とあるだけでしたからね。

問20:我が国における児童虐待による死亡事例の近年の傾向として正しいもの
本問が採点除外となった理由は、選択肢③「心中による虐待死事例における加害の背景は、「経済的困窮」が最も多い」の正誤判断に関してだと考えられます。
公式解答によると、この選択肢③の内容は「誤り」となっております(つまり、経済的困窮が最も多いとは言えない、ということですね)。

しかしながら、心中による虐待死事例の加害者の背景として、平成26年度~平成28年度は「保護者自身の精神疾患、精神不安」が常に一位となっていましたが、平成29年度の調査では「経済的困窮」が最も多い結果となりました。
この平成29年度の調査結果が公表されたのは令和元年8月1日と試験の直前になっていますから、試験作成時には「保護者自身の精神疾患、精神不安が常に最も多い結果だった」と推測できます。

よって、試験作成時には「保護者自身の精神疾患、精神不安」が心中による虐待死事例の加害の背景にあると捉えるのが正しいと言えましたが、試験実施時の直近のデータではそれが覆ったわけです。

問題文では「我が国における児童虐待による死亡事例の近年の傾向」となっていますから、昨年度も含めて数年間の傾向という考え方をすれば「保護者自身の精神疾患、精神不安」が正答であるということは揺らぎませんが、それではあまりにも不親切だろうということで採点除外扱いにしたものと考えられます。

問28:DSM-5の反社会性パーソナリティ障害の診断基準として正しいもの
本問が採点除外となったのは、選択肢③「反社会的行為が起こるのは、統合失調症や双極性障害の経過中ではない」によると考えられます。
公式解答によると、この選択肢③の内容は「誤り」となっております。

DSM-5の診断基準の中に「反社会的な行為が起こるのは、統合失調症や双極性障害の経過中のみではない」という記述があります。
つまり、この選択肢③はDSM-5の診断基準の文章から「のみ」という表現だけを引っこ抜いて作成したものなわけです。

もちろん「のみ」という表現の有無によって、まったく意味が変わってしまうのは解説で述べたとおりです。
それでもやはり「非常識・非人情」な選択肢であると言わざるを得ないでしょう。
恐らく日本心理研修センターも、この選択肢はあまりにも…と考えたのではないかなと想像します。

本問は、診断基準を一字一句完璧に覚えている人でなければ解けない問題ということになりますから、それではあまりに公認心理師に求めているものが大きいというかずれていると感じてしまいます。
実効性・汎用性のある専門職を目指していたはずですからね(もちろん診断基準を一字一句覚えている人が実効性・汎用性がないとは言いませんけど…)。

以上、採点除外等の取扱いとなった問題に関して、その理由と思われる事柄を述べてみました。
おそらく外れてはいないと思うのですが。

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