分類表の公開および2020年試験問題の所感

分類表に2020年の問題分も追加しました。

分類表作成作業中に2020年の問題をざっと見直したので、2020年試験問題の所感も述べていこうと思います。

今回、分類表にかなり手を入れました。

例えば、新たに非行理論を細かく書きだしたり、心理査定に設けていた「その他」の項目を排除して、すべての検査を書き出して表記しています。

特に社会心理学に関しては、すべての理論を書き出し、分類表に書いてある用語を理解すれば過去問で出た概念を勉強できる形にしました。

おそらく、この分類表に載っている用語をしっかりと理解することができていれば、かなり本番でも良いパフォーマンスができるのではないかと思っています。

複数の分野にわたっている問題、例えば「公認心理師 2020-146」は、精神疾患(抑うつ障害)or 保健医療に関する心理学(見立てと対応)or 心理に関する支援(心理教育)の要素が混ざり合っております。

こうした問題ではいずれの分野にするか迷うところですが、「この分野の知識を知っていることが前提だろう」と思うところに配置しました。

上記の問題の場合、内容は心理教育ではありましたが、抑うつ障害に関する知識があることが前提になっていたので、精神疾患に分類しました。

他にも「心理学・臨床心理学の全体像」と「心理に関する支援」にわたって存在していた「社会構成主義」については、心理実践につなげるという意図をもって「心理に関する支援」に一本化しています。

分類表を眺めながら2020年試験問題の印象を述べていきましょう。

  • 社会心理学や感情心理学に関しては一つの概念について問われることは少なく、選択肢ごとに問われる概念が異なる。対して、脳の問題や人体に関する問題などは、問題全体で一つの概念について問われることが多い。
    ※これらの傾向は、分類表で選択肢が細かく分けられているか否かでわかります。
  • 公認心理師法は相変わらず出題がある。特に秘密保持義務に関しては頻出となっている。また、倫理的な判断を求める問題も頻出と言ってよさそうで、今後は判断を悩ませるような倫理的状況の出題もあるかもしれない。成長モデル、SVなども毎年のように出ている。大学で公認心理師養成が本格的に始まったからか、養成に関する問題が出題されている。
  • 歴史の問題はなかったが、認知心理学については相変わらずの出題量で、内容も難解なものが多い。
  • 脳に関する問題は大問(その問題全体で一つのことを問うている)が多い。これは当初から変わっていない。
  • 発達の出題はブループリントに沿っている印象を受ける。
  • 社会心理学ではラタネの理論が頻出になっている。
  • 2020年は人体の構造・疾病に関する問題が多く出されており、ほとんどの人にとっては馴染みのない内容だったと思われる。言い換えれば、ここで点数に差は生まれにくかっただろう。遺伝カウンセリングの問題など、難解なものが見られる。
  • 統合失調症、PTSD、摂食障害など毎年出されているが、頻出と思われた発達障害については正統な問題はなかった(ペアレントトレーニングなどの出題はあった)。認知症は手を変え品を変え出題してくる。薬理については、動態というより根本的な内容が出題された。精神疾患関連の知識はどこが出てもおかしくないと思っておいた方がよさそう。
  • 法律については奇をてらったものは少なく、比較的例年同様の難易度だったと思われる。法律問題では「法律」「施行規則」など、出題の段階でしっかりと限定してくれるのが有難い(第1回試験ではその辺がかなりぐちゃぐちゃだった)。
  • 2020年は教育に関する出題が多め。特に教育学からの出題が多く見られた。後半は教育領域の事例ラッシュ。
  • 統計や研究法は幅広く出題された印象を受ける。やはり統計的仮説検定に関する基本的理解は押さえておきたい。2020年は幅広く、細かく出題された印象である。
  • 心理査定の初出は「GAD-7」「ロールシャッハ」「SCT」「CDR」であり、それ以外は過去に出題されたことがあるものばかり。エビデンスという観点から出題に異論があったかもしれない投影法、特にロールシャッハについても出題されている。もちろん内容は解釈といったエビデンスが担保しにくいものではなく、作成の歴史という「変わりようのない事実」からの出題であった。言い換えれば、どのような検査であれ、きちんと提唱された背景や歴史は知っておくことが重要となる。
  • 心理に関する支援では、遊戯療法に関する問題が初めて出題された以外は、ブループリントに沿った内容の出題であった。日本の心理療法は、第1回以来とんと見なくなった。

ざっと分類表を見て思うことはこれくらいです。

なお、分類表のリンクは以下の通りになっています。

公認心理師 分類表(2020年問題含む)

ご活用ください。

今回、分類表を作っていて、新たな項目を作る必要に迫られたり、どこに振り分けるか迷った問題が多くありました。

例えば、問43(可視的差異)、問114(Neisserの自己知識)、問127(作業同盟の実証研究)、問128-③④(感情と文化の関連性)などです。

2018年~2019年の問題までの3回分の試験問題では、それほど分類に悩むことがなかったことを考えると、今回の試験問題は「これまでの分野とは合致しない問題」が多かったとみることができるでしょう。

これは「未見の問題」が多かったことを意味するだけでなく、「過去問にも類似の内容が存在しない」ことを意味しています(分類できれば過去にその領域の問題があったことを示すから)。

ですから、2020年の試験問題は「過去問だけをやっていても解ける問題ばかりではなかった」と言えそうです。

ただし、それでも過去問を解くことには大きな意味があります。

なぜなら、上記のような「過去問にも類似の内容が存在しない」という問題は、(あくまでも私が見たところ)1割程度という印象を受けるからです。

それ以外の問題は、その出題内容が初めてであっても「領域としては過去に出題がある」ということですから、過去問から知識を拡げるという作業を欠かすことはできません。

このことは分類表で過去に出題されている内容が多いことからも理解できると思います。

多くの人にとって2020年の問題は難しいと感じたのではないかと思います。

上記の通り、初出の問題、過去問の知識では足りない問題がおおく見られましたから、そう感じるのは当然です。

しかし、試験において「できた箇所」はすんなり通過するので印象には残らず、「できなかった箇所」に関しては不快な思いとともに強く印象に残るものです。

分類表を見れば、過去に出題があった領域からたくさん2020年も出題されていることがわかるはずです。

やはり、過去問を徹底的に取り組むこと(徹底的のレベルが人によって違うので、その辺が難しい。人にとっての徹底的は、私にとっての徹底的ではないことも多いので…)、ブループリントで示されている概念をきっちり把握することが、公認心理師試験勉強の基盤となるという考えは2020年の問題を踏まえた上でも変わりません。

とは言え、人様の勉強の仕方に口出す権利もないので、ここで述べていることは私個人の印象と捉えておいてください。

さて、これで2020年の試験問題にまつわる作業はオールアップです。

次はずっと考えていた構想を実現に移していきます。

公開をお楽しみに。

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